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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第100章 晴耕雨讀
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閑話248 いのり

【神流視点】

「ふーっ……」

「お疲れ様ですわ、神流会長」


 一息つくためにお茶を淹れると、隣にルージュ副会長が並ぶ。


「ルージュ、あなたも他人のことを言っている場合か?辛ければ休んでも構わないからな」

「もう、お優しいのですから……」


 ソラ様が世界をお救いになって数週間が経った。

 聖女サクラ様によって緊急避難宣言が解除され、民達は安全に帰路に着いた。

 学園も再開し、遅れを取り戻すように授業も再開したのだが、私達の平穏との代償にソラ様とエルーシア様の命が犠牲になってしまった。

 エルーシア様は天使様となり、そしてソラ様も……。


「一息ついたら、お祈りに行きませんか?」

「それはいい。ソラ様もきっと、お慶びになる」




 聖女学園には礼拝堂が用意されており、いつでも女神様や聖女様に祈ることができる。

 一週間程前、サクラ様からセインターや拡声魔法を通じてお話しされたのはソラ様が大天使様になられるというお話だった。

 正確には今まで通り大聖女様とお呼びしても良いらしいのだが、大天使様でもある御身になられるということらしい。

 そのための準備期間に大量の神のお力が必要となり、その神のお力を集めるためには信仰と祈りが大切なのだとか。


 ここ一週間、学園生は学園の礼拝堂、それ以外の民は神殿や神社などに訪れ、毎日のように祈りを捧げていた。

 本来聖女史の授業で5分お祈りをするだけだったが、私達聖徒も祈りを欠かすことはなくなった。


 文字通り今の私達には女神様に祈ることしかできない。

 だが逆にその道を示してくださったお陰で、民の祈りは無駄ではなかったのだと、そう気付かせてくださった。


 聖女様方が我々をお救いになり、その聖女様方を女神様がお救いになり、私達が祈ることで女神様の一助になる。

 この世はそうやって回っている。


 祈りを終えると、ルージュはぼそりと呟いた。


「お姉さま……」


 ここ一年でルージュも背が伸び身体の成長はしたが、まだ甘えたがりで末っ子属性なところは成長していないのだと分かる。

 彼女も健気で一途な少女だ。


「はぁっ、はぁっ……」

「シェリーお姉さま!?」

「シェリル様、どうしてこちらに?」

「はぁっ、二人とも、大変よっ!お義母様が目を覚まされたんだけど……」


 急いできたのか少しばかり息を調えてから、礼拝堂にいらした卒業生のシェリル様は口を開いた。


「記憶が、なくなられたそうよ……」

「っ!?」

「なんですって……!?」


 ああ女神様、世界はどうしてソラ様にこれほどまでに試練をお与えになるのでしょうか。

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