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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第100章 晴耕雨讀
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第945話 弁当

 お昼時、タイミングが合った妻達と机を囲んでお昼ごはんを食べる。


 今日はエルーちゃんがシェフの方々と一緒にお弁当を作ってくれたらしい。


 楕円型の容器の蓋を開けると、そこにあったのは色とりどりの具材が綺麗に並ぶ姿だった。


「わあぁぁっ!くまさんハンバーグ!たこさんウインナー!それに、うさぎさんのりんごまで……!」

「本日ご用意させていただいたのは、デコ弁です。ソラ様の記憶から好印象だったものを選ばせていただきました」


 実のところ、僕はこれを遠足で食べていた人がいたのを横目にしたことがある程度だ。

 でもそれも遠足の移動で崩れてしまっており、こうしてきちんとした見た目のデコレーションお弁当は初めて見るかもしれない。

 こんな素敵なお弁当をせっせせっせと作ってくれた奥さんとシェフに感謝を伝えたい。


「お気に召しましたか?」

「うん!とってもかわいい……」


 開けたときに目を真ん丸にするくらい驚いて、かと思えば今度はそのまま頬擦りしてしまいそうになるくらい愛おしくなる。

 一挙手一投足に対して喜怒哀楽がそのまま動作となって出てしまう。


「さぁ、冷めてしまいますから、お召し上がりください」

「…………」


 それでも箸は進まない。


「もしかして、お嫌いなものがございましたか?」

「うぅ……食べちゃうのっ、かわいそうだよぉぅ……」


 悲しそうな顔をするエルーちゃんに、僕はもっと哀しい顔で返す。


「「…………」」


 な、なんかこの静寂、デジャヴが……。


「今日もソラちが可愛い……可愛すぎるよ……!保存完了♪」

「あっ、ちょっ!?撮らないでってばぁぁ……」

「ふっふっふっ、もうシェアしちった♪」

「明日にはデコ弁が民の間で流行ってそうですね」


 ああ、黒歴史がまた世界中に散らばっていく……。


「はい、ソラ様。あーん……」


 エルーちゃんが無理やり口に入れてくれる。

 自力では抵抗があって食べられなかったから助かった。


「んむ、んむ……。それより、今度ハインリヒ王宮のサンドラさんの出産記念パーティーに変装して参加する予定なんだけど、パートナーを決めておきたいなって思ってて。付いていきたい人はいるかな?」

「そもそも、招待状は私にも来ているが……」

「あたしにも届いてるよ?」

「というより、全員に届いているでしょう?」


 そう、この手のパーティーは聖女関係者には必ず届くうえ、参加強制ではないし、何より名前欄に記入がない、特別な招待状になっている。

 いわゆる小切手に金額を書いて返すようなものの名前バージョンで、招待状の名前欄に名前を好きに書けばその人を聖女が招待した扱いで参加させられるということだ。

 僕の代わりに他人を参加させることも出来るし、名前を偽って僕が変装して参加することも可能だ。


「私はソフィア女王ともサンドラ女王とも付き合いが長いし、どのみち参加する予定だったのだが。私では駄目なのか?」

「ボクもソフィアとは腐れ縁……友人のつもりだし、参加はするが……」


 涼花さんはともかく、エレノアさんが参加するのは珍しい。


「お二人は普通に参加してください。流石にとくに有名なお二人は変装したくらいじゃ隠せませんから……」


 エレノアさんの真っ白な髪は美しすぎて目立つし、涼花さんに至っては女性にしてはあるその背の高さ、腹筋、胸やお尻の大きさ、そして女傑のごときそのスタイルで涼花さんだと分かってしまう。

 メガネをかけたり髪型を変えたくらいで分からなくなるような人たちじゃない。


「む……仕方ない。今回は近くに控えて護衛していることとしよう。だがそれを言うなら、ソラちゃんもだろう?」

「シエラ君がソラ君であることだってもう有名な話だし、使えないだろうに」

「まだ使ってない姿があるじゃないですか」

「じゃあ、Eランク冒険者のエンジェルちゃん?」


 神獣・麒麟を騙すために使った偽名なんて、誰も覚えていないと思ったのに……。


「違います!今回は私、男として参加します」

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