少年の話
ゲッシー国の危険特性施設のことを知りたいので、デグーはここに呼び出されることになった。
急に仕事がサボれて少年はウキウキしながらやってきたが、目の前にずらっと並んだ大人を見て急に心細くなり出した。
リサはデグーのそばに行き「大丈夫だよ」と肩に手を乗せた。
そしてみんなに彼を紹介をした。
施設でのことを聞きたいだけだとわかると、少年は安心して質問に答え出した。
少年が初めて特性の検査を受けたのは、かなり遅くて7才のときだったそうだ。
大体は4〜5才で済ますらしい。遅いということは彼がかなりの田舎に住んでいたことを意味する。
『鑑定』持ちが回って来るまで時間がかかったのだろう。
ワンダやニャータでもそういうことはたまにあるらしい。
そのときに『邪念』が見つかり、危険特性施設に入れられたらしい。
施設に入る前にもう一度詳しく特性を調べられて、暮らす部屋を割り当てられたそうだ。
彼はそのときもまだ、数日したら家に帰れると思っていたらしい。
「きちんと説明をうけなかったのか?」
コーテッドは不審に思いそんな質問をした。
「父ちゃんと母ちゃんには連れて行くって話してました。」
だが幼かった少年にはきちんと説明すらしてもらえなかったようだ。
事情もわからず、両親と別れたらしい。
「だけど一回ぐらいは家に帰らせてもらえただろ?」
「へ? 家どころか施設の外にも一歩も出させてもらえなかったよ!」
「は??・・そんな馬鹿な・・・」
コーテッド、ラブラ、マンチカンは一様に驚いている。
二カ国ではそんなことはありえないからだ!
だがこの施設の待遇の悪さはもっともっとヒドいものだった・・・
食事は1日2回のみ。
それも誰かが作業をサボったり、文句を言ったり、ワーワー騒いだり言い訳をするだけでも全体責任としてすぐに抜かれるらしい。
だから2回食べれることなどめったになかったそうだ。
デグーは日中は畑仕事を割り当てられていて、寝るとき以外は自由の時間はなく、起きている間は常に何か仕事をさせられていたらしい。
読み書きなども全く教えてもらえなかったそうだ。
だから少年は今も字が読めないらしい。
そんな環境にいたせいか、少年の『邪念』はかなり強くなっていったようだ。
彼は何度も逃げ出そうとしたり、みんなに一斉に仕事を放棄しようともちかけたりしていた。
全くみんなの賛同が得られなくて、追い詰められた少年は施設に火を放とうと、本気で考えていたこともあったそうだ。(それだけは踏み止まったそうだ)
その度にヒドい折檻を受けて『神様の部屋』と呼ばれる真っ暗な独居房に飲まず食わずで何日も入れられることもあったそうだ。
その『神様の部屋』に居たときにどこからかお兄さんがやってきて、パンや果物を持ってきてくれることがあったそうだ。
「大丈夫かい? かわいそうに・・僕たちが上にかけあってすぐに出してあげるようにしてあげるからね・・もう少しの我慢だよ・・」
少年はもらった果物に夢中でかぶりついていて、気がつけばそのお兄さんはいなくなっていたそうな。
「あんなに嬉しかったことはなかったな〜・・・」
少年は昔を思い出したようで遠い目をしている。
その数日後の特性検査の日に、少年の特性『邪念』は自分自身にのみ有効だと判断されそのままその施設を出されたらしい。
「ん?『邪念』は強かったんだよね?なのにそこから出られたの?」
ラブラが聞き直す。
彼の説明によると自分にだけ『邪念』があるだけだから、悪いことをするにしてもそんなに大それたことはしないだろうと判断されたそうな・・・
ワンダの面々はどういうことだ?と考えていると、「あ〜、そういうことね・・・」とマンチカンが説明してくれた。
そもそもゲッシーのその施設では、子供を保護することなど目的ではない。
連れて来られた子供達が各々持っている特性を見極めることが重要なのだ。
「よく聞く『孤独』の子の例え話だよ。」
『孤独』の特性を持った子は本人が孤独になるのかと思いきや、孤独になりそうな子を放っておけない性分だったってやつだ。
つまり持っている特性が自分自身に対して働くのか、他人に対して働くのかで全く意味が変わるってことだ。
すなわち少年の『邪念』も他人に影響を与えられるなら使い物になるが、本人にしか有効じゃないなら必要ナシと切り捨てられたのだろう。
施設では自分たちの計画に使えそうな子、いらない子、大人しいから働き手として置いておく子などに分類していたのではないかとマンチカンは言うのだ。
「じゃあ、オレはいらない子だったってわけか・・・」
デグーは呟いだ。
「でも、ここではとても役に立ってるよ!デグーはいらない子なんかじゃないよ!」
リサは彼がショックを受けていると思い慰めた。
だが少年は破顔し「良かったー!!」と大喜びしている。
「あんなところから出られてオレは運が良かったんだな!
あいつらの言う通り大人しくしてなくて良かった!
散々辛い目にあったけど、今は働けばちゃんとごはんも食べれるしお金だってもらえてるもんな〜。」
そのタフさに『アッパレ!』と言いたくなった。




