煩慮
政権に関わる貴族達にはサモエド王子が別人だとはわかってもらえた。
だが問題は王様を納得させられるかどうかだった。
実は偽物が前に来た時、国王はサモエド王子に会っていないのだ。
だから『魅了』も、左利きのことも通用しない。
せめて重鎮の父の意識が回復すれば、国王も少しは落ち着いて話を聞くかも知れないが、今の寝たきりの状態を目の当たりにしたら、生きていた喜びよりも、復讐心のほうが勝りそうだ。
そういうシャムも、父のその姿がとてもとてもショックだったからだ。
一体どうやって、この事態を納めればいいのだろう。
このまま国王を説き伏せなければ、サモエド王子は間違いなく極刑になってしまう・・・
何度か足を運び説明をするのだが、聞く耳持たないという感じで、シャムは軽くあしらわれていた。
だが唯一、国王が興味を示したのは『空からの使者』だった。
彼女には会ってもいいということになったのだった。
面会が決まり、みんなで作戦をたてることにする。
まずはリサを『空からの使者』と信じ込ませることができるかがカギだ。
プードル様にも見せた、あのチャウ様もどきを元に戻すのは効果がありそうだということになる。
他にも特性を消したら目に見えて効果がわかる人で、その力を見せつけようということになった。
ラブラとシャム様は、適任そうな人物を探しに行った。
だがリサは、たったそれだけのことで国王が『空から使者』だと信じてくれるのかと不安だった。
コーテッドもこれでサモエド王子の運命は決まるのだと思うと、他に何かないかと必死に考える。
『リサ、他に何かできることはないのか?』
コーテッドは結びでムチャ振りをしてくる。
何かって、何よ!
だから特技はないんだってば・・・
『かき氷を食べても頭が痛くならないです!』
コーテッドはもちろんその食べ物を知らないから、返事すらしてこなかった。
どうせ取るに足らないことだろうと判断したのだ。
その夜、リサは明日のことが心配でなかなか眠れなかった。
ドアをノックし、そこにいたのはラブラだった。
ラブラはリサの表情から、コーテッドが来てほしかったんだろうなと勘づいた。
「大丈夫かい、明日のことが心配なんでしょ?」
昼にみんなで話している時に、リサがそれは不安な顔をしていたのが気になったのだ。
「私が『空からの使者』だと認めてもらえないと、サモエド王子はどうなるの?」
ラブラはその質問に安易に答えなかった。
気安く大丈夫とも言えないし、本当にどうなるのかラブラ自身もわからなかったからだ。
リサが今にも泣きそうな顔をしているので、ラブラは抱きしめたくなる。
だが、ぐっと我慢をした。
今、特性を使えなくするわけにはいかないからだ。
髪ぐらいなら大丈夫だろうと頭をポンポンと撫でた。
「そうならないために明日の打ち合わせをしておこう。」
ラブラは優しく話し、そしてリサに説明をはじめるのだった。




