表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空の妖精  作者: 道豚
6/190

出血

そろそろ話が動きます。


「なんかお腹が痛い……」

 私立高校の受験も終わり、なんとなくクラスが落ち着いてきた2月10日、博美は朝から続く不快な腹痛と戦っていた。

「なあ、大丈夫か。保健室で休んだ方が良いんじゃないか」

「そうよ、もう大した授業も無いんだから、さっさと休んだ方が良いわよ」

 青い顔の博美を見てクラスメートが声を掛ける。

「いやだ、もう少しで皆勤なんだ。明日は土曜日なんだから、ここで休んでたまるもんか」

 結局博美は昼休憩まで教室から出なかった。



「トイレに行ってくる」

 昼食後、博美は誰に言うとは無しに言ってトイレに向かった。痛む腹を押えて個室に入りほっとしていきむ。すると固体でなく液体が出た感覚が……

「え、なんだ……」

 驚いて覗き込むと、便器の中が真っ赤に染まっていた。

「……血……なんで血が…………」

 とたんに目の前が真っ暗になって倒れそうになる。

「(……トイレなんかで倒れるもんか……)」

 トイレで倒れて運ばれる恥ずかしさを考え、必死で我慢をしていると、少しずつ目が見えるようになってきた。ホッとしたが腹痛はまだ続いている。

「何なんだろう。悪い病気かも……癌だったりして……」

「(……いやだ、僕はまだお父さんに負けないエンジニアになっていない……)」

「死にたくない…………」




 なんとかお尻を拭いて、博美は保健室に行った。

「あら、珍しいわね。 どうしたの秋本君」

 胸の名札を読んで、保険医の田中洋子たなか ようこが陽気に迎えた。

「お腹が痛いんです……それに……」

「それに何?」

「……トイレに行ったら、血が……」

「血が出たの?」

「はい、まるで血の海みたいに……」

「あのね、女の子は生理が来るのは当たり前よ。 用意をしておかなきゃ」

「へ…………」

「それとも予定より早かったの?」

「先生、僕は男ですよ!」

「え…………嘘でしょ。 秋本君はどう見ても女の子に見えるわよ」

「なに言ってるんですか。男子の制服を着てるのに」

 博美はポケットから生徒手帳を出して田中に見せた。

「あらホント。 ごめんなさい、秋本君があんまり可愛いから」

 田中の言葉に呆れて体の力が抜けた博美は、そのまま目の前が真っ暗になって行くのを感じた。

「ちょっと! 秋本君、しっかりして……」

 座った椅子から横に倒れていく博美を支えて、田中が呼びかける。

「(なんだろう? 目が見えないや。 先生は何を言ってるの…… ・  ・   ・)」

 博美が小柄だとは言え、女性の力では気を失った人間を支える事は出来ない。仕方なく博美を床に寝かせ、田中はドアを開けて廊下に向かって叫んだ。

「誰か! 男の先生を呼んできて!」




 生徒の呼んできた体育教師の手を借りて、博美をベッドに寝かせた田中が血圧を測っている。

「85の40? 低すぎるわ…… そう言えば、出血したって言ってたわね」

「(腸からの出血? 何か危険な病気? もし出血が止まらなければ……)」

 田中は電話を外線に繋ぎ、119を押す。

『はい! 消防です。 火事ですか? 救急ですか?』

「救急車をお願いします」

『どうされました?』

「腸からの出血で、生徒が気を失っています」

『何処ですか?』

「美郷中学校の保健室です」

『はい、直ぐ出ます!』




 20分後、救急車が中学校の昇降口前にやって来た。救急隊員が保健室に駆け込んでいく。

「患者は何処ですか?」

 部屋に入るなり、中に居た田中に聞いた。

「此処です!」

 ベッドの上で身動きしない博美を指して田中が答えた。

「出血したと言って此処に来たんですが、そのまま気を失ったんです。 血圧が危険なレベルまで下がっていて……」

 それを聞いて、隊員も血圧を測る。

「80の50…… 低いな…… 私たちでは治療出来ません。 ドクターヘリを呼びます」

「はい、お願いします」

 隊員は救急車に戻って、基地に無線を入れた。

「みなみ基地。 こちらみなみ6。 ドクヘリを要請します」

『みなみ6。 了解。 ただ風が強いので、飛ぶかどうか分からない。 連絡を待て』

「了解」

 隊員は「ふっ」と息を吐くと、もしヘリが飛べなかった場合の次善の行動計画を考え始めた。

「(今日は、あのパイロットの飛ぶ日だ。 おそらく飛んでくるだろうな……)」

 もっとも、飛んでくることにあまり心配はしていなかったのだが……



救急車のやり取り等、想像で書いています。すみません……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