一安心
ラブラは昨日、王配様から話し合いの様子を教えてもらったのだが、一発触発の睨み合いが続いたときには『そっちがその気なら受けて立つ!』とまで思ったらしいのだ。
どちらかと言うと王配様は、女王を抑える側の人で、いつも誰よりも冷静だ。
息子への冤罪、それに事情も聞かずに投獄したことを、それ程に腹に据えかねていたのだろう。
ではこの強大な2か国が争いを始めて得をするのは、誰だろうか?
勿論、武器商人達は、法外な儲け話にそれは喜ぶだろう。
あと、ニャータにいつもちょっかいをかけられている国も喜ぶだろう。
女王とレトリバー父はどこか第三の国もしくは大きな組織が、わざとこの2か国にそうさせるように仕向けたのではないか?と考えていた。
その場合、ニャータがワンダに攻めこんで行くのを、今か今かと待っているはずだ。
だからこそ2人はラブラを呼び寄せて「鑑定を使って犯人を見つけ出し、この騒ぎを収めてきてほしい」と頼んだのだ。
もちろん、サモエド王子の冤罪も必ず晴らすように言われた。
国王はラブラの話に考え込んでいたが、それだと辻褄が合うのは確かだ。
今の良好な関係を崩したいほど、ワンダがニャータに不満を持っているとは思えない。
身内がいるのだから不満があるのなら、そちらにまず言ってくるだろう。
なのに交渉もしないで、いきなり重鎮に手をかけるなど、愚の極みだ。
それに争いを起こす気があるなら、女王の妹のプードルをここに戻すわけがない。
巻き込まれないように、ワンダに引き止めておくはずだ。
「そうだな。犯人は私たち2か国の争いを望んでいるようだな・・・」
国王も考えれば考えるほど、そうとしか思えなくなってくるのだった。
それらのことを加味して、国王はサモエド王子を部屋での軟禁にしてくれた。
ラブラが真犯人を見つけてくることと、チャウの取り調べの内容次第では、すぐに自由にすると約束もしてくれたのだった。
その報告を持って、サモエド王子のところへ向かう。
牢屋が近づくに連れて、やけに騒がしいので、コーテッドは心配のあまり走り出した。
「だからー、王子をその辺の罪人といっしょに扱ってもいいと思っているの?
もっとふかふかのベッドぐらい運び込んだらどーなのよ!
しかも何?あのごはん!! あんなもの食べるなら餓死した方がマシよ!!
世の中の人もこう思うでしょうね『あんなものを口にしないで死を選ばれた王子は立派な方だった!』とね。」
あまりのキレッぷりにサモエド王子が気をつかいだした。
「チワワ殿、見た目ほどひどい味ではないのだよ。」
「いーえ、王子は無理をなさっているわ・・・私にはわかるのです。
あなたたちがこんなものしか用意できないのは、きっと薄給のせいで、人に意地悪しないとやってられない仕事だからなんでしょう。それを見越して王子は黙ってそれを口にし、文句も言わずに、ここで過ごしていたのよ!!
これを聞いてどう思うの? これでも王子の待遇を変えないって言うの!!」
無茶苦茶な理論で攻められて、見張りの男達は涙目だ。
「私達の一存では、そのようなことはできません。」
「でた!言い訳!! そうやって事を起こさないから王子の待遇も、あなた達の職場環境も一向に良くならないのよ!」
コンサルさんのようなことまで言いだしている。
コーテッドを見つけると、チワワは一目散に駆け寄ってきた。
「サモエド王子はどうなりましたかぁ〜?」
先ほどのことなど無かったように、声を作って訊いてくる。
あんなに見張りや衛兵の男達に文句を言っていたのも、サモエド王子の為ではなく、コーテッドに少しでも良く思われたいからなのだ!
先程までとの落差に、コーテッドも唖然としていた。
「・・・・・・何とか、牢屋からは出られるようになりました。」
「んまぁ〜、それはおめでとうございます」
指と指を合わせるだけの、音の出ない拍手をして、かわいさアピールも忘れないチワワなのであった。




