二つの国
ワンダ陣営は王配、サモエド王子、ラブラ、コーテッド、リサで集まっていた。
扉の外ではチワワが手慣れた様子でクッションを敷き詰め、噛み音のならない菓子を片手に楽な姿勢で聞き耳を立てていた。
ラブラは王配とサモエド王子に詳細を説明していた。
サモエド王子は犯人も捕まったので、軟禁をとかれて国賓扱いになっていた。
「ゲッシー国だったのか・・・」
確かにここ数年ニャータの度重なる攻撃の度に、ゲッシーからの応援要請はきていた。
だが女王陛下の妹のプードルがニャータに嫁いでいるので、表立って援軍は送れなかったのだ。
こちらの事情を理解してくれていると解釈していたので、そんなに恨みを買われていたとは王配にとっては心外なのであった。
援軍を送れなかったかわりに、物資及び資金援助もそれなりにしていたと記憶している。
ワンダとしてやれるだけのことはしていた。
だからワンダでの一連の出来事は、リサがいてくれたお陰で未然に防げたとはいえ、見逃せないと王配は考えていた。
サモエド王子は自身の無罪が確定されたので、弟のヌートリアのことは許すとのお考えだ。
だが兄のビーバーについてはマルチーズ兄上を騙したり、大叔父さんの名を語るのはやはり見過ごせないと思っていた。
ラブラも女王陛下は絶対に許さないだろうと思っている。
「私に免じてビーバーを許してあげてくれませんか?」
リサは思わず声をあげたが、王配もサモエド王子も良い顔をしなかった。
リサに助け舟を出したのはコーテッドだった。
「ですが、早急にゲッシー国の内情を探る必要があるかと思います。
そのときにビーバーがいる方が何かと便利ではないでしょうか?」
リサは結びで『ありがとう』と言ってきた。
すぐにラブラもそれに乗っかる。
「そうですね。
使えるのではないかとマルチーズ皇太子もビーバーを生かしておいたのでしょうし、ゲッシー国の内情がわかるまでは生かしておくほうが良いかと思います。」
「それも、一理あるな。」
二人も納得してくれたので女王陛下にその旨を書いた書簡を送り、返事を待つことになったのだった。
ニャータ陣営もアビシニアンの邸宅に集まっていた。
国王にシャム、それに主要な者たちにも顔を出してもらっていた。
みなアビシニアンの顔をみてホッとしていた。
「このようなこと許されるわけがない!即刻死罪にすべきです!」
事情の知らない者たちは声を大にした。
国王は「うるさい!」と、その者たちをギロリと睨んだ。
アビシニアンはシャムから今回の顛末について聞かされていた。
「私はこうやって生きている。だから今回のことは不問でよいのではないだろうか。」
「ですが・・」
「甘いです!」
不満の声をアビシニアンは片手で制した。
「心配してくれてありがとう。だが国王の度重なるゲッシー国への侵攻を止められなかったのは私の落ち度だ・・」
アビシニアンのその言葉に誰も何も言えなくなってしまった。
皆が黙ったので提案を口にする。
「ゲッシー国の内情をさぐり、あまりにも悲惨な状況ならニャータとして何か手助けできないかと思っているのだ。」
皆が口々に文句を言い出した。
こんなことまでされて相手の国を助けるなんて馬鹿げている。
国王は怒り出した。
「俺とアビシニアンがそう決めたのだ! 何か文句のあるやつはどいつだ!」
その剣幕に皆、口を閉ざすしかなかったのだった。




