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空の妖精  作者: 道豚
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丸いお尻にショートパンツ


 部屋に逃げ帰って「ほっ」としたところで、博美はビキニのままだった事に気が付いた。パジャマも下着も全部明美の部屋に置いてきている。

「(えーっと、困ったなー 下着は別のを出すとしても、パジャマはあれしか無いもんな)」

 博美は「ふー」っとため息を吐くと、ベッドに腰掛けた。

「(これって、痩せすぎじゃないのかな?)」

 下を見ると、ビキニのブラとパンツの間に白いお腹が見えている。博美は脇腹からお尻に向けて手でなぞってみた。

「(すべっすべだー)」

 脇腹に肋骨が「ゴツゴツ」してなく、お尻に向かって滑らかなカーブを描いている。

「(お尻、意外と大きいのかな? 座ってるから大きく思うのかも…)」

 博美は立ち上がり、腰を捻ってお尻を見た。

「(こうして見ると、大きいかな?)」

 手を後ろに回してお尻を撫でる。丸いお尻は博美の手によって「ぷにぷに」と形を変えた。

「博美ー 忘れ物!」

 明美の声がしたとたんドアが開いた。お尻に手を当てたまま、博美がフリーズする。

「あら? 楽しんでた途中だったの?」

 開けたドアの所で明美は立ち止まった。

「ちがーう! おかあさんのバカー」

 博美の投げた枕が閉まったドアにぶつかり下に落ちる。そこには博美のパジャマと下着が残されていた。




 翌日曜日の朝、秋本家の三人は明美の車で街に向かっていた。

「なんでお姉ちゃん、今日は後ろに乗ってるの?」

 何時も助手席に乗るのに、珍しく後ろの席に憮然として座っている博美に光が言う。

「別にー ただ今日は後ろに乗りたかっただけ」

 光の方を見もせず「ぶすっ」と博美が答えた。

「だから、ごめんなさい。 って言ってるでしょ。 そろそろ機嫌を直してよ」

 運転席から明美が話しかける。

「うん? 何があったの?」

 どちらに聞くともなく、光が疑問を声に出した。

「夕べ、お母さんったらノックもせずにドアを開けたんだ。 酷いよね、僕たちにはいつも言ってるのに」

 昨夜のことを博美が話し出す。

「だから、ごめんって。 でも博美もあんな事をするときはカギぐらい掛けた方がいいわよ」

「あんな事って?」

 明美に光が訊ねた。

「博美ったら、自分でお尻を撫でてたのよ。 年頃よねー やっぱり気になるわよね。 加藤君の事でも考えてたのかしら…」

「ちがーう! そんな変な事をしてたんじゃないってば」

 博美が少し顔を赤くしながら、必死で明美の言葉を否定する。

「んじゃ、どうしてお尻を触ってたの?」

 光の素朴な疑問だ。

「お尻が大きくなったかなー って見てたんだ」

「お姉ちゃん、お尻大きいよ? 数値的にはそんなに無いかもしれないけどウエストが細いから、こう「ぐぐっ」という感じに見える。 それに丸くて垂れてないもんね」

 視線を博美の下半身に向けて、光が言う。

「そうそう、私も夕べそう言ったのよ。 なかなか信用してくれなくてねー」

 明美が運転席から割り込んでくる。

「博美のウエストからヒップのライン…… わが子ながら嫉妬しちゃうわ」

「そうだよねー こう「むらむら」してくるよね」

 光がへんな表現で相槌を打った。

「分かったから、二人とも止めて」

 視線が怪しくなってきたのを感じて博美が光から距離を取った。




「これもいいわねー 光、これも博美の所に持っていって」

 バスセンターの2階にある婦人服売り場で、商品棚から取り出したショートバンツを明美が光に渡す。博美の午後からの予定に合わせるため、明美はバスセンターまで車を運転したのだ。

「うん、いいよ。 私も試着したいのがあるから、一緒に持っていくね」

 シャツやスカートが入ったかごの中に明美から受け取ったショートパンツを入れて、光は試着室に向かった。

「お姉ちゃん、どう?」

 一番奥に博美のサンダルを見つけると、光がカーテン越しに声を掛ける。

「うん、サイズは良いみたい。 けどこんなに膝が出るものなのかな?」

 カーテンの中から戸惑ったような声が聞こえた。

「見せて」

 光の言葉に博美がゆっくりカーテンを開ける。

「どうかな?」

 白いフレアースカートを穿いた博美がポーズを取った。

「わー お姉ちゃんよく似合ってるよ。 長さもこんなもんじゃない? これで膝丈って言うんだよ。 それにこのスカートなら、トップスをインして、ハイウエストにも出来るね。 そうするとミニスカートにもなるし… これは決まりでしょ?」

