あの、オレ本当に何の取り柄もなくなったんですけどー3
「これ誰?」
降って湧いた男の出現に、優ちゃんは怪訝な視線を送った。
約束していた通り、私がリクを出しておいた『ジャンクでカロリーな揚げ揚げセット』を持って登場し、開口一番そう言ったのだ。
「ほら例の、私を刺そうとした男だよ!」
小声で言ったものの、シバは日本語を理解していないから無意味なのであった。
「そんな物騒な人と何で一緒にいるの?」
経緯を簡単に説明する。
「もう!こんな男放っておけばよかったのに!!何で助けたのよ!」
「だってこっちに知り合いなんて誰もいないんだよ・・それに言葉だって通じないし・・」
アリサも最初の頃、とても不安だったから、ついシバに手を差し伸べてしまったのだ。
優ちゃんは理解できないとプンプン怒っている。
「で、ちゃんと謝らせたの?」
「何を?」
「刺されそうになったことに決まってるでしょーが!」
アリサは会話を思い返してみる、そんなこと言われたかな〜と首を傾げた。
返事を聞くよりも優ちゃんはシバに文句を言い出した。
アリサは慌てて通訳する。
「大変、申し訳ございませんでしたー。」
シバは優ちゃんに強要されて何度も謝り、土下座までさせられている。
本人はそれが屈辱のポーズだなんて知らないだろうから、まあいいか。
「こんな男まで現れたんだから、異世界の話はどうやら本当そうね。」
優はやっと得心したようだ。
アリサは知らない言葉を流暢に話しているし、シバという男も同じ言葉を話しているようだ。
だが優は、このシバがどんな人物なのかを見定めようと、色々と質問をしていく。
シバは優ちゃんが訊いてくることには素直に答えた。
アリサは真ん中で通訳をしながら、せっせとカロリーを摂取している。
「どうしてそんなバカなことをしたのか?」
バカなこととは勿論、王権を取ろうとしたことだ。
まあ、シバの気持ちはわからなくもない。
きっと不遇な少年時代だったのだろう・・・
と思ったらこの親子かなりの金額を受け取っていたそうだ。
住むところこそ質素だったが、かなりの贅沢をしていたらしい。
そんなことしていたらそりゃお金も使い果たすはずだ。
そのうちその援助も徐々に届かなくなり、生活に困って・・・ってこともなかったらしい。
この親子二人とも『暗示』が使えるもんだから、お店に行っては『暗示』をかけて色んなものを拝借していたそうだ。
拝借って言うか完全にヤッちゃってるよね。
シバが捕まったのも、たまたま店の主人に暗示がきかなくて、そうなっただけだったようだ。
同情の余地がどこにもないんですけど・・・優ちゃんもあきれかえってるし!
「で、これからどーするの?」
「それなんだよねー、まず言葉を覚えるところからだよね。」
「いや、そうじゃなくて!ここで住むの?!」
「だってそうするしかないじゃない!」
アリサだってシバのことを信用してるわけじゃないけど、だからと言ってもう一部屋借りる余裕などあるわけがない。
「変なことしたらここを追い出すときつく言っておけば、バカなことはしないんじゃない?」
「バカはアリサだよ!! もー、仕方ないから夜はこっちで面倒みてあげるよ。」
「いいの!?優ちゃん・・・我が心の友よーー!!」
アリサは優に抱きついた。
当面のことは決まったし、あとはこのシバ次第であった。




