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空の妖精  作者: 道豚
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意外と悪女


 開かれたドアの外に麻紀が立っていて、麻由美が後ろから覗いていた。

「わーー! お、お袋、ちょっと待ってくれー」

 加藤が慌ててベッドから飛び降りてパンツを履き、

「(……わわわ……)」

 博美は急いで毛布にくるまった。麻紀がゆっくりと部屋に入ってくる。

「……ふう……これはまた派手にやったわね……」

 部屋を見渡し、床に散らかった服や下着を見て麻紀は呆れたように言った。

「……え、えーと」

「あんたはシャワーでもかかってきなさい。 ついでにお風呂を入れて」

 加藤に言い訳のチャンスを与えず、明美が言う。

「……あ、ああ……」

 困ったように博美を見て、加藤は部屋を出て行った。それに小さく手を振る博美に麻紀が近づく。

「正直に言ってね博美ちゃん。 康煕が無理やりしたんじゃないわね?」

 目線を合わせるために、麻紀は膝をついた。

「ううん。 どちらかと言うと僕が誘った様なものです。 ごめんなさい……」

 博美がかぶりを振る。

「だから康煕君を叱らないで……」

「そうねー ……博美ちゃんは初めてだったの?」

 麻紀は優しく微笑んでいる。

「は、はい……」

「体は大丈夫? 出血は?」

 麻紀がベッドに腰掛けた。

「……えっと……出ませんでした……で、でも本当に初めてだったんです」

 手術後、ダイレーターを使っていたお陰で、博美のあそこは加藤の物を受け入れるのに十分な柔軟性を持っていた。

「疑ったりはしないわよ。 痛くなかった?」

「……痛かったです……まだ少し……」

 しかし、加藤の物はダイレーターより大きかった。これまで経験した以上に広げられたあそこは出血こそしなかったが、痛みを訴えていたのだ。

「……そう……」

「で、でも……康煕君は優しくしてくれて……その……」

「ありがとう。 康煕をかばってくれるのね。 あの子も博美ちゃんに会えて幸せ者ね」

 麻紀が毛布の上から博美の肩を抱いた。

「ぼ、僕の方こそ……康煕君が僕を好きになってくれて、嬉しい」

 いきなり抱かれて博美の頬が染まる。

「うふふ……二人が愛し合うのに邪魔なんかしないわ。 ねえ、ゴムは使ったわね?」

 麻紀は博美の肩から腕を外し、顔を覗き込んだ。

「はい。 使いました」

 慌てていて、付けるのに失敗した加藤に代わって、博美が付けてあげたのだ。ダイレーターを使うたびにそれに被せるのだから、使った経験は並みの高校1年生より多いだろう。

「ん! よろしい。 もう私は何も言わないわ。 これからも節度を持って付き合っていってね」

「はい。 わかりました」

麻紀は立ち上がり、散らかった服を集め始めた。

「康煕に着替えを持っていくわね」

 加藤の服や下着を抱えて麻紀は出て行った。




 麻紀と入れ替わりに麻由美が入ってきた。手には畳まれた服を持っている。

「秋本さん。 はい、着替えを持って来たわ。 それとバスタオルも」

 差し出されたのは有名ブランドのジャージだった。

「新品のショーツもあるけど……」

「あ、ありがと。 ショーツの替えは持ってるの」

 博美はバスタオルを受け取ると毛布から抜け出した。

「……綺麗……ウエストからヒップのラインが絶妙なんだ」

 麻由美はベッドの上で膝立ちになってバスタオルを体に巻く博美を見ている。

「麻由美ちゃん、あんまり見られると恥ずかしいから……」

 巻き付け終わり、博美はベッドにペタンと座った。

「ねえ、お兄ちゃんってどうだった? お兄ちゃんも初めてだったんだよね」

 麻由美が「ずいっ!」っと顔を寄せてくる。

「……どうって言っても……僕は初めてだから比較できない……康煕君も初めてだったのかな?……」

「おい、何を恥ずかしい事言ってるんだ」

 ドアの外で加藤の声がした。シャワーから上がった様で、上下ジャージを着て、頭をタオルで拭いている。

「そうだよね。 お兄ちゃん、初めてだったよね」

 麻由美が振り返る。

「お、おまえなー なんでそんなこと知ってるんだ?」

「んー 女の勘? って言うのは冗談でー お兄ちゃんって中学校の時、硬派で通ってたでしょ。 女なんか要らない! なんてね。 実際、周りに女の影は無かったもんね。 みんな怖がってたんだよ」

