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セシャトのWeb小説文庫2018  作者: セシャト
第九章 『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む』著・ 洸夜
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大人である強みとリアル 汐緒の疑問とリアルから見た異能力

コーヒー党の私と紅茶党のトトさん、いずれ決着をつけなければならないかもしれませんね^^

どちらが、姉なのか? あるいは兄なのか? 

そして是非是非、アデルさんと三人でお茶を頂きたいものですねぇ^^

私の淹れる珈琲と、トトさんの淹れる紅茶とどちらが美味しいのか判断していただきたいものです!

 このマヨヒガと呼ばれる洋館では不思議な事が起きている。汐緒しかいないハズなのだが、風呂の用意も食事の用意も寝室の準備もトトが目を離すと出来上がっている。

 となるとやはりここは本当にマヨヒガなのかとトトは首をかしげていた。

 朝風呂を頂き、蜘蛛の間へとお礼を言いに行く。



「汐緒さん、お風呂頂きました。ありがとうございます」

「構わんす。それより朝餉の準備もできてありんす。ぜひぜひ冷めん内に」



 膝置きを使い、優雅に煙管を咥える汐緒。匂いからしてタバコではなく何等かの膏薬のようだった。トトは頭を下げると汐緒に今日立つ事を告げた。

 それに汐緒は上目遣いでこう言う。



「ぬし様は久々のまらうどでありんす、もちっといなんし! あちきと語りまし」



 ふむとトトは頷く、確かにここにはあまり人が寄り付きそうにはないかと懐中時計を取り出して時間が逆さまに動いている事を見て言った。



「分かりました。では、移動ブックカフェらしく、ちょうど僕が読んでいる作品のお話を汐緒さんにお話ししましょう! 本作はお上品な汐緒さんには大変合っている作品ではないかと思います」



 ふわっと膏薬の香る煙を汐緒は吐く。



「ほんにきになりんす。はなしんさい!」



 簡単に今までのあらすじを教えた後にリーゼロッテと見違えるようになったアデルとの再会の項で汐緒は上品にくすくすと笑う。



「紳士というとのさん、女性の扱いが全く分かってないでありんすな?」



 ほぉとトトは汐緒の読み取りを驚く、アデルもとい紳士は、完成されたジェントルである事は間違いないが、一人の女性としての扱いに関してはややフェミニスト気味である。それがこの物語を面白可笑しくするギミックであるという事を十二分に理解している。いわば汐緒にとってはこれは歌舞伎、あるいは狂言として楽しんでいるのだ。

 本作、紳士は出来た大人である。出てくるキャラクターの全ては下手すれば紳士の子供くらいの相手になる。


 当然、紳士の語りは妥当であり、これが大人の転生系の強みともいえる。何故なら、いやに大人びた子供という本来この手の物語ではリアルには存在しえない者が大人であるからリアル感を出し、さらに言えばあらゆるところで笑えてしまう。

 デリックとのかけあいでは、二面的に楽しめる。いかにアデルが優雅でカッコいいのか、そして紳士さん、それはいくらなんでも大人げないですよ。と言った風だろう。

 本作で繰り広げられる最初の戦闘に関してトトの語りを聴きながら反撃のカウンターに対して汐緒がトトに聞く。



「この紳士さん、合気でも齧ってるんす?」

「どうでしょう、どちらかといえば野球のミートですね。向かってくる物体の急所に対してただこちらの手を当てる感じでしょうか?」



 そう言ってトトはデコピンするように指を汐緒の煙管に向かって軽くはじく。「あなっ」と驚き汐緒は成程と体感する。



「しゃむに、この紳士(しんじ)さん、本来異能とやらを使えない紳士さんに対して異能を使わないデリックさんを褒めるのが紳士(しんし)ではないかや?」



 実に痛いところをついてくる汐緒、確かに元々粗暴なわりにはフェアな戦いをデリックは仕掛けていた。



「ここは、お互いの全力を持って決闘する方が、フェアであり紳士的であるとお考えなのかもしれませんね」



 次に汐緒が興味を持ったのは、アデル達と同じクラスの先輩、ヴァイスの登場について、コンコンと煙管の種火を掌に乗せてコロコロと転がす。トトも初めて見た光景ではあるが、熱くないのだろうかと見つめる。すぐに次の葉を煙管に詰めて種火を戻し煙を吸う。



