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空の妖精  作者: 道豚
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マッサージ

お風呂は危険?


 部活が終わり、博美は樫内と並んで寮に帰っていた。すぐ後ろには加藤が居る。博美が部室から出たときの騒ぎは、見物人の所属する部活の部長や先輩たちが彼らをフェンスから剥がして引きずっていったので、結果的にはすぐに収まり練習は問題なく出来たのだった。先週は生理で練習しなかった博美は、初めてまともにテニス部の練習に参加したので、中学校では運動部でなかった事もあり、足取りが重くなるのも仕方が無いことだ。

「えーーん。 足が重いよー 寮が遠いよー」

 つい、泣き言を漏らしてしまう。

「帰ったらマッサージしてあげるわ。 こう見えても得意なのよ」

 樫内は平気な顔をして歩いている。

「秋本さんの綺麗な足なら、何時間でもしてあげるわよ」

「その言い方、なんかいやらしいんだけど」

「大丈夫、下心は在るから」

「あるの! そこは「ない」って言って」

 加藤はそれを聞いて「(平常心・平常心……)」と心の中で唱えていた。

「まあ、それは置いといて」

「置いとかないで」

「秋本さん、意外と運動神経良いのね」

 そうなのだ、初めてテニスラケットを握ったというのに、フォアハンドのフォームは樫内が惚れ惚れするように、綺麗で滑らかだった。バックハンドはそれ程ではないが、初心者には見えない。

「あれ、不思議だよね。 ちょうどグライダーを投げるのと同じように振ってるんだけど」

「グライダー?」

「うん、ラジコングライダー。 加藤君もやってるよ」

「それであんた馴れ馴れしいのね」

 樫内は突然後ろを向いた。

「ようやく分かった。 秋本さんみたいな美人に、何処でも居るようなあんたが、なんで普通に話が出来るか不思議だったのよ」

「(加藤君、カッコいいよね?)」

 博美が思っていると

「別にいいじゃないか。 俺はお前より先に知り合ったんだぜ。 趣味も一緒だから話が合うしな」

 加藤から反撃が飛んできた。

「ふふ。 これまではそうだったかも知れないけど、これからはテニスという共通の話題が私にも出来るのよ。 スキンシップも出来るし、私の勝ちね」

「何の勝ち負けよ! スキンシップ反対」

 樫内の暴走には、ホトホト手を焼く博美だった。




「あー 疲れた」

 博美は疲れた足を引きずって、お風呂にやって来た。とりあえず、今日着たテニスウェアーや制服のブラウスなどを何台か並んでいる洗濯機に入れ、洗濯している間に入るつもりだ。

「汗びっしょり。 うわー 気持ち悪い」

 博美は手早く脱ぐと、お風呂に飛び込んで、さっそく洗い場で体を洗い始める。

「丁度いいわ」

 声がしたので見ると、樫内が入ってきた所だった。

「さっき言ったように、マッサージしてあげる」

「ここで?」

「そう、ここで♪」

「ここは狭いから、部屋がいいなー なんて……」

「これぐらいなら大丈夫よ」

「いや、だれか入ってきたら邪魔だから」

 博美としては、あそこを見られると困るので、なんとしても裸ではマッサージを受けたくない。

「直ぐ済むから(ここならお尻や胸を直接触ったりできるかも♪)」

 樫内としては、こんなチャンスを逃すわけにはいかない。

「なにー 何騒いでるのー」

 ちょうどその時、高木が入ってきた。

「あら、秋本さん。 お風呂で会うの初めてじゃない?」

「高木さん。 どうぞ、ここ空いてるよ」

 博美が「やれ助かった」と隣の洗い場を指差した。

「ありがとう」

 高木がさり気なく隣に座る。しかたなく樫内はその隣に座った。

「ありがとう、高木さん」

 博美が高木に囁いた。




「いててて。 樫内さん痛いよ」

 博美がお風呂から上がって部屋に戻ると、樫内がさっそくやって来て、足のマッサージを始めた。

「少しは痛いわよ、我慢して。 でもほんと綺麗ねー 肌理きめも細かくて真っ白」

 意外と樫内は真面目にマッサージをしている。時々は目線が別の場所を探るようだが。

「お尻も大きすぎず、貧相でもなく……」

「ちょっとー お尻を撫でないで」

「あら、お尻もマッサージしないと、明日は筋肉痛よ」

 一頻りセクハラをして、樫内は自室に帰っていった。




 夜も更けたころ、博美は今日の復習をしている。授業は段々難しくなってきて、疲れていてもサボるわけにはいかないのだ。

「あーー 疲れたなー」

 ようやく復習が終わり背伸びをしたとき、博美の携帯がメールの着信を知らせた。

「(井上さんだ)」

 今度の練習の事だろうと、博美はメールを開く。

{土曜日に、予選の開かれる飛行場に行こう。何時もより早め、8時30分に迎えに行く。博美ちゃんも飛行機を持っておいで}

「(やっぱり、勝手に予定を決めた)」

 何時ものことなので、博美は文句は無い。

「(加藤君は如何するんだろう)」

{加藤君は一緒に行くんですか?}

 メールを返信した。少しの間があって、メールが来た。

{俺の車には二人しか乗れない。あいつは自分でなんとかするさ}

「(加藤君かわいそう)」

 後で慰めておこうと思う博美だった。



グライダーのSALサイド・アーム・ランチ投げはテニスのフォアハンドに通じると思います。

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