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逆境聖女は闇堕ち予定の推しを救いたい  作者: ミズメ


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2/19

生徒会室にて


 実は私には前世の記憶というものがある。


 初めて光魔法を発現した日、その反動からかひどい高熱に苛まれることになってしまった。


 原因不明のその高熱で両親に散々心配をかけた三日後、その熱は嘘のようにサッと引いた。


 ──するとどうだろう。

 目を覚ました私の頭の中には、これまでのセシリアの十六年間とは異なる記憶が存在していた。


 俗に言う、『異世界転生』である。私にはわかる。


 セシリアではない生前の私は、日本人だった。


 身体が弱く幼い頃から入退院を繰り返していて、そんな私にとって癒しとなったのが、読書である。


 色んなジャンルの本を読んだけれど、最近は特にファンタジー小説が好きでよく読んでいた。

 自ら運命を切り開くヒロインたちに憧れ、それからかっこいいヒーローたちに胸をときめかせる。


 それが唯一の楽しみかつ癒やしだった。


 

 最期のほうの記憶は曖昧だけれど、きっと私は病魔に侵されてそのまま死んだのだろう。

 苦しく長い日々だった。


 闘病生活を支える両親も疲弊し、兄妹にもたくさん迷惑をかけた。


 私のせいで、みんな我慢を強いられていたはずだ。

 そう思い返すと悲しくなる。


『リア、大丈夫かい?』

『よかった、熱はすっかり下がっているわね』


 泣きそうになった私に、(セシリア)の両親が駆け寄る。

 すっかり心配をかけてしまった。


『うん、もう大丈夫!』


 セシリアは健康優良児で、これまで体調を崩したことがない。そんな私が熱にうなされている数日は、両親も不安だっただろう。


 これまでの暮らしは豊かとまでは言えないが、笑顔の絶えない温かく柔らかな家庭だった。


 窓に映るセシリアは、胸くらいの長さのふわふわの桃色の髪に、大きなまんまるのアンバーの瞳、それを縁取るまつ毛が豊かでとても愛らしい少女だった。

 透き通るように白い肌、果実のようなちょこんとした唇。控えめに言っても美少女。


 その容姿もさることながら、セシリアは息を切らすまで走り回ることだってできる。

 そしてこの世界には魔法があって、加えて学園生活まである。


 ここでなら、やり直せる……?


 それはまるで、前世で叶えられなかった私の夢そのもので。

 夢ならば醒めないでほしいと何度も思った。



 だからこそ入学式も楽しみにしていて、友達もたくさん作れたらいいなあと呑気なことを考えていたわけですけども。



 所変わって、そんな私は現在生徒会室に来ています


「……セシリア・ジェニング……」

「はい……」



 入学式の後、やたら遠巻きにされる教室で首を傾げていると、担任のヴァンス先生に言われて生徒会室にやってきた。


 すると、入室早々に部屋の奥の執務机のところに腰掛けていた紺色眼鏡の男子に睨まれている。


「本当に来るとはな……ふう」

「……はい」


 どこかで聞いた言い回しだ。

 でっかいため息も同じ。そう、私は見知らぬ人2号に再びあの剣呑な眼差しを向けられている。


「……」

「……」


 膠着状態が続いた室内だったが、扉の開く音とともに賑やかな声が入ってきた。


「ルドルフォ~!! 例の子来た~~!?」


 紫髪の少し幼げな少年が飛び込んでくる。


「わあ~本当にいた~~」


 にこにことした笑顔を浮かべていた彼だったが、私と目が合うとその灰色がかった丸い瞳をすうっと細めた。


 ――うん、嫌われてる(確信)。


「……ウル。さすがに本当にそんなことがあるわけ……あった」


 続いて入室してきた赤髪のガタイのいい男も、私を見るなりそんなことを言う。

 あからさまな嫌悪さえ浮かべてはいないが、驚愕と警戒心が入り交じったような複雑な表情を私に向けている。


 ――はいはい、嫌われてr


 もう考えるのも嫌になってきた。


 どういう訳か、初対面のはずのこの人たちには私の存在が知れ渡っている。

 しかも、悪い(・・)印象で。



 藍色の髪の眼鏡の人は、ゆっくり立ち上がると私を真っ直ぐに見た。


「私はこの学園の生徒会長を務めるルドルフォ・ガウリーだ。……セシリア・ジェニング。稀有な光魔法の使い手である君を、生徒会に迎え入れる。歓迎しよう」


 苦虫を噛み潰したような表情で、ルドルフォさんは眼鏡を光らせる。


「……ウル・ランドストレームでーす。歓迎しまーす」

「アクスル・ニーチラングだ。……よろしく」


 紫の少年はあからさまに明後日の方向を見ているし、赤毛の筋肉男子は警戒している。


 いや、あなたたち絶対に歓迎してないよね?とは流石に口を出せず。


 それらの挨拶からは微塵も歓迎の意図が感じられなかったけれど、私も一応自己紹介をすべきだと思い直した。


「私はセシリア・ジェニングです。分からないことだらけですが、よろしくお願いします」


 手短にそう言って、頭を下げる。

 本当に分からないことしかない。


 その間も、顔を上げてからも、三者からは返事が返って来ることはない。ただただ観察するような視線を感じるだけだ。


「……今日は顔合わせだけだ。もう帰っていい」


 眼鏡の人に仏頂面でそれだけ言われた私は、生徒会室を早々に追い出された。

 解せない。

お読みいただきありがとうございます。

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