4.就職先の決定。
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「くそ、くそくそくそ!? どうして、俺様の攻撃が当たらねぇ!? ――いや、違う! おいガキ、お前のスキルはいったいなんなんだよ!!」
ボクが男の攻撃を続けて回避すると、いよいよ焦り始めたらしい。
相手は眉間に皺を寄せ、怒りと困惑を隠さずにそう言った。だけど、
「ボクにも分かりません!!」
「ふざけんなァ!?」
その疑問に対し、正直に答える。
そうすると男はブチ切れて、大きな声でそう叫んだ。
そうなってくると、動きにも精細を欠き始める。ボクは自分でも意味が分からないまま、無我夢中に炎剣を振るって、男の分厚い胴に叩きつけた。
何かしらの防具を陥没させるほどの一撃に、男の表情は苦悶に歪む。
倒れ伏して、忌々しげにこちらを見上げてきた。
「畜生、この……!!」
「あの! 今日はこのくらいにした方が良いと思います!!」
「ふざけんなよ。こんな情けねぇ負け方して、帰れってのか……!?」
「えぇ……」
それでも、何故か闘志は消えない男性。
ボクの提案をも突っぱねて、そう言うのだった。
「でも、兄貴! コイツ、普通じゃねぇよ!!」
「逃げましょう!? このままじゃ、兄貴が死んじまう!!」
だけど、震え上がったのは手下の男性たちだ。
彼らは必死に男性を説得し、そしてようやく落ち着いたらしい。
「……おい、ガキ。お前の名前はなんだ」
「え、イソンですけど……」
「イソン、か」
男性は静かにそう言うと、口元にニヤリと笑みを浮かべた。
そして、
「俺様はガイスだ。憶えておけイソン、お前の首は――」
こう、宣言する。
「このガイス様が、絶対に獲ってやるからなァ!?」――と。
◆
「さすが師匠です!」
「いや、師匠じゃないけどね……?」
戦闘を終えて、力なく公園の長椅子に腰かけていると。
先ほどまでの緊迫感はどこへやら、ティアは嬉しそうに言うのだった。ひとまずツッコミを入れてから、ボクは大きく深呼吸を繰り返す。
そして改めて、ティアの素性を訊ねるのだ。
「えっと、ティアは伯爵家の娘さん、なんだっけ……?」
「はい、そうです」
「どうして、命を狙われていたの?」
「分かりません。ただ、たしかなことがあります」
「たしかなこと……?」
すると、どこか自信満々に彼女は言う。
慎ましやかな胸を張って。
「師匠は、私の運命の人です!!」――と。
何がどう、そうなるのだろうか。
ボクはついつい冷めた視線をティアに送ってしまった。
だがしかし、そのような反応は眼中にないのだろう。少女は言った。
「お願いします! きっと、これからも師匠のお力が必要になります!!」
こちらの手を取り、真っすぐな眼差しを向けてくる。
「え、いや……」
「それに、たしか師匠にはお金が必要なのですよね?」
「どうしてそれを……」
「お父様に相談すればきっと、相応の報酬を用意してくださるかと」
「えっ!?」
ボクはそこまで聞いて、目を丸くした。
たしかに彼女の家は伯爵家であり、立派な貴族なのだろう。だとすれば、ティアの護衛などを引き受ければ、たしかな金額を稼ぐことができるはずだった。
そこまで考え至って、ボクは――。
「どう、いたします……?」
「ぐぬぬ……」
上目遣いにこちらを見る美少女の問いかけに、窮してしまった。
そして、その結果は……。
「お世話に、なります……」
「やった!」
こうして、ボクの新しい職場が決定。
少女の無邪気な笑顔と共に、嵐のような出来事だった……。
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