勘違いの恋敵!
皆がいい人とは限らないですね。
「ピピッ・ピピッ・ピピッ・ピピピピ カチャ」
「うーーーーーん」
目覚ましの音で博美が目を覚ました。背伸びをしながら横を見ると、裕子はぐっすり眠っている。まだ六時なので、彼女はあと30分は起きないだろう。博美は枕もとに置いてある携帯電話を開いてメールのチェックをした。
「(井上さんから返信がきてるー)」
さっそく開いてみる。
{助手をしてくれるそうで、ありがとう。 今度の非番の日は来週の日曜日だから練習しよう}
「(ほんっと、勝手に予定を決めるんだよなー)」
相変わらずの井上のメールに「やれやれ」と思いながら、博美はタオルを持って洗面に出て行った。
博美は顔を洗ってくると、授業の予習を始めた。しばらくしてふと時間を見ると、もう6時40分だ。裕子はまだ寝ている。
「やれやれ、どうせ遅くまでコミック読んでたんだろうね」
小さく独り言を呟くと、
「ほら、裕子ちゃん。 朝だよ!」
声を掛けながら、肩を揺する。
「ふぁ~~~~あ。 おはよ~~~お」
しばらく揺すっていると、やっと裕子が起動した。
「おはよう。 もう45分だよ。 起きて顔を洗ってきたら?」
寝ぼけ顔のまま、タオルを掴んで裕子が部屋を出て行った。
裕子が帰ってくるとお互いに寝癖を取り合い、顔に軽くクリーム等を塗って制服に着替える。二人は渡り廊下を通って、食堂に向かった。相変わらず食堂には行列が出来ている。
「何時までたってもこの行列には慣れないわー」
裕子がうんざりした様に言う。
「そうねー いっその事、うんと遅く来てみる?」
「でも、もしそれでもこんなんだったら遅刻よ!」
「そうか、いい方法は無いのかなー」
二人が話していると
「秋本さん、おはよう」
吉岡が列に並ぶために通りがかり、挨拶をしていった。
「おはよう、吉岡君。 これから並ぶの?」
「そうだよー ちょっと遅いと大分後ろになるね」
吉岡は博美たちから随分と後ろになったようだ。
「席が開いてないんだ。 ここ大丈夫かな?」
博美と裕子が朝食を食べていると、吉岡がやって来た。席が全て埋まっていて、唯一博美たちのテーブルだけが空いている状態だった。
「うん、僕は良いけど」
博美がそう答えた瞬間、吉岡の両側に男が現れ肩を掴んで連れ去ろうとした。
「まって!」
慌てて博美が声を掛ける。
「中学校の時からの友達だから。 それに席が空いてないじゃないの、仕方が無いよ」
博美の言葉に男たちが頷き会うと、吉岡の肩から手を放して消えた。
「吉岡君、大丈夫?」
「大丈夫だ。 ありがとう、危うく消されるところだった」
吉岡が「ほっ」としたように肩で息をした。
「此処空いてる?」
吉岡の隣に博美の知らない女の子が来た。なんとなく博美を睨んでいる。
「ああ」
吉岡が面倒くさそうに答える。
「そう、良かった」
女の子はお盆を置くと、吉岡の隣にくっつくようにして座った。吉岡は迷惑そうだ。
「おはよう、秋本さん。 私は樫内直海、電気工学科1年よ」
女の子は博美のことを知っているようだ。
「はじめまして、樫内さん。 秋本博美です。 僕のこと知ってるんですね」
「あたりまえよ。 あなた高専中で有名じゃない」
「はあ、そうなんですか」
「さっきも言ったように、私は電気科1年。 吉岡君と同じよ。 いつも一緒に授業受けてるの」
言いながら、樫内は吉岡の方に体を寄せていく。逃げる吉岡は椅子から落ちそうだ。
「あなた、機械科の加藤っていうのと付き合ってるんでしょ。 吉岡君に馴れ馴れしいんじゃない? 二股掛けてんじゃ無いでしょうね」
「…………」
いきなりの事に博美はなんと言って良いのか分からない。
「博美ちゃん、行こ!」
裕子が博美の手を引っ張った。
「うん……」
博美も席を立つ。
「秋本さん、私もテニス部に入ったから。 よろしくね」
食堂を出て行く博美に樫内が声をかけた。
「なにあの女! べたべたして。 吉岡君、迷惑そうだったじゃない!」
部屋に戻りながら裕子が吠えている。
「そうね……」
博美はショックから立ち直っていなかった。
「博美ちゃん、気にしちゃ駄目よ。 あんな女、ぜったい振られるから」
部屋に戻っても、裕子は止まらない。
「うん……」
「ちょっと、博美ちゃん。 しっかりしなさいよ。 どうしちゃったの?」
「……僕って、あんな風に見られてるのかな?……」
「何言ってんの。 あんなの、バカ女の勝手な見方よ。 みんな博美ちゃんのこと変に思ったりしてないから。 気にしちゃ駄目」
「うん……」
朝から元気の無い博美に、加藤やクラスメートたちが心配していろいろ話しかけてきたが、博美は気の無い返事を返すだけだった。
「おい、加藤。 秋本さん、どうしちゃったんだ?」
「分からん。 昨日までは普通だったんだが」
「夕食時、何か口論してたんだろ。 三角関係っぽかったって聞いたぜ」
「はあ! そんなのは恋人がするもんだ。 俺と秋本はそんな関係じゃないぜ」
「ほんとか? なにか知らない名前が出てきたらしいが」
「それは、ラジコンの関係者だ。 おじさんだぜ、関係ないね」
「それじゃ、何なんだろうな?」
「分からん……」
「始まっちゃった……」
3時限と4時限の間にトイレに行った博美は、便器の中を覗いてため息を付いた。一応、何時も用意をしているナプキンを付けて、トイレを出る。
「あら、秋本さん。 生理?」
出たところに樫内が居た。
「…………」
何も言いたくなくて、頷いただけで博美は出て行く。
「なに、あの態度。 お高く止まって!」
教室に戻る博美の後ろから樫内の声が聞こえてきた。
「うう……」
教室に戻り、机に突っ伏して、博美は泣き出してしまった……
食堂で博美の席が開いていたのは皆が怖がっているためです。
生理前でちょっと気弱になっています。




