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窮地


だが明朝、事態は一変する。

「私は女王を降りることにします。このシバが次の王様にふさわしいと思うの。」

陛下は急にそんなことを言い出したのだ。


前夜、女王の部屋をこっそり訪れたのはチャウとシバだった。

疲れていると辞退したチャウがやって来て、初めは女王も戸惑った。


「この子は寂しい身の上でな・・・ずっと姉弟が欲しかったらしいのだ。

このシバと話してやってくれないか。」

チャウにそんなことを頼まれたのだ。


そうして彼の身の上話を聞いている間に、何だかとてもこの子に全てを譲ってあげたくなったのだ。

そう彼の特性『暗示』にかかってしまったのだった。


トップの女王さえかかってしまえば、後はもう簡単だった。

反対していた者たちにもじっくり時間をかけて『暗示』をかけていった。


王配、レトリバー父、ゴールデン、彼らは「話がしたい」とシバに寄ってきた。

会話や視線を合わせることで『暗示』はかかっていくのだから、自ら『暗示』をかけてくれと言ってるのと同じだ。


今ではかかっていないのはマルチーズ王子ぐらいだろうか。

だが味方がだんだん減っていくこの状況では、彼もそのうち話し合いを求めてくるだろう。

自分が王様になるのは時間の問題だと、シバは余裕をかましていた。



「面倒な奴が来たな」

ラブラが王都に来たのでチャウは顔をしかめた。

「そいつがどんなにすごい『鑑定』を持ってるからって、1人で一体何ができるって言うんだ?」

シバは馬鹿にしたように鼻で笑った。


「いや、多分それだけじゃなく他にも何かやっかいな特性があるかも知れん。」

チャウは今日やって来たラブラを牢屋に入れたが、どうにも落ち着かないのだ。


「だったら、俺がちょっと行ってそいつに『暗示』をかけてきてやるよ!」

シバは足取り軽く牢屋へ向かった。



そのラブラはというと城に入るなり衛兵に連行されて、牢屋に閉じ込められて困っていた。


レトリバー家の者をこんな風に扱うとは、これはなかなか深刻な事態に陥っているようだ。

思っていたよりも強い『暗示』が息子に継がれたのだろうか。

心が通っていなかったとはいえ王族の血が混じったからなのか。


コーテッドにリサを連れて王都に来るように書簡を送っておいたから、数日後には着くだろう。

それまでここにいることになるのか・・・とため息をついた。



そのとき、軽快な足音が聞こえてきた。

「お前がラブラドールか?」


ラブラは一目見て声の主がシバだと気がついた。

返事もせず、特性を挙げていく。

「『暗示』は中ぐらいといったところか。『熱意』に『自己中』ってこれは父親似だな。」

「うるさい、黙れ!」

父親のことを言われるのはシバは何よりも嫌だった。


「嫌悪に苛立ちか・・・父親のことは触れられたくなかったか?

それとも思ったよりも自分の特性がたいしたことなくて苛立っているのか?」


「うるせー!」

鉄格子ごしにラブラの腕を掴んだ。

「思う通りにならなかったら暴力か・・・まあ王様の器ではないな」

ラブラは臆することなくずけずけと言う。


「クソヤローが!!」

シバは口汚くラブラを罵ると『暗示』をかける。


「おまえなど消えろ」

「おまえなど消えろ」

「おまえなど消えろ」

怒りが収まらないシバはその言葉を何度もいいながらこちら凝視してきた。

暗示をかけてしまえばその減らず口もきけなくなる。


その時だった!

ラブラは自分自身を殴り出した。

シバは『かかった』と手を放したとたん、ラブラは自ら壁に向かって激突しに行きそのままブッ倒れた。


「うわーっ、はははは!ざまーみろ!テメーはそこでくたばってろ!!」


シバはこんなに愉快なことはないと高笑いしながら牢を後にしたのだった。



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