表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/41

幕間 真夜中の報告

 領主館の執務室。月明かりだけが差し込む部屋で、執務机に座ったラケルスに側近の一人が報告していた。

「ラケルス様。奴はやはりコップル配下の騎士でした」

「もう吐いたか。何を使った?」

「はい、明朝までに、との仰せでしたので、エクセター公の娘に添い寝させました」

「死んだか?」

「いえ、まだなんとか。しかし関節は使い物になりますまい」

「よかろう。そのまま聖堂の裏口にでも投げ出しておけ。コップルにはいい見せしめになろう」

「御意」

「コップルの狙いは、やはり、この街の支配権か」

「明確には知らされておらぬようでしたが、家臣の間でもそのように取られていたようです」

「私に聖女暗殺の濡れ衣を着せて失脚させ、イルミナ討伐の継続とザルツリンドの領有の両得を狙ったか。さすがに欲張りすぎたな」

「はい。聖女様に逃げられて焦っていたところ、ルイーゼ号から聖女様が降りてくる姿を見つけて、急遽、事に及んだようです」

「まぁ、早く口を封じたかったのはわからんではないが、もう少しきちんと状況を調べてから動くべきだったな。・・・奴が街へ来たのと、ルイーゼ号の到着が重なったのは偶然か?」

「そのようです。ルイーゼ号が街に向かうのを見て追いかけたようですが、ルイーゼ号の動向を知っていたわけではないようです」

「ならばよい。もしルイーゼ号の到着を知っていて来たのなら、こちらも獅子身中の虫を飼っていることになるからな。そうでなくて安心した」

「コップルを捕らえますか?」

「今は放っておけ。それよりも、メルフィリナ嬢たちの警備は万全だろうな」

「すでに配置を終えております。聖堂にも監視を付けました」

「よろしい。・・・最初から聖堂にも監視を付けておくべきだった。まさか、イルミナからの船に聖女様が乗っていたとは、さすがに想像もしなかった」

「メルフィリナ嬢たちもまだ正体を知らぬようでしたな」

「おそらく、聖女様が隠しているのだろう。暗殺の危険から逃げ出したのだ。そう簡単に正体をバラすわけにもいくまい。・・・ただ、あの治癒を見れば、魔女殿は気づいただろうが」

「今後は、どのように?」

「聖女様の扱いか?」

「はい。こちらで捕らえ、教会への手札としますか?」

「いや、聖女様と討伐軍との間には大きな亀裂があるようだ。捕らえるよりも、できれば、こちらの味方に付けたい。イルミナ討伐を終わらせるきっかけになるかもしれぬ」

「しかし、討伐軍はもはや聖女様の命令など聞かないのでは?」

「聖女様の命令は聞かずとも、法王の命令なら簡単には無視はできまい。それに、ルイーゼ号による物資の輸送が始まったせいで、討伐軍の一部、特に財力に余裕のない小領地の領主たちは撤退したがっているようだ・・・ただ、討伐の中心を担う連中を素直に撤退させるには、さらにもう一押し必要か」

「左様ですな・・・イルミナには勝てぬと思わせるのが良いのでしょうが、討伐軍にイルミナが反撃すると、かえって討伐の口実をあたえかねません」

「・・・教会内部では、まだまだ討伐に賛成する意見が多いようだ。ここで勢いづいてもらっては困る」

「ただし、討伐軍内部も、決して結束は固くない模様です。撤退となれば責任のなすり合いになるでしょう」

「ふむ。だとすると、それも利用できるかもしれん・・・しかし、まずは聖女様の言葉で教会がどう動くか、だな」

「しかし、聖女様はまだメルフィリナ嬢とエリス嬢の部屋の前から動かれぬようです」

「あのメルフィリナ嬢の様子を見れば、二人が心配なのだろう」

「エリス嬢が早くお目覚めになると良いのですが」

「そうだな。教会とは反目する我々だが、今日ばかりは神に祈りたい気分だよ・・・」

 側近を下がらせ、ラケルスは深く椅子に身体を沈めた。

次回予定「聖女の治癒」

「エクセター公の娘」は、寝かせた人間の両手両足を固定して引き延ばす拷問器具です。両肩や肘、膝、そして股関節が外れていき激痛を与えます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