3.働く人々の笑顔。
今日も複数話更新予定。
「それで、ここが食堂ですね!」
「へぇ、屋敷の中にそんな場所があるんだ」
「リューデングラム伯爵は、今注目株の貴族様ですから。事業の成功もさることながら、アタシたち給仕や身寄りのない子供たちへの支援が評価されているんです!」
「……凄いね、それは」
屋敷の中にある食堂へ向かうと、そこでは休憩中らしい給仕や使用人たちが楽しげに雑談をしていた。こちらに気付くと一礼し、しかしすぐに気さくな態度で声をかけてくる。
女性が二人、男性が一人だ。
その中の一人はボクのもとへやってくると、笑みを浮かべて言う。
「アンタが、ティア様の王子様って人かい?」
「王子様、って……合ってるとも言えないけど、たぶんその通りだよ」
微かにそばかすのある彼女は、興味津々にこちらの顔を観察していた。
すると次に、声を上げたのは使用人らしき男性だ。
「おいおい、リニス。念のために言っておくが、相手はティア様の客人だぞ? 失礼のないように注意しないと駄目だろう」
「なんだい、まったく。ケニーは堅苦しいね」
「堅いのではなく、弁えていると言え」
「はいはい」
眼鏡をかけた彼――ケニーはこちらに向き直って、恭しく一礼。
そして、改めてこう名乗った。
「イソン様。初めまして、ケニーと申します。こちらはリニス、そしてエッタ」
「……え、えっと! エッタです!!」
彼に紹介され、ニャーラと同い年くらいの少女であるエッタが緊張の面持ちでそう言う。ボクはその初々しい姿に微笑み返して、こちらも三人に自己紹介した。
「ボクはイソン。客人だといっても、そんなに堅くならなくて良いからね」
すると、リニスがケニーを小突く。
「ほら、言ったじゃないか」
「お前は親しき中にも礼儀あり、という言葉を知らないのか。あと、社交辞令も」
「なんだい、アンタはイソン様がそんな小言を口にするとでも?」
「そうは言ってないだろう!?」
「ふ、二人とも……喧嘩はやめて……!」
そして三人は、和気藹々とそんな会話を始めるのだった。
他にも使用人や給仕はいたが、どうやらこの三人が異色らしい。わざわざ声をかけてきたのは彼らだけだった。
ボクは三人の仲睦まじい様子に、心なしか嬉しくなる。
どうやら、ここの水はずいぶんと良いものらしい。
「みんな、良い表情してるね」
「はい! これも、旦那様の人望あってこそです!!」
ニャーラにそう言うと、何故か彼女は自慢げに胸を張った。
その様子に、思わず笑ってしまう。
そんな感じで、屋敷の探索は終わりを迎えるのだった。
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