表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空の妖精  作者: 道豚
79/190

見た? 見えた?

 長いこと休んでいたのに再開した途端沢山の方に読んで頂いたようです。

 ありがとうございます。

「それじゃ、僕は保健室に行ってから帰るから」

 図書館を出たところで博美が加藤に言って歩いていく。

「おお、それじゃ俺は先に帰るから」

 先月岡山で手術をした後、しばらく自宅療養したのち寮に戻ってから毎日保健室に行っているので、加藤も博美の行動に慣れたものだ。

「(しかし、毎日保健室でなにしてるんだろう。 術後の消毒ってそんなに掛かるものなのか?)」

 博美は加藤に詳しく話をしていなかった。




 敷地のほぼ中央に建っている図書館から北の端にある一般棟に博美は歩いていく。試験期間なので部活が行われていないため、遅い時間になると学生はほとんど歩いていない。やや寂しい道を五分ほど歩いて博美は保健室にたどり着いた。

「すみません、遅くなりました」

 保険医の田中にひとこと言って戸棚から防水シートを取り出すとベッドに広げ、さらにプラスチックケースを取り出し、スカートを脱いで博美はベッドに上がった。

「いいわよ、私はまだ居るから」

 田中が保健室のドアに鍵を掛け、ベッドの周りのカーテンを閉めた。博美は防水シートの上にお尻が乗るように寝ると、穿いていた生理用ショーツを脱ぐ。プラスチックケースからボトルと水受けを取り出し、脚を大きく広げて手術した部分を洗い、ガーゼで軽く水気を取り消毒薬を塗った。

「(これ痛いんだよなー)」

 ケースからガーゼに包んだ丸い棒のような器具を二本出すと、それに男性用避妊具を被せ潤滑ゼリーを塗る。そして小さいほうの器具を手術で開けた膣の入り口に押し込み始めた。

「いつつつつ…… くっ……」

 小さく呻きながら少しずつ入れる。

「ふうううう。 これぐらいでいいかな」

 半分程度入ったところで博美は入れるのを止めた。この器具「ダイレーター」は手術で開けた部分が閉じないように拡張する物だ。性転換して女性器を作った場合、深さが浅くならないようにしっかり奥まで入れる必要があるが、博美の場合、膣は元からあったので、入り口さえ閉じなければいい。よって半分も入れば十分だ。

「今日は何故遅かったの?」

 カーテンの向こう側から田中の声がする。

「もうすぐテストだから加藤君と図書館で勉強してました」

「あら、いいわねー 彼氏と勉強デート?」

「べ・別にデートって訳じゃ…… 僕は外国語が弱いから」

 動いたりしなければ特に痛みが酷くなる訳ではないので、博美は割と普通の調子で話をする。

「へー 博美ちゃんって文系じゃなくて理系なのね。 見た目とは違うわね」

「そうですね、専門科目のほうがいいですね」

 実際、博美は設計や製図などは男子顔負けの評価を提出物で貰っている。

「でも実習は力が無くって今一ですけど」

 博美は今日の実習での顛末を思い出していた。




 十分ほどして一旦器具を抜くと、博美はもう少し太い器具を同じように差し込んだ。

「痛いでしょ、大変ね」

 カーテン越しに博美の呻き声を聞いて田中が心配してる。

「は・は・はいっ・つ・つ・つ…… ほ・細い方はなんとか慣れマシたけど…… ふと・太いほ・方は…… まだ……」

 あまりの痛さに息が上がって博美の返事が切れ切れになった。

「ごめん、ごめん。 話をするのも大変よね」

 その様子に田中はカーテンの側から離れ、机の所まで戻り椅子に座る。博美は涙の滲んだ目で天井を眺めながら、

「(男の人って、どれ位の大きさなんだろ? ダイレーターと比べて大きいのかなー だとしたらとても僕には無理だよな。 赤ちゃん生めないかも…… ってなんでそんなこと考えてるの!)」

 何か怪しいことを考えていた。




 太い器具を入れて20分、博美はそれを抜いてボトルの水で股間に付いたゼリーを洗い流し、ガーゼで水気を拭く。生理ショーツにパットを取り付け穿くとベッドから降りた。

「終わったの?」

 田中が聞いてくる。

「はい、終わりました」

 使った道具や器具を持ってカーテンを開けながら博美が答えた。

「今日は遅くなったから手伝うわ」

 田中がベッドに敷いてある防水シートを畳むと戸棚に仕舞う。

「ありがとうございます」

 博美は汚れた器具を洗い、ボトルに水を入れるとプラスチックケースに仕舞った。

「さあ、終わったなら帰りましょうか」

 田中がバッグを持ってドアを開ける。博美もカバンを持つと田中に続いて保健室を出た。

「もう暗いわね。 危ないから寮まで乗っていきなさい」

 ドアに鍵を掛けながら田中が言う。

「いいんですか?」

「いいわよ。 歩くと15分は掛かるけど車ならすぐよ」

 二人は並んで駐車場に歩いていった。




 寮まで田中の車で送ってもらった博美は、部屋に帰らず制服のまま食堂に行った。流石にこの時間になると食事をしている学生は少なく、手近なテーブルに夕食のトレーを置くと、博美はカバンからドーナツ形のクッションを取り出し椅子に座った。

