空からの使者
父に言われたように夕方にリサを連れて、とある部屋に行く。
そこには、女王や王配、マルチーズ王子にゴールデン兄上、それと見たことのない女性がいた。
「彼女は私の妹のプードルです。今はニャータ国に滞在中です。」
「こちらはリサ、正確には『シクラアリサ』伝説の『空からの使者』よ。」
女王はお互いを紹介した。
プードルはその女性に会うのを楽しみにしていた。
古くからある言い伝えの『空からの使者』。
姉がそんなことを急に言い出したので、頭がおかしくなったのかと心配したが、確かにワンダで起こった出来事を踏まえると、姉がそう言い出すのも理解ができた・・・。
この人が本物なら、きっと今回のことも丸く収めてくれるに違い無いと、藁にもすがる思いだ。
にこやかで可愛らしい女性ではあるが、そんな力を持っているようには、到底見えない。
お互いの紹介が済むと、ある人物が部屋に連行されてきた。
「プードル、これが誰だかわかる?」
「うーん? 若い頃のチャウ叔父さんに似てるけど、今の姿とは随分違うし・・」
その言葉に驚いたのは女王だ。
「あなた、チャウ様に会ったの?」
「ずいぶん前になるけどニャータを訪ねてきてくれたの。」
チャウ叔父さんは色んなところを転々としながら暮らしているようで、肌も焼けて髭をたくさん蓄えて熊さんみたいな風貌で現れたのだった。
さすがに歳を取ったなーとは思ったが、気ままに楽しく暮らしているようだ。
おじいさんと呼ぶには失礼で、まだまだ元気そうだった。
「そう・・・私はずっと会っていないからこの男をチャウ様だと信じてしまったの・・・」
女王は寂しそうにそう言った。
行方知れずのチャウ様になるためには、あの城内の肖像画だけが頼りだったのだろう。
「長い間会っていなかったんだから騙されても仕方ないわよ!」
プードル自身もサモエドを簡単に信じてしまったので、姉に同情した。
「よく見ていてね!」
女王は気を取り直し、リサに合図を送った。
リサがそのチャウ様もどきに触れると、全く知らない人になった。
「!!!」
特性を消す特性があるのは知っているが、こんな瞬時に消せるのはプードルも聞いたことがなかった。
「この男はニャータの者なのです。この男とリサを連れて行って今のを見せればサモエドが偽物だったとわかってもらえないかしら。」
「確かにこれは有効な手段だと思うわ。
彼女の特性にも驚いたけど、全くの別人になれるような強力な『化身』があることにもビックリだわ!」
「ああ、それなら」とリサが口を開いた。
「なんでも特性を強くしてくれる人がいるんですって、そこで強くしてもらったらしいですよ。」
「それ誰が言ってたんだ?」
みんなが思った疑問をコーテッドが口にした。
「シバがそう話してましたよ。彼の『暗示』もそんなに強くなかったらしいんですけど、そこで信じられないぐらい強力にしてもらったんですって!」
チャウもどきおじさんは急に大声をあげた。
「ははは・・・そんなことできるはずがないだろう! 俺は生まれつき『化身』が強かったんだ!」
衛兵達は「黙れ」と彼を強く押さえつけた。
「シバって、あのシバか?」
彼ならあの時リサと一緒に跡形もなく消えたハズだ。
『空からの使者』の逆鱗にふれて抹殺されたのだろうと、みんなが思っていた。
「そうです。あの人どうやら私に巻き込まれたみたいで、あっちに一緒に飛ばされたんですよ。」
その言葉にみんなあんぐりと口を開いている。
「あんな者が神の国にいるのか?」
王配は不審そうに声を上げた。
神の国って・・・そういう考え方なのね、ちょっと面白いな。
「あんなに罪を犯しておきながら、のうのうと生きているのか!」
「罰も受けてないなんて・・・あんまりだ!」
みんな否定的なことを口にしている。
「シバはあちらでは特性を無くし、毎日厳しい試練を受けています!」
前向きに頑張っているシバが、何だか可哀想になった。
知らないところで、一から生活をするのは、並大抵の努力が必要なことは体験済みだ。
リサがそう言うとみんなは口をつぐんだのだった。




