別荘にて2
案の定、先に進みだしたサモエド王子達の舟をすごい勢いで追いかけて行く。
「なんでそんな必死なんだ!?」
「喋ってないで手を動かして!」
リサは目に見える目標があると、ついつい燃えてしまう悪い癖がある。今はサモエド王子達を追い抜かすことに必死だ。
それに気がついたチワワは抜かされまいと王子に発破をかけた。
「まあ、追いかけてきてますわ! 抜かされないよう頑張って下さい!」
気になる女性にそんなことを言われて、サモエド王子も漕ぐ手を速める。
だが二人で漕いでるリサ達との差は縮まるばかりだ。
チワワはとうとう素が出始める。
「そら、気合いれんかーい!男をみせろ!」
「チワワ殿、ハァハァ、あちらは二人で漕いでいるんですよ。」
「言い訳すんなー、はじめっから諦めてどーすんだ!!」
チワワの熱血指導をよそに、リサ達はあっと言う間に追い越して行った。
先に行った舟の上でリサが「お先に〜!」と大声で言ったので、チワワはますます歯噛んだのだった。
コーテッドはサモエド王子の舟を追い抜かしたら、湖面で食事でもしながら二人の時間を過ごそうと思っていた。
だがリサは必死に漕ぐのをなかなか止めない。
「おい、そろそろ休憩にしないか?」
「執事さんが話してたんですけど、湖の真ん中に小さな浮島があるんですって。そこに『魚の目岩』っていう変な名前の岩があるらしくって、それを見に行きたいんです。」
「何だそれは・・・」
「気になるでしょう・・・魚の目ってだいたい足の裏にできるものでしょう。どんな岩か気になりません?!」
どうして二人っきりになれたのに、魚の目の話をしてるんだろう・・・
向かい合ってゆっくりと会話を楽しめると思っていたのに、想像との落差にコーテッドはがっくりと肩を落とした。
もうこうなったら、リサのくだらない好奇心に付き合うしかない。
二人は会話もなく、黙々と舟を漕ぐのだった。
「ほら!!もうそこまで来ましたよ。」
「おお、本当だ!!」
浮島が目の前に見えると、コーテッドも達成感を感じていた。
訪れる人もそれなりにいるようで、小さな船着場まであった。
用意してもらっていた食事を持って島に上陸する。
木が生い茂っていたが、人が通れるぐらいの道ができており、そこを進んでいく。
「もしかしてこれかな〜」
大きな岩があり、見えやすくするようにだろうか周りの木は切り倒されていた。
二人は無言でそれを眺め『どこが魚の目なんだ???』と首を傾げた。
「すごくお腹、空きましたねー!」
リサは見たいと言っていた岩については一切触れず、切り株に腰を下ろした。
コーテッドも近くの切り株に座り、二人はサンドイッチのようなものを食べ始める。
ここはとても静かだ。
勿論ラブラとチワワの気配もない。
本当に二人っきりを実感しているこの機会に、コーテッドはずっと胸に秘めていた思いを口にしようとする。
「リサ・・・・ずっと、ずーっと言いたかっ」
「わかったー!!ここから見たら、かかとをつけてつま先を持ち上げている足みたいにみえますよ!!」
ここに来て確認して下さいとばかりにリサは立ち上がり、こっちを見ている。
どーしてこう上手くいかないのだろう・・・とコーテッドは大きなため息をつく。
自分がヘタレで今まで話さなかったのも悪いが、リサのこのタイミングの悪さも相当なものだ。
立ち上がらないコーテッドに気分を害してしまったかなとリサは謝った。
「すいません・・話の途中でしたね。ずっと言いたかったことってなんですか?」
コーテッドは何でもないと首を振り、リサの方に行って岩を眺めた。
「確かに!言われて見れば足みたいだなー!」
さっきまでのことは忘れて、感嘆の声を上げた。
しばらくすると、急に寒くなり日が大分と傾いてきた。
急いで別荘に戻ろうと舟に戻ると、湖面には霧が発生していたのだった。
これでは帰れない・・・と二人は呆然とするのだった。




