嫌われ聖女と魔法使い
「では、これからの魔法学の授業について、説明します」
授業中、私は今日も麗しいヴァンス先生をじっと見つめていた。クラスの担任であると共に、魔法学の専門でもある。好き。
最高なことに、席は講堂の後ろの方なので舐めるように見ていても全く気付かれない。
逆にヴァンス先生がこちらを見ようものなら、私はきっと発光してしまうので、目が合わない方がとても平和的だった。
「魔法の基礎1については、ひととおり理解できましたか? 次回からは実際にコントロールや組み立てについて学んでいきます。そのために、今から生徒同士で自由にペアを作ってください」
私がぼんやりしていると、そんな号令があった。
(ペア? ペアってあの、ペア!?)
ぼっちにはなんと難しい課題だろう。
慌てて周囲を見ると、既に仲良しグループでわいわいとペアが作られている。
これは急がないといけない。
そう思った私は近くにいた人に思い切って声を掛けてみる。
「あの、すみません。私とペアになっていただけないでしょうか?」
「ひっ……、そ、そんな、聖女さまとペアなんて畏れ多いです。申し訳ありませんっっ!」
私を見て顔を青ざめさせた女生徒は、そう言うとビュンといなくなってしまった。その背を追うと、そこにいた別の生徒とペアになったことが窺える。
「……あの」
気を取り直して、他の人に声をかけようとした所で、そのことを察した生徒が波が引くように私の傍から離れた。
声をかけられると断りにくいと察したのだろう。
(これは……なんか流石に私も傷付くというか……)
私は伸ばしかけた手を下ろして、そのまま着席した。もちろん、ひとりぼっちだ。
「皆さん、ペアは出来ましたか?」
無常にも、ヴァンス先生のそんな声がする。
ペアなんて先生側で決めてくれたらいいのに、と思いつつ、もし私に友達がいたら友達と一緒にやりたかっただろうなとも思う。
ぱちりと先生と目が合う。
気持ちがそれどころじゃなく落ち込んでいたからだろうか、今日は発光しなかった。
「ランドストレームさんとジェニングさんは二人で組んでもらいますね。お二人とも力が強いので、ちょうどいいと思います」
眼鏡の奥で柔らかく微笑んでそう告げる先生に、私は涙が出そうになった。
気にかけてくれて、ペアの相手まで自然に決めてくれるなんて……!
(あれ、ちょっと待って)
感動しつつ、私の中の冷静な部分が何かが気になると警鐘を鳴らす。
ランドストレームさん。どこかで聞いた名だ。
それも、とても最近。
「では、来週からは今決まったペアでしばらく実習をして行きますので」
先生が教卓のノートに手をかざすと、そこが淡く青くぱあっと光った。かと思えば、その光が講堂にいる生徒ひとりひとりの所へと届く。
私の目の前にも、小さな青い粒がふよふよと浮いている。
「では皆さん、それを手に取って。そうです。では――いきます」
「!!」
私がその粒を片手で包み込むと、それは手のひらでさらに輝きを増した。そこからの光は天井近くまで伸び、そしてそこから弧を描くようにして教室の端へとんでゆく。
周囲にも同じような青白い光の線が満ちている。
そしてその光を追うと、他の生徒の元へとたどり着いた。
「わっ……」
光が導く先にいたのは、ムスッとした顔で私と正反対の端の席に座る紫髪の少年だった。
そうか、そりゃ聞いたことがあるはずだ。
「光の導く先にいるのが、ペアの相手で間違いないですか? 間違っていたら変更しますので申し出てください」
にこにことした顔で告げるヴァンス先生をちらりと一瞥したあと、私はまた視線をとある男子生徒の方へと戻す。
「……最悪。リディアーヌの言いつけを守って授業を受けたらこんなことになっちゃった」
彼からはそんな言葉まで聞こえてくる。
どうやら私のペアは、私を火だるまにする宣言をしていた最年少最強魔道士の『ウル・ランドストレーム』くんで決定してしまったらしい。
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