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それゆけ、孫策クン! 改  作者: 青雲あゆむ


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幕間: 最初の腹心

 俺の名は孫河そんか 伯海はくかい

 孫軍団に所属する兵卒だ。


 幼い頃に親を亡くしてから、孫堅さまに拾われて生きてきた。

 孫堅さまは武勇に優れ、指揮能力も高いお方だ。

 おかげで黄巾賊の討伐にも呼ばれ、その後も各地で武功を立てている。


 俺も成人前から付き従い、必死で戦ってきた。

 孫堅さまに付いていけば、より良い生活ができるようになると、無邪気に信じていたものだ。


 しかしそんな夢想も、幻となる。

 あの、誰よりも強いと思われた方が、あっさりと死んだ。

 襄陽の戦いで突出しすぎて、敵の矢玉に倒れたのだ。

 いざとなれば俺が盾になってでも、お守りするつもりだったのに。


 その後も軍団には所属していたものの、すっかりやる気を失った。

 おざなりに訓練をするだけで、後はもっぱら酒と博打ばくちだ。

 もう何もかもが、どうでもよくなっていた。


 しかしある日、そんな生活に光が差した。


「孫策さまが陣営入りしたって?」

「ああ、袁術さまにあいさつをして、無事に迎え入れられたそうだぞ。おい、どこへ行く?」


 それを聞いて、居ても立ってもいられず、走りだした。

 適当に会った人間に聞き回って、孫策さまの居場所を探す。

 やがてたどり着いた先には、たしかに彼がいた。


「孫策さま、ごぶさたしております。孫河 伯海です」

「あ、孫河さん。久しぶりですね。今後は俺も味方ですから、よろしくお願いします」

「いえ、今から私は孫策さまの配下です。このまま使ってください」

「は?…………いや、それはちょっと、まずいんじゃないかなぁ」


 いきなりの申し出は渋られたが、考えを変えるつもりはない。

 何人か関係者に話を通して、なんとか望みどおりの役をもらった。

 幸いにも孫策さまは袁術さまのお気に入りなので、多少の特別扱いは通った。


「孫堅さまの分まで、お仕えします!」

「あ、ああ……これからよろしく」


 強引に押しかけたせいか、孫策さまは戸惑い気味だ。

 しかしこれから誠心誠意、仕えていけば、分かってくれるだろう。

 文字どおり命懸けで、このお方を守るのだ。


 そうすれば、以前の夢の続きを見られるに違いない。

 いや、それ以上の夢ですら、不可能じゃないだろう。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 俺の名は呂範りょはん 子衡しこう

 豫州で役人をやってたんだけど、なんかヤバそうだから、揚州へ移ってきた。


 それで仕事を探してたら、町中でカモを見つけた。

 それは俺より少し上ぐらいで、羽振りの良さそうな男たちだ。

 ちょっと因縁つけて、金でも巻き上げてやるか。


「おいっ、いてえじゃねえか!」

「ああん? てめえの方からぶつかってきたんだろうが。しかも大した当たりでもねえのに」

「やかましい。俺の肩がいてえんだよ。これは金でももらわねえと、引き下がれねえな」

「チッ、やっぱりたかり屋か。ここじゃあ、周りに迷惑だから、こっちへ来い」

「ヘッ、いいだろう。逃げんじゃねえぞ」


 人気のない所へ誘われて、俺たちは後についていく。

 あっちは2人だが、こっちは4人だ。

 向こうも多少は腕に自信がありそうだが、俺も故郷では鳴らしたくちだ。

 軽くボコってやる、そう思ってたんだが……


「ず、ずんばぜん。もう勘弁じでぐだざい!」

「なんだよ。もう音を上げたのか?」

「孫策さま、それぐらいにしてやったほうがいいかと」


 意気揚々と殴りかかったら、あっさりと返り討ちにあった。

 いや、強いのなんのって。

 俺の拳なんて、かすりもしねえんだぜ。

 一方的に殴られて、ボロボロにされちまった。


 幸い、素直に謝ったらそれ以上の追撃はなかった。

 それどころか、なぜかお茶までおごってもらう。


「ふ~ん、豫州から移ってきたか。あっちはそんなにやべえのか?」

「ええ、野盗は増えるし、権力者は私兵を養って戦ったりで、ぶっそうな世の中っすよ。命あっての物種と思って、越してきたんすけど、先立つものがねえ」

「そうか…………なんだったら、俺のところに来るか? 実は今、手勢を集めててな。お前らも鍛えれば、少しは使えるようになるだろう」

「え、いいんすか? 兄貴にたかろうとしたのに」

「別に、実害はなかったしな」

「あはは……」


 なんと仕事先まで世話してくれるときた。

 聞けばこの孫策さま、袁術の下で働いているとか。

 袁術といえば、汝南袁家の御曹司だ。


 今はこの寿春を拠点に、勢力を築いているという。

 その配下とくれば、成り上がる可能性も高いだろう。

 ぶっちゃけ、俺なんか足元にも及ばないほど強いからな。

 俺はいちもにもなく、その話に飛びついた。


「一生、兄貴についていくっす!」

「おう、期待してついてこい」


 こうして俺は、孫策さまの配下になった。

 まさか、あれほど戦まみれの人生になるとは、思わなかったけどな(泣き)。

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