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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第100章 晴耕雨讀
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第929話 採掘

「つまり、ソラちゃんの記憶は全部残ってるってこと?」

「は、はい……私が余計な介入をしたばかりに……」


 僕の記憶は全部残っていて、僕の中に入ってはいるが、呼び出せないのだという。

 エルーちゃんと顔を合わせ、失われたわけじゃないことにとりあえずの安堵をした。


「ソラちゃんの方から掘り起こしたりできないの?」

「ええと……どうやるんですか?」

「それもそうよね……」


 両手を合わせて「むむむ……記憶よ戻れーっ!」などと強く念じてみるものの、全く効果なし。

 それどころか他の聖女付きのメイドさんに「かわいい」などと呟かれ、僕が恥ずかしい思いをしただけだった。


「『鍵がついている部屋から記憶を掘り起こす』なんてそんな全人類やったこともないこと、突然やれって言われてできるわけないでしょ。そんなの要件定義を一切しないまま開発者(プログラマー)に投げるようなものよ」


 聖女サツキさんは、前世ではお父さんと同じシステムエンジニアだったらしい。

 でもその言い回しで他の人に伝わるの?


 その時、二人の聖女に隠れていたもう一人の存在に気が付く。


「リン様、いい加減お顔合わせなさらないと」

「ちょっ、押さないで東子ちゃん。私まだ心の準備が……」

「えっ……」

「あっ、天先輩……」


 そこに居たのは、セミロングの美人――


「ひっ、いやぁぁっ……!?」

「ソラ様っ!!」


 情けない鳴き声と共に、頭がズキンと痛む。


 柊凛。

 前世、僕がトラウマになった女性がそこにいた。


「大丈夫」

「っっ……ダメっ、()()()()、近付かないでっ……!!」

「えっ、天先輩……?」


 ん?

 なんかおかしなこと言った?


「ソラ様、もしかして記憶が……」

「天先輩、私のこと今なんて呼びましたか?」

「ええと、凛ちゃん……あれ?」


 どうして僕は柊さんのことを親しくそう呼ぶんだろう?

 問い詰められるも、今は頭が痛くて覚えていない。


『メルヴィナ、今の何か分かった?』

「……どうやらソラ様にそのお心に傷が付くような出来事があると、記憶の部屋が壊されて記憶が戻るようになっているよういです」


 そうか、今呼び方が変わったのは、思い出したからか。

 でも呼び方というほんの少しを思い出すだけで、こんなに頭が痛くなるのか……。

 すべてを思い出したとき、僕の頭は堪えられるのだろうか?


「そんな……では、記憶を取り戻すには、ソラ様のお心を強く傷付けないといけないのですか!?」

「ソラ様を、これ以上傷付けなくてはいけないなんて……っ!!」


 水色の天使は僕を抱き寄せると、僕の代わりに泣いてくれていた。

 膝をつくエルーちゃんを僕が頭から抱きしめると、ふっと頭痛が軽くなった。


『こうなったら、奥の手を使うわ』


 女神様はそう言って部屋を出ていった。

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