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空の妖精  作者: 道豚
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高校を選ぶのは人生を選ぶようなものです。

 翌週の月曜日、博美は普段と同じように登校していた。女性として生きることを決めたのだが、もうすぐ卒業なので中学校の間はこのまま男で過ごすことになったのだ。もっともまだ生理が終わっている訳ではないので生理用ショーツにナプキンを付けている。見られたら変態扱いされるだろう。




「おはよう」

 教室のドアを開け、博美が入ってくると

「おう、おはよう。 もう体は大丈夫なのか?」

「わーい。 博美君おはよう。出てきて大丈夫?」

 クラスメートたちが集まってきて大騒ぎになった。

「うん。 まだ出血はあるけれど、少量だし、あと数日でそれも止まるって」

「ねえ、それって生理みたいだね」

 女子が核心を突く発言をする。

「ま・ま・まさか、男に生理は無いよ…… 腸に傷が付いているんだって。 だから治るまでは頻繁にトイレに行かなくちゃいけないんだ」

「ますます生理だね」

「…………」

 何を言っても「はまり」そうで博美は口を噤んだ……

「やだー 博美君。 冗談なのにー」

「あ・あはは…… そ・そうだよね…… (よかった、冗談だったんだ)」

「(なんだか怪しいけど…… まさかねー)」




 午前の授業が終わって昼放科。

「そう言えば、高専の試験結果はまだ出ないのか?」

 突然のクラスメートの言葉に博美は思い出した。

「そうだ、今日が発表だ……」

 反射的に立ち上がろうとするが

「と言っても、遠いからすぐには見に行けないな」

 再び椅子に座った。

「自信はどうなんだ?」

「正直、あんまり無い……」

 話しながら博美は心配になってきた。

「(性別が変わったことにより、無効になるかも…… )」

「(不合格なら心配ないか…… )」

「(でも、他の高校を受験するにも同じ心配があるんだ)」




「秋本は居るか?」

 めったに昼放科に現れない担任がやって来た。

「はい、何でしょうか」

「やったぞ!おめでとう。 高専合格だ!」

「うおーー」

「すげー」

「きゃーー、おめでとう」

「すごいすごい!」

 教室の中はもうお祭り騒ぎだ。

「ありがとうみんな。 ところで先生はなんで知っているんです?」

「ああ、中島先生が見てきてくれたんだ」

 中島先生と言うのは進路指導担当で、高専は特別だと言ってわざわざ車を出してくれた人だ。

「そうですか。 お礼を言わなければ……」

「ところで、一緒に受けた吉岡君と高木さんは受かったんでしょうか?」

「おお、二人とも受かったそうだ。 今年は成績がいいな」




「しつれいします」

 放課後、博美は進路指導室にやってきた。

「よお、ひさしぶり」

「あれ、吉岡君。 来てたんだ」

 博美は吉岡の横に座った。

「秋本、もうちょっと待ってくれ。 あと一人来るはずだから」

「はい先生。 あと一人は高木さんですね」

「ああ、三人揃ってから入学の手続きの説明をしたい」

 中島は手元のファイルを確かめながらそう言った。

「失礼します」

 ドアを開けて女の子が入ってきた。

「ようし、高木きたな」

 中島が女の子を見て言った。

「それじゃ始めるか」

   ・

   ・

   ・

「という流れだが、なにか質問はないか?」

 中島は三人にファイルを渡し、簡単に入学までの事を説明した。

「まあ、ファイルを見れば全て載ってるがな……」

「あの・・・ ちょっと言いにくいことが有るんですが……」

 博美が小さな声を上げた。

「あの…… 二人とも高専に行くよね?」

「もちろん!」

「私も。 行かない理由は無いわ」

「えーとね、それじゃ…… これから言うこと誰にも言わないでくれる?」

「いいよ」

「いいわ」

「先週の金曜日に腸から出血して病院に運ばれたこと、知ってるよね」

「うん」

「あれの原因が…… 生理らしいんだ」

「えっっ……」

 その場に居た博美を除く三人が息を飲んだ。

「秋本君、女なの!」

 高木が真っ先に尋ねる。

「うん、どうやらそうらしいんだ。 体の中は完璧に女なんだって……」

「うそ。 トイレは男でしょ!」

「うん、そうなんだけど…… 外形が男みたいなのは凄く珍しいんだって」

「……ちょっと話だけでは信用できないわね」

「まあまあ、こんな事で嘘をつくことはないだろう?」

 吉岡が口を挟む。

「それに、秋本は可愛いぜ。 多分、知らない人が見たら女にしか見られないと思うよ」

「(……うう……よく間違われるんだよな……)」

「(あれえ……女だと思われると言うことは、間違いじゃないって事か)」

「そうねえ、確かに可愛いわね……(そういえば一年生のとき、隣の組に可愛い子がいるって噂になってたわ)」

「それで、秋本はその事をここにいる皆に話して、どうしてほしいんだ?」

 中島が尋ねた。

「えーとですね、先生には、性別が変わっても入学できるか聞いて欲しいんです」

「吉岡君と高木さんに話したのは、もし入学できたとして、その時からは女として生活するので、知っておいてほしかったんだ」

「分かった、聞いて見るが、診断書があると有利かな?」

 中島はどういって切り出すか考えつつ答えた。

「はい、それじゃ、明日には用意します」

「いいわ、協力する!」

「うん、俺も協力するよ」

 高木と吉岡が右手を差し出した。

「ありがとう」

 博美は二人と固く握手をした……


博美は機械科、吉岡君は電気科、高木さんは物質工学科とそれぞれ専攻が違っているので、なかなか合えないでしょうね。

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