わちゃわちゃ
しばらくすると女王の『暗示』はとけた。
だが女王の怒りは凄まじかった。
身に覚えのある王配はさっさと逃げ、出遅れたレトリバー父とリサに向かってすごい剣幕であの2人のことを罵りだした。
女王は普段から、負の感情を抑え込むように努めていた。
一番上に立つ者として、そういうものに振り回されてしまうと、本質を見失うことになるからだ。
それを見せると「だから女は感情的で困る。」などと陰口を言われ、軽んじられてしまう。
だから腹がたっても辛くても苦しくても、できるだけいつもフラットな気持ちでいるよう絶えず自分を律してきた。
なのに、なのに、そうやって積み重ねてきたこの座を、卑劣な手段を使って奪うなど許されるわけがない!!
しかもあろうことか、チャウ叔父の名を語るなど卑劣の極みだ!!
「どこにいる・・・」
女王はギロリとこちらを睨んで呟いたが、恐ろしくて誰も返答しない。
「あいつらはどこだ!」
その剣幕に王配とレトリバー父は手を取り合って、プルプルと震えている。
女王のとんでもないキャラ変に戸惑いつつ「ろ、牢屋です」とリサがこたえた。
「よーし、付いてこい」
女王はこちらを見もせず、後ろ姿のまま、手で来い来いと合図を送った。
その牢屋は大変な事になっていた。
まずマルチーズはチャウのことを見つけるや、金的攻撃を繰り広げた。
向こうがどんなリアクションをしても、無言で蹴り続けている。
その姿に念の深さを感じたゴールデンは口出し無用で、ただただそれをぼーっと眺めていた。
するとなぜか隣の牢にラブラが捕まっているのを見つけ、急いで助けた。
詳しい事情を聞いているところにシバが現れたのだ!
チャウは泣きながら助けを求めた。
「おいシバ、はやく、はやく助けてくれ〜!」
「馴れ馴れしく、俺に指図すんじゃねーよ。」
そのチャウ(まだ知らないおじさんのまま)にシバは顔面パンチを喰らわす。
「おお〜、いいパンチだな。もう一回見せてくれ!」
チャウをぶちのめす手伝いをしてくれる人が現れて、マルチーズは拍手を送った。
褒められてまんざらでもないシバは見張りから鍵を受け取ると、牢屋からチャウを出してきて、もう一発お見舞いした。
その後もなぜかシバがパンチを出し、マルチーズがそれにいい感じの合いの手を入れて2人は盛り上がっている。
その光景にゴールデンとラブラは唖然とする。
そして『あれ?意外とこの人たち気が合うんじゃないの・・・』なんて思っていた。
疲れてきたシバは、ようやくここに何をしにきたかを思い出した。
お目当てのラブラが、牢から出ていることに気がつき、突っかかっていく。
「テメーは許さん!」
そう言って殴りかかろうしているのを、背後からゴールデンが羽交い締めにした。
その前にマルチーズは立つ。
「シバ、残念ながら君はもう負けたんだ。」
マルチーズはチャウが偽物の地点でもう勝負は決まったと踏んでいた。
「そうかな・・・」
そう言って不敵に笑うシバはマルチーズを凝視する。
「目を合わせてはいけない!」
ラブラが注意するよりも早く、マルチーズは『暗示』にかかってしまった・・・
パグへの復讐を果たし、心が晴れ晴れしていたマルチーズは、見つめられると『暗示』にかかるということなど、頭からすっぽりと抜け落ちていたのだった。




