合流
シバが遠くに行ったとわかるとラブラはムクッと起き上がった。
『ふー、あんな芝居で引いてくれるなんて、単純な奴で助かった』
ラブラもはじめからあんなに挑発するつもりはなかった。
だが顔を見たとたん、かなり強力な『暗示』持ちだったのでビックリしたのだ。
正攻法だと『暗示』をかけられそうだったから、わざと心を乱すような発言をした。
『暗示』のような特性は、かけるのに集中力を要するだろうと考えたからだ。
自分は何とか大丈夫だったが、兄や父はもうかけられてしまっているのだろう。
特に父はかかりやすそうだ。
というか・・もう乗っ取られそうなんじゃないかと空恐ろしくなる。
だがいくら強力な『暗示』でもこの城中の人にかけて回るのは物理的に無理だろう。
だとしたら・・・と試しに見張りの男に声をかけてみた。
やはり彼はかかっていなかった。
事情を説明すると彼は快く協力を申し出てくれた。
こういう時、レトリバーの名前は効力を発揮する。
早速、ラブラの顔を知っていそうな兵長クラスの人を呼んできてもらうよう頼んだ。
来てくれた兵長はこの城に長く仕えている人物だったので、もちろんラブラの顔を知っていてくれた。
兵長に『信頼』と『忠誠』の特性があることに感謝する。
最近の城内の様子を教えてもらう。
女王はやはりシバに陛下の座を譲ろうとしていて、それにほとんどの上の人がもう同意しているらしい。
だがマルチーズ王子だけが反対していることも知れた。
衛兵たちも、急に降って湧いたシバのことがどのような人物なのかもわからないのに、いきなり王様になると聞かされどうしたものか戸惑っているようだ。
それを踏まえてラブラはその兵長に2、3頼みごとをしたのだった。
その二日後にはコーテッドとリサは王都に到着した。
だがいきなり2人は牢に連れてこられラブラと再会する。
とは言ってもラブラは檻から出ており、用意してもらった豪華な椅子に座り、ナッツをつまみながら見張りや衛兵と楽しく賭け事をしていた。
「あにうえ??」
怪訝そうにコーテッドは声をかけた。
「おお、来たか。 リサ、君を待っていたよ! コーテッドもね!」
ついでみたいに言われてコーテッドは眉根を寄せた。
あの兵長に頼んでおいたことは、この2人が来たら上には知らせないでここに連れてきてもらうことだった。
ラブラは今この城内で起こっていることを話す。
オーナー4世の息子が『後継者の証』を持って現れたこと。
その子シバはかなり強力な『暗示』を持っており、女王をはじめ次々と暗示をかけられていて、このままでは王権を取られそうだということ。
「そんなの、盗まれた『後継者の証』に決まっているでしょう!」
コーテッドが最もなことを言った。
「それが・・チャウ様が彼の後見人として一緒に来たのだ。」
「チャウ様が?! この国を出て行った人が今更・・・どうせ偽者ではないのですか!」
コーテッドもラブラもまだ登城前だったので、チャウ様には会ったことがなかった。
話を聞いていた衛兵が口を開いた。
「私も、もちろんお会いしたことはございませんが、城内に飾ってある肖像画とそっくりでした。年長の者たちはチャウ様の顔をもちろん知っていますし、偽者とは考えにくいかと・・・」
「ありがとう、参考になったよ。」
ラブラもずっとそれが引っかかっていたのだが、今の話を聞く限り本物なのだろう。
「チャウ様はまあいいとして、問題はその息子なのだ。
そこでだ、リサにみんなの『暗示』を解いて回ってもらいたいのだ。」
「え? 私?」
急に名前が出てきたリサはきょとんとする。
3人は頭を近づけてひそひそと話し出したのだった。




