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成り行き


リサと少年が手を繋いでいる間、厨房の親方とラブラは話をしていた。

「旦那、今のまんまじゃ食料が足りなくなりそうですよ。」

「それは困ったな・・」

ここ数日、海が凪いでいて思っていたよりも船が進んでいなかったせいだろう。


ラブラがそのことをマンチカンに報告すると、ニャータの小さな港町に寄って食料を調達するように、もう手配をしてくれていたようだ。


マンチカンはどうやら「出来のよくない息子」のフリをしていただけらしい。

父親のシャムの目まで欺いているとは、お見事だと言いたい。


やっと普通に話すようになったマンチカンも入れて、ゲッシーの二人に再度、話を聞くことにした。

シャム様から詳細は聞いているとは思うが、確認のためということだ。


兄のビーバーと弟のヌートリアは外から鍵がかけられる部屋にいた。

手足の拘束はしていない。

ワンダとニャータの両国が二人に協力すると明言してからは、抵抗もしないし大人しいからだ。


みんながぞろぞろと入って来たので、二人は緊張しているようだ。

マンチカンは「例のアレみせてよ!」とリサをせっついた。

例のアレとはビーバーを元の顔に戻すやつだ。

これのおかげで色んな窮地から救われたのだから、是非とも生で観たかったようだ。

リサはリクエストにこたえ、マジシャンみたくもったいぶりながらビーバーに触れた。


「おおー!!さすが『空からの使者』だね〜!」


彼は大袈裟に驚いてみせ、親友の優ちゃんにそっくりな人懐っこい笑顔をみせた。

あの『弄んで捨てる』発言など、まるでなかったように振舞っている。

コーテッドやラブラにさえ黙っているが、彼への不信感は拭えない。


「で、何で今もチャウ様の顔のままなの?」

母、プードルが自慢気に見せてくれた嫁入り前の家族の肖像画。

そこに描かれていたチャウ様に確かに似ている。

(マンチカンは現在のチャウ様とは面識があったが、今の風貌とはかなり違った)

だがビーバーがワンダで事件を起こしてからもうかれこれ1年半ぐらい経っているはずだ。

もとの顔やなりたい顔へと少しずつ変化があっていいはすだ。


「特性でこの顔を定着させられているのです。だから自分の意思では変えられません。」

ビーバーが悲しそうに答えた。

「そんなことができんの!?」

マンチカンは初耳だった。


ビーバーは亜目教の者によって、遠く遠く離れたとある場所に連れて来られた。

そこは宗教施設らしく大人も子供たちもいた。


彼は言われるままに、ある少年と手をつないだ。

そうしたらアッと言う間に、全くの別人になれるぐらい強力な『変身』持ちになっていたそうだ。

それこそ性別を超えるような見た目にすらなれるようになっていた。


次に、とある女になるようにと指示される。

それこそがパグという女性。まさしくマルチーズ皇太子が愛した人だ。

パグという女性は本当に存在していたのだった。

彼女もマルチーズ王子が好きだった。

だが庶民が皇太子の妻になるなど恐れ多いと、結婚には消極的だった。

一人で考える時間を下さいと(いとま)をもらい実家に帰っているときに、亜目教の者に捕まってしまったのだ。


ビーバーは女性になって(しかも妃だ!)王宮に潜り込むなどできないと強く拒否したらしい。

いろんな意味でムリがあるだろうし、すぐにバレるだろうと思ったそうだ。(誰だってそう思うだろう・・)

そうなったら即死刑だと、それは激しく抵抗した。


そうしたら愛想の良い青年がやってきて、ビーバーの手を取りこんなことを言い出す。

「あなたがやらなかったらカピバラ王はさぞ悲しむでしょうね・・・あまりに落胆し、この世に絶望して自ら命を絶たれてしまうかもしれません。そんなことになってもいいのですか!

王様の期待に応えましょう!王のためにもやらなくてはいけないのです!!」


最初、ビーバーは『何をそんな理不尽な・・・』と思ったらしいのだが、その青年に説得されて、言われるがままパグに変身したのだ。

本人を見ながら細かく修正したので瓜二つになったらしい。

パグ本人もとても協力的で、歩き方や姿勢、口調それに王子との馴れ初めや交わした言葉まで、こと細かに教えてくれたらしい。


こうやってビーバーは別人の偽パグになったのだった。

その状態を安定させるためにと、次は女性と手を繋いだ。

『定着』させられたそうで顔はもう自分の意思では変えられなくなったらしい。


彼が連れられて来たところはワンダ国にある亜目教の施設だったのだ。

そうしてパグとしてビーバーは城へ乗り込んだのだった。


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