 ポーズを取った博美は、まるでファッションモデルのようで、その辺に立っているマネキンが色あせて見えた。

「うん。 それじゃこれにする」

 博美はファッションに関して光の意見には逆らえない。

「お母さんがこれも試着してだって」

 光がかごの中からショートパンツを取り出す。

「はいはい。 こうなることは分かってはいたけどさー、もう彼是かれこれ30分ぐらい試着室ここに居るんだよ。 もう良いんじゃない?」

 文句を言いながらも光からショートパンツを受け取ると、博美はカーテンを閉めた。




「さあ二人とも、買うものは決まった?」

 試着室にやって来た明美が声を掛ける。

「はーい。 決まったよー」

「僕も決まったよ」

 光と博美がカーテンの中から返事をした。

「それじゃ、順番に見せてね」

 明美が光の声のしたカーテンを開ける。

「どう? お母さん」

 中で光がポーズを取る。

「うん。 良いじゃない! 活発なあなたに良く合ってるわ」

 光が選んだのは、まるでプリーツスカートに見えるボックスプリーツのキュロットパンツだった。確かにこれなら走り回ってもパンツが見える事は少ないだろう。

「さあて、博美は?」

 明美が隣のカーテンを開ける。

「あら、可愛いわねー よく似合ってるわ」

 博美の穿いているのは、光が褒めてくれた白いフレアースカートだった。

「うん、これ凄く履き心地が良いんだ。 着まわしもし易そうだし」

 明美が褒めてくれて、博美は嬉しくなった。

「それで、お母さんが選んだショートパンツは?」

 明美の目が鋭い。

「あれ、すごく短いんだよ。 太股が全部出ちゃうぐらい」

「あたりまえでしょ。 ショート・パンツなんだから」

「やだよ。 恥ずかしい」

「太股を出せるのは若いうちだけよ。 穿いて見せて頂戴」

 博美の答えも聞かず、明美はカーテンを閉めた。

「(もう… いっつも強引なんだから…)」

 カーテンが閉まり、個室と化した試着室で博美は「しぶしぶ」ショートパンツに履き替える。

「(こんな感じかな? これって股上も短いんだ… まるで夕べのビキニみたいじゃない?)」

 昨夜のビキニは小学生用だったため、割と大き目のパンツだったのだ。

「もういいわよね!」

 外から声が聞こえたと同時にカーテンが開けられる。

「おかあさん! またいきなり開けるー」

 外には何時かと同じように明美と光が立ってた。

「あなたが遅いの。 それにしても、よく似合ってるわ」

「おねえちゃん、凄い。 まるでモデルなみの脚だよ」

 以前と違い、いきなり見られても博美は焦りはしない。真っ直ぐな脚をやや交差させポーズを取る。

「これにヒールの有るサンダルを履いたら……」

「お母さん。 なんか変な事考えてない?」

 博美の言葉に剣呑な響きが混ざった。

「なんでもないわよ… (危ない危ない、近頃博美ったら感が良いのよねー)」

「ほんとかなー? まあいいや、着替えるから閉めて」

 ここで下手に追求すると危険な事は、博美は経験で十分知っている。

「ん? そのままで良いじゃない。 その美脚を見せつけながら歩きましょ」

 何処どこと無く明美の言葉には嫉妬が混ざっているようだ。

「あっ! ちょっと待って」

 何か思いついたのか、突然明美が走っていった。

「ふー… なんかさ、お母さんって、最近変じゃない?」

 ぱたぱた走っていく明美を見送って、博美は光に言う。

「仕方が無いよ。 お姉ちゃんがあんまり綺麗だから、お母さん綺麗に飾りたいのよ」

 光は諦め顔だ。




「さあ博美、これを穿いて」

 帰ってきた明美が持ってきたのはストッキングとヒールの有るサンダルだった。

「いいけど… なんで?」

 ストッキングを受け取りながら博美が尋ねる。

「あなた、テニスをするときスカートでしょ。 太ももに日焼け痕が付いてるのよ」

 テニスをするときに穿いているスカートよりショートパンツが短いせいで、日焼けした部分と焼けてない部分の境目が見えてしまっているのだ。

「だから、これで目立たなくするの」

「分かった」

 博美は頷くとカーテンを閉めた。




 バスセンターの2階は全体がファッションのフロアーになっていて、テナントが幾つも入っている。そしてバスセンターのビルの中で一番客が多い。その客の殆どが、フロアーのある一点を見つめていた。いわずと知れた博美である。

「次はどこに行くの?」

 ショートパンツから真っ直ぐな脚を出し、背筋を伸ばして歩きながら博美が明美に聞いた。ヒールの有るサンダルのお陰で長い脚が更に長く見え、ヒップも持ち上がり、より丸くなっている。

「ランジェリーショップ。 昨日計ったら、少し大きくなってたじゃない。 きちんと測ってもらいましょ」

 嬉しそうに明美が答える。

「やっぱり博美に視線が集まるわねー 気持ち良いわ」

「それを受ける僕の身にもなってよ。 なんだか慣れてきちゃったけど…」

 博美が肩をすくめる。

「それにブラ、違和感無いよ?」

「駄目よ。 ちゃんとしたのを付けてないと、形が悪くなるんだから」

 こういう知識は明美に敵わないと、諦めて付いていく博美だった。




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