143 「やさしい猫」
こんにちは。
今回も本のご紹介で、こちらも中学国語の教科書で紹介されている本です。
〇「やさしい猫」
中島京子・著 / 中央公論社(2021)
第56回吉川英治文学賞受賞。芸術選奨文部科学大臣賞受賞、貧困ジャーナリズム大賞特別賞受賞。
あまりテレビドラマを視聴しない人間なもので寡聞にして知らなかったのですが、すでにNHKで2023年にテレビドラマ化され、舞台にもなっている作品だそうです。
実はこちらも、勤めている学校のとある先生から「『やさしい猫』面白かったよ、よかったよ~」とお勧めされたものです。
タイトルとカバーデザインから、なんだかほんわかと心温まるストーリーなのかなあと想像していたのですが、読み進めるにつれてどんどん過酷な状況に。後半はほとんど裁判ものとなり、息苦しいほどに先が気になって読む手が止まりませんでした。
あ、あと前回に引き続きこちらも泣かされます。ハンカチのご用意を!(笑)
では少しだけストーリーのご紹介を。
語り手は母子家庭で育つ娘、マヤ。冒頭は小学四年生ですが、次第に成長していきます。
お父さんは3歳のときに急な病気で他界しており、思い出はぼんやりとしか残っていません。まだ若いシングルマザーであるお母さん(マヤは「ミユキさん」と呼んでいます)は保育士で、必死に働いて母ひとり、子ひとりの家庭を維持しています。
とあるきっかけから、東日本大震災のボランティアに出かけたミユキさんは、そこでスリランカ人の青年クマラに出逢います。
最初はそれだけの関係だったのに、東京に戻ってクマラ(ふたりは彼を「クマさん」と呼びますが)と再会するミユキさん。次第に親密になり、やがてプロポーズされ……。
ところがとんとん拍子には進まない。ミユキさんが気に掛けるのは、なにより大事な娘のマヤちゃんだから。ということで一回目のプロポーズはあえなく断られるクマさんでしたが、その後もなんだかんだ諦めずにまずは「おともだちでいいです」と母子とのつきあいを継続。
何年もたってようやく結婚までこぎつけたあたりから、雲行きが怪しくなります。
実はクマラさん、勤務先だった会社が倒産してクビになり、結婚するために必死に次の仕事を探すうちにオーバーステイになり、在留資格を失ってしまったのです。
でも「日本人であるミユキさんと結婚して入国管理局によくよく相談すればきっと解決する」という友人からの情報を聞き、結婚後入国管理局へ行こうとしたところで、なんと逮捕されてしまい……。そのまま入国管理局に収容されてしまうクマさん。
クマさんはビザのために偽装結婚したのだと疑われてしまい、退去強制令が下されてしまったのです。
もうね、そこからが本当に大変。
クマさんが気の毒でなりません。気をもみ、さまざまに奔走するミユキさんも、大事な高校受験のさなかに大変なことになってしまうマヤちゃんも可哀想でならない。
作中、ほかにも似たような境遇の別の国の人の状況がいろいろと紹介され、日本における外国人と日本の家族が直面する理不尽さ、つらさや困難がどのようなものなのかが、リアリティをもって丁寧に描きだされています。
後半は前述のとおり厳しい裁判シーンになり、息詰まる展開に。
ちなみに「やさしい猫」とはクマさんがマヤちゃんたちに語ってくれた、スリランカ民話のうちのひとつのお話だったのでした。こちらのお話にも、この物語と関係するような寓意があるのかもしれない……という記述も出てくるのですが、なかなか興味深かったです。
本当にいろいろなことを知り、考えさせられる作品でした。
マヤちゃん視点で彼女の語り口で描かれているので、若い人にも受け入れられやすいのではないかと思います。あちこちに出てくるマンガのタイトルなども、知っている子が多いのではないかと。
こちらもまた、学校図書館にあるといい本のひとつかなと思いました。
それでは、今回はこのあたりで。