 大いに焦る加藤に向かい、麻由美が事もなく告げる。

「康煕君も僕と一緒で初めてだったんだ。 うふふふ……康煕君の初めてを貰っちゃった」

 博美が「にたり」と黒い笑みで加藤を見た。

「お、おまえなー それは男が言うセリフだろうが……」

「博美ちゃーん。 お風呂に入りなさい」

 麻紀の声が階下から聴こえてくる。

「はーい。 今行きます」

 加藤の反論など無視し、博美は返事をして部屋を出て行く。

「……あいつは意外と悪女なんか?……」

「まっ、頑張れ」

 項垂れる加藤の肩を麻由美が「ポン」と叩いた。




「メリークリスマス」

「ぽーーん」

「わきゃっ!」

 四人の囲むテーブルの真ん中に置いてあるケーキとオードブルに目が釘付けだった博美が、突然耳の横で聞こえた音に悲鳴を上げた。慌てて博美は口を押さえる。

「さあ、博美。 グラスを出して」

 そんな博美の差し出したグラスに加藤がスパークリングワインを注いだ。

「ちょ、ちょっとー 僕、お酒飲めない。 帰らなきゃいけないし」

「あら、いいじゃないちょっとぐらい。 それに泊まってもいいのよ?」

 注がれた液体の正体に気が付き慌てる博美を麻紀が「にこにこ」見ている。

「わーー HIROMIが泊まったって聞くと、みんな羨ましがるよー」

「そ、そ、そんな……迷惑でしょ」

 麻紀の言葉に乗ってくる麻由美に博美は首を振った。

「全然大丈夫よー 我が家だと思ってもらえばいいから。 ってもう家族みたいなものじゃない」

「そうよー お兄ちゃんと関係を持ったんだもんねー もう婚約したら?」

 麻紀と麻由美は加藤と博美を交互に見た。

「な、何てこと言い出すんだ! 婚約だなんて」

 加藤が麻由美に言い返す。

「……ん? 康煕君は嫌なの? 僕のことは遊びなの?」

 博美が横に座っている加藤の顔を覗き込んだ。

「ち、違う。 遊びなんかじゃない……」

「……なーんちゃってー 冗談だよ。 康煕君はそんなことする人じゃないもんねー」

 焦る加藤に博美は笑顔を見せた。

「博美ちゃんって康煕のことをそんなに信用してるのね。 親として嬉しいわ」

 二人のやりとりに麻紀が満足げに頷き、

「……なんか、悔しい。 お兄ちゃんが何処かに行っちゃう」

 麻由美はどこか寂しそうに呟いた。

「あんたもいい人を見つけることね」

 そんな麻由美を軽くあしらい、

「さあ、ワインもみんなに回ったことだし、乾杯しましょ」

 麻紀はグラスを掲げた。

「かんぱーい」

「あれっ? お酒じゃない」

 恐る恐るグラスに口をつけた博美が「ほっ」として零した。

「未成年に飲ませるわけ無いじゃない。 これはノンアルコールよ」

 引っかかった、と麻紀がニコニコしながら「どうぞ」と博美にオードブルを進める。

「よかったー はい、頂きます」

 博美の手がオードブルに伸びた。




「なんか済みません。 送ってもらって」

「いいのよ。 スクーターは寒いものね」

 後部座席の博美の言葉に、運転しながら麻紀が答える。みんなでケーキまで食べたあと、麻紀が車で送ってくれる事になったのだ。

「それに女の子が一人で夜に走るのは危ないから」

「お兄ちゃんが免許取ってて良かったねー」

 助手席には麻由美が座っている。

「康煕君が免許取ってたって知りませんでした」

 博美の前では加藤は免許の事を一度も言った事が無い。

「あの子ったら、誕生日が来たら取るんだって6月ぐらいから言ってたのよ。 博美ちゃんが先に取ったのが悔しかったみたいよ」

 こんなところでも負けず嫌いが発動していたようだ。

「へーーーーくしょ! くそー 流石に寒いぜ」

 加藤は博美のスクーターで後ろを走っていた。




「ただいまー 康煕君とお母さんと麻由美ちゃんも来たよー」

 博美がドアを開けて明美を呼ぶ。

「おかえりー」

 すぐに明美が玄関に来た。

「済みませんでした、夕飯をご馳走になったようで……少し上がっていきませんか?」

 博美の横にいる麻紀に明美がお辞儀をする。

「そんなー ご迷惑じゃないですか?」

 麻紀は胸の前で手を振った。

「とんでもない。 どうぞどうぞ。 なんか康煕君が凍えてるようですし」

 ドアの外で加藤が震えている。

「いいですかー それじゃ、少しお邪魔しますね」

 玄関のやり取りを居間のドアから光が見ていた。




 加藤たちが帰って…………博美の部屋。


「ねえねえ、お姉ちゃん。 した?」

 光が入ってくるなり聞いてきた。

「……う、うん……」

「ど、ど、どうだった? 気持ちいい?」

 ずいっ、と光が顔を寄せた。

「……触ってくれるのは気持ち良かった。 ……でもあれが入ってくるのは痛かったよ……」

「えっ? 痛いの? 本とかだと気持ち良い様に書いてあるのに」

 光が首をひねる。

「(……このって何の本を読んでるの?……)」

 博美の腰が引けている。

「血って出た?」

 光がさらに突っ込んできた。

「……出なかったよ……何でかな?……」

「出ないんだー 本に書いてあるのって眉唾なんだね」

「(……だからいったいどういう本だよ!……)」

 年末の大掃除で光の部屋を調べてみよう、と考える博美だった。




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