いつかの日
自分たちの領地に帰ってきたコーテッド達も毎日元気に暮らしていた。
コーテッドは相変わらずリサに振り回されて怒ったり、王子の世話を焼いたりと忙しい。
リサも帰ってきてから何か手伝えることはないかなと考えた。
四則計算ぐらいはまあ大丈夫だと思うなので、そのことをコーテッドに話してみた。
そこで仕事を任せる前に、簡単な計算テストをうけさせられたのだった。
「ふっふーん、これで文句ないでしょう!」
全て正解だったリサは鼻高々だった。
リサの計算が早くて正確だったのでコーテッドは驚いたのだった。
それからは領地から送られてくる収支報告に間違いがないか確認する手伝いをしてもらっている。
間違いのみならず、去年との妙な差額や、よくわからない収支まで指摘してくるのだ。
はっきり言ってここで働いている誰よりも有能だったのだ。
コーテッドはこういうところにリサの底知れなさを感じていた。
貴族が通うような高等学院でも教えないようなことが身についているのだ。
そう思うとまた『異世界人』という未知なる言葉が頭をよぎる。
急に降ってきたということは、急にいなくなることもあるのだろうか・・
リサがいなくなる!?
そう考えただけでコーテッドは足元からサーっと血の気が引いていきそうだ。
リサが居るのがもう当たりまえになってしまい、彼女がいなかったときがどんな風だったかも思い出せない。
それぐらいに自然とコーテッドに溶け込んでいるのだ。
「コーテッド様!どーしたんですか、ぼーっとして!
デーンさんがお昼ごはんできましたよーって言ってますよ。」
リサに声をかけられて、我に返った。
『リサはちゃんとここにいる、大丈夫』と自分に言い聞かせる。
「今日はビチャビチャ定食かモソモソ定食らしいですよ。
私、絶対にビチャ定がいいから先に行きますよ!」
そう言って出て行ってしまう。
感傷的になっていたコーテッドは思わず「行くな!!」とリサを引き留めたがもう遅かった。
リサが去った部屋は静かだ。
いつかこんな日が来るのだろうか・・・
声をかけられたような気がして戻ってきたリサは、開いていた扉から顔をのぞかせた。
「大丈夫ですか?そんな不安な顔しなくても一緒にモソ定、食べてあげますよ。」
人の気も知らずにそんな呑気なことを言っている。
不安からなのか、どうにもこうにもリサに触れたくて仕方がなくなる。
近くまで来て顔を覗き込んできたので、お互いの目が合った。
コーテッドは思わずリサの顔にかかっていた髪を耳にかけた。
「ぼっちゃ〜ん、とうとう結婚ですか?!」
そう言いながらデーンはズカズカと入ってきて、それは嬉しそうにコーテッドとリサの手を取る。
コーテッドは「誤解だ、バカ!」とデーンを叱る。
「か、髪にゴミが付いていたから取っていただけだ!」
照れ隠しの嘘をついたが、デーンが来なかったら抑えられない感情のままリサに何をしていたのだろうと思うと自分が恐い。
内心ドキドキしていたリサは、そういうことだったのねと少し落ち込む。
この間のハグ以来コーテッドが気になるというか、はっきり好きなんだと気付いてしまった。
でも自分に触れると特性が消えてしまうらしい。
ここでは特性は預金通帳よりも大事なものなのだ。
そう思うと、どうにも二の足を踏んでしまうのだった。




