風前の灯
今回の事件にワンダ国が関わっていないと、ハッキリわかったシャムは、サモエド王子の部屋から帰る途中、妻のプードルと王配に大事な話があると切り出した。
3人だけになると、シャムは今まで隠していたことをやっと口にする。
「実は父は生きているのだ。暗殺は未遂に終わっていたのだ。」
義父が生きているとわかりプードルはへたへたとその場に座り込んだ。
「良かった・・・」
「プードル。父を守るために、君にまで嘘をついてしまった。黙っていてすまなかった。」
プードルは首を振った。
「いいえ、それは構わないの・・・それよりもご無事で本当に良かった。」
「だが・・意識はあるものの目が覚めないんだ。」
医師もお手上げのようで、このままでは死を待つばかりだった。
王配は変なことを訊き出した。
「失礼だが、父上の特性はどのようなものがあるのですか?」
「すみません、私もはっきりと覚えていなくて・・・『知識』はあったと思います。
そうそう、『希望』と『絶望』が両方あるのは確かです。
『だからどんな状況になってもその反対側にまで考えが及ぶのだ』と自慢していました。」
シャムはなぜそのようなことを?と不思議そうに王配を見る。
「そういうときは体だけの問題だけでなく、稀に生死に特性が関与していることもあるそうなのです。もしそうなら・・リサに特性を消してもらったら・・ひょっとして・・と思いまして・・」
王配はちょっとした思いつきで話してしまったことなのに、シャムがイキイキしだしたので、途中で怖くなって口を閉ざした。
だがもう遅かった!
シャムは二人の手を取ると、サモエド王子のところへ戻った。
「リサ様、ちょっと来てください!」
扉を開けるなりシャムは言い、王配の手を放すと、次はリサの手首を掴んだ。
みんなが、きょとんとしている中、王配はラブラに一緒に来るように言った。
裏国王と呼ばれるだけあって、その屋敷は広大で豪勢だった。
プードルも同じ敷地内には住んでいるが、義父達が暮らすところへは、足を踏み入れたことはなかった。
何十年と住んでいる屋敷なのに、行ったことのないところへ入ると、プードルはにわかに緊張する。
リサとラブラは、何だかよくわからないまま連れてこられて、困惑していた。
重鎮の寝室近くの控え室に入ると、ようやく二人はここへ連れてこられた訳を教えてもらう。
「そこで、あなたのその特性を消す力で何とかしていただきたい!」
突然、そんな責任重大なことを任されることになって、リサは困っている。
「もう他に打つ手がないのだ・・このままでは死を待つだけになってしまう。」
リサは結びを使ってラブラに話しかけた。
『これって触っても目覚めなかったなら『無理だったか・・』で済むかもしれないけど、もし特性が消えたせいで息を引き取る可能性だってあるってことだよね?』
ラブラは結びで会話できることなど、すっかり忘れていたので、「わーっ」と声を出して驚いた。
言い訳のような咳払いをし「すいません」と謝った。
『リサ、笑ってないで・・・俺がちゃんと特性を見極めるから、大丈夫だよ。』
きっと先を見越して、王配はラブラに付いてくるように言ったのだろう。
「僕がまず、お父様の特性を見ます。その上でリサが触れるかどうかの判断をしてもいいですか?」
「勿論、それで結構です。」
シャムの承諾ももらい、みんなで重鎮の寝室に入ったのだった。




