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空の妖精  作者: 道豚
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博美の初飛行

初飛行って緊張するものです。

「さあ、博美ちゃんの飛行機の準備をしようぜ」

 井上が整備スタンドの幅を「アラジン」用に調整しながら言った。

「はーい、だしてきまーす」

 博美がレガシィのリアゲートを開け、邪魔にならないように一旦仕舞ってあった「アラジン」を出してきた。それを整備スタンドに乗せ、井上と二人で組み立てる。別に博美が一人で組み立てられない訳ではないが、井上は組み立てながら不具合が無いか確かめたかったのだ。

「うん、きちんと出来てるな。 さすが秋本さんだ!」

 そこには白地にピンクと青色でアクセントの付いた可愛い飛行機が組み立てられていた。光輝のカラーリングでは余りにピンクの面積が大きかったので、博美が自分で青のフィルムを貼ってアクセントを付けたのだ。

「うわー、 かわいいねー」

 何時の間にか小松が来ていて、持ち上げたり裏返したりしている。

「あのー…… 小松さん…… あんまり触らないで…… (気持ち悪い)」

「かってに弄るな!」

「いてっつ」

 井上が小松の頭を小突いた。

「…… ひどいなー」

 小松はとぼとぼ自分の飛行機のもとに帰っていった。




 プロポの確認をし、顔を上げて滑走路の様子を見ると、井上が言った。

「さあ、飛ばしてみようぜ」

 博美が燃料をハンドポンプで入れ、満タンになったところで機体をエンジン始動時のホルダーに乗せた。「アラジン」の前にしゃがみ、井上がプロペラ握ってゆっくりと回すと、少しずつ燃料がキャブレーターまで流れてくる。プラグに通電して、スターターを回した。

「ブブブブ……」

 エンジンは始動するが、随分不調のようだ。

「ふむ、濃いか」

 井上は呟くとドライバーを使って混合気の調整に掛かった。

「ぽろぽろぽろ……」

 キャブレターの横のネジを少し回すと乾いた音を立ててアイドリングをする。

「こんなもんだろ」

 流石はベテランだ。簡単に調整をしてしまった。

「全開にするよ。 抑えてて!」

 井上がスティックを一番上までゆっくり上げる。そしてその状態で再び混合気の調整をした。

「ビーーーーー」

 2サイクルエンジンなので、甲高い音がする。

「ぽろぽろぽろぽろ……」

「よし、良い調子だ」

 スティックを下げて、アイドリングを確かめると井上が言った。

「さあ、飛ばそうぜ。 滑走路まで運んでくれるかい?」

 博美はそおっと「アラジン」を持つと滑走路に運んでいった。




 滑走路の中央に「アラジン」を置いて、博美が井上の隣に戻ってきた。

「行くぜ!」

 井上がスロットルのスティックを上げると「アラジン」は走り出す。数十メートル滑走したところで、井上がエレベーターを引く(昇降舵を上げ舵にする)と「アラジン」は滑らかに地面を離れ、空中に浮かんだ。

「やったー♪ 飛んだ~」

 博美は大喜び。井上の横で飛び跳ねた。

「おいおい、大げさだぜ」

 井上は落ち着いたものだ。高度をとると舵の中立を合わせ、手を離しても水平直線飛行をするように調整した。もちろん初心者の博美のためだ。

「癖の無い良い飛行機だぜ。流石は秋本さんだ。作る腕も一流だな」

 初心者がキットから作ると主翼や尾翼が捩れていたりして、真っ直ぐ飛ぶように調整するのも難しかったりする。

「ほら、スティックから手を離すよ」

 井上が送信機のスティックから手を離してみせる、それでも飛行機は真っ直ぐに飛んでいく。

「ほんとだ! 真っ直ぐ飛ぶ」

「さあ、一旦下ろすぞ」

「えー、 ちょっとは僕にも操縦させて」

「うーん…… まあいいか」

 井上が博美に送信機を渡す。

「とりあえず基本だ。 滑走路に平行に往復させてみな」

「は~い♪」

 博美が操縦をはじめた。 が、なんだか安定しない。

「変だなー、 操縦しにくいかい?」

「ええ、ネックストラップが無いと送信機が安定しないんです」

「おお、そうか。 付けてやろう」

 井上は博美が胸の所に下げてあるストラップを送信機に付けてあげた。

「井上さん、胸に触ったー、セクハラー」

 いつの間にか小松が横に来ていた。

「イタタタ……」

 井上が小松のほっぺたをつねった。

「おまえなー…… いい加減にしないと、スタント教えてやらんぞ!」

「そんなー、今年はエキスパートを狙ってるんですから……」

「しらん!」

 小松はしぶしぶ帰っていき、操縦に一生懸命の博美は、横で行われていた漫才に気が付いていなかった。




「井上さん、そろそろ燃料が切れそうなんですけど」

 エンジンが息をつく様になったのに博美が気がついた。

「OK。 交代しよう」

 井上が送信機から博美のネックストラップを外すと、自分の手に送信機を持った。「アラジン」は井上の操縦で滑走路の中央に綺麗に着陸すると、地上滑走して近くまで帰ってくる。博美は機体を持ち上げると、整備スタンドまで持って行き、排気ガスで汚れた胴体を洗剤で綺麗に拭きはじめた。

「うふふ…… 可愛いな♪」

 余程「アラジン」が気に入ったようで、博美は上機嫌だ。

「博美ちゃ~ん、「エルフ」が焼き餅焼くよ」

 クラブ員からヤジが飛んできた。

「「エルフ」はいい子だから、そんなこと無いですよー」

 今日の博美は強敵だ、クラブ員の野次攻撃にビクともしない。




 博美は綺麗になった「アラジン」を「ビーナス」の隣に並べた。

「ビーナス小母さん、アラジンを宜しくね」

 並んだ二つの飛行機は、親子のように大きさが違っていた。



小排気量エンジンの調整は難しいです。

私も何度か初心者の飛行機を初飛行させましたが、どうしても調整の出来ない飛行機がありましたね。そういうのでは練習になりませんから、持って帰って大修理が必要です。

初飛行でいきなり操縦してしまう博美の度胸はたいした物です。

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