「あれー 秋本さん、随分遅い夕食だね」

 不意に声を掛けられ博美が顔を上げると篠宮が立っている。

「篠宮さん。 如何したんですか? たしか自宅通学でしたよね」

 飛行場で会ったときにそんな話をしていたのを博美は覚えていた。

「いやー テストが近いからね、寮に住んでいる友人と勉強をしようと思ってね」

「食堂で勉強するんですか?」

「ああ、そうだよ。 と言っても此処の二階にある談話室だけどね」

「そんな所が在るんですか? そこなら女子も居られるのかな?」

 もしかして加藤と一緒に勉強出来るかも、と思った博美だったが、

「残念ながら、女子は居られないんだよ」

 篠宮の言葉は希望を打ち砕いてくれた。




「ただいまー」

 部屋に戻り、多分永山が居るだろうと博美はドアを開ける。

「おかえりー 遅かったねー 晩御飯食べた?」

 何時ものベッドの上でなく机の前に永山は居た。

「うん、今食べてきた。 ねえ、お風呂行った?」

 制服を脱ぎながら博美が尋ねる。

「ううん、まだ」

 永山は椅子を回して博美のほうを見た。

「じゃあー 一緒に行こ」

 脱いだ制服をハンガーに掛けながら博美が言う。

「いいよ。 じゃ、私も用意するね」

 永山は立ち上がると箪笥の前に行き、中から換えの下着とタオルを取り出した。博美も箪笥から部屋着と下着、タオルを取り出し部屋着を着た。




 脱衣所で二人並んで部屋着を脱ぐ。

「博美ちゃん、少し大きくなった?」

 博美がブラを外したところを永山が見ている。

「うーん…… 少し大きくなったかな? パットが無くてもカップが余らないから…… でもこのブラAカップだよ。 大きいほうじゃないよね」

 博美が乳房を持ち上げるようにしている。

「博美ちゃんのイメージってボーイッシュだから、そのくらいでいいんじゃない?」

「やだよ。 永山さんぐらい欲しい」

 ブラを外した永山を見ながら博美が言った。

「大きくたって、そんなにいい物じゃないわよ。 でも博美ちゃんも段々慣れてきたわよね。 寮に入ったばかりのころは恥ずかしがって隠してばかりだったのに。 近頃じゃ平気でさらけ出してるね」

「うん、以前は全然胸が無くて恥ずかしかったんだ」

 本当はあそこが違っているのを知られないように隠していたのだが、ただ股間だけ隠すのは不自然なので、胸も隠していたのだ。




「秋本さん、来てたんだー!」

 二人が並んで体を洗っていると、脱衣所からの引き戸が開いたとたん樫内の声が飛び込んでくる。

「よかったー 近頃ヒロミンが不足気味なのー」

 言うが早いか、樫内が博美に抱きついてきた。

「ちょ、ちょっとー 胸、胸が当たってるから。 放して!」

「嫌よー 秋本さんってすべすべー」

「それは石鹸だから…… やだっ、変なとこ触らないで!」

「うーーん、胸大きくなった? ひょっとして私より大きくない?」

「少しは大きくなったけど、樫内さんと同じだから。 あーー もう…… 嫌だってば!」

 博美は樫内の顔をめがけてシャワーを掛けた。横から永山も加勢をする。

「ぶ・ぶぶ…… や、やめて。 い、息が出来ない」

 二人掛の攻撃にやっと樫内が博美から離れた。

「ひどいわ二人とも。 ほんのちょっとヒロミンを摂取したかっただけなのに」

 ずぶ濡れになった樫内がしょんぼりとしている。

「だからー ヒロミンって何? ぼ、私からそんな物は出てないから」

 仁王立ちした博美が「びしっ」と指を刺す。

「ひ、博美ちゃん。 丸見えだから……」

 横から永山が小さな声で教えた。

「あっ!」

 自分の格好に気が付いた博美は真っ赤になってそこに座り込んだ。

「見た? 見えた?」

「見えたわー うれしい! ヒロミンがいっぱい」

 樫内が「にこにこ」としている。

「秋本さんのあそこって…… かわいー! あんまり生えてないのね」

「わーーん。 もうお嫁にいけない……」

 博美は顔を隠して床につっぷしてしまった。



 あそこの毛が少ないのは手術の為に処理したせいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