「びすくどーるとはなにかや?」



 所謂陶器の様な肌を表現する時に使われるこの言葉、またビスクドールの人形故完成された美しさもプラスされ非常に分かり易いものであるが、当然と言うべきか汐緒は分からない。

 汐緒の手を取ると朝餉の茶碗に触れさせる。



「このような手触りを持ち、汐緒さんのような綺麗な人形の事ですね。ヴァイスさんはそれだけ容姿共に優れているという事です。本当の意味での美少年なんでしょう」



 美少年というのは男子を指す言葉ではない。美しい子供を指す言葉。



「はいやぁ、ぬし様もお上手でかなわんす!」



 そう言って顔を隠す汐緒。この仕草から、何故かトトは自分のよく知るセシャトを思い出す。この汐緒が大きくなったら大変だなと思って続きを語る。



「このシュバルツさんが言う五騎士ですが、生徒会はないとおっしゃてますね。説明を読むと実はまさに五騎士は生徒会なんですよね。生徒会とは生徒による自治と秩序の維持を目的とされています。これが、いかに大人ぶっていても子供であるところの可愛さでしょうか? 紳士さんがそこをツッコまない事がまた大人ですね」



 妙に色気のある視線で輪っかの煙を吐く汐緒、トトは汐緒が何かを求めているように感じたので旅行鞄を開くと瓶を二つ取り出した。



「さて、では作品で飲まれている紅茶を淹れてみましょうか?」



 目を大きく開き子供特有の興味を示した汐緒を見てトトはクスりと笑う。白磁のティーカップとソーサを取り出し、アルコールランプで湯を沸かす。そして一つの瓶から取り出した茶葉で紅茶を淹れると汐緒に差し出した。



「恐らく文面と世界感から読み取りますと、共同リビングルームでシュバルツさんが振る舞ってくれる紅茶は、秋摘みのノンフレーバーダージリンでしょう。どうぞ」



 静かに、それでいて上品に紅茶を含む汐緒の繭に少しシワが寄る。ゆっくりとそれを飲み干すと「少し苦いかや」と恥ずかしそうに笑った。それにトトも笑い返すと別の瓶を取り出す。



「ふふっ、ではデザートティーとして名高い。『クイーンズティー』で口直しをして頂きましょうか?」



 ダージリンは日本茶のように渋みが強い、そこが得手不得手あるのだが、クイーンズティーは飲みやすいセイロンとブレンドされている事で香りも楽しみながら飲みやすい紅茶と言えよう。



「ほえぇ、ぬし様は茶を淹れるのが上手でありんす。あちきもさながら物語の紅茶を飲んでいる気分になったかや」



 最上紳士をしてリーラの淹れる紅茶は前世でも味わった事がないと言う。お茶やワインなんかも精通してそうな彼がそう言うからには技術だけでなく、茶葉なんかも相当な品物なんだろうとトトは笑った。



「そう思って頂けてブックカフェのオーナー冥利につきますね」



 ハチミツと紅茶用にトトが作っているアプリコットジャムを差し出すと、紅茶に入れずそれを食べる汐緒。「あらあら」とセシャトの口癖を呟くトトに気づくと恥ずかしそうに顔を隠した。口の周りについたジャムとナプキンでトトはふき取ってやる。



「ぬし様、こそぐったか、よしゃんと!」

「これはこれは失礼しました」

「しゃかに、シュバルツというとのさん、くどいお人でありんすな?」



 それにトトはふふっと笑う。この構図は作者がお見事としか言えないだろう。これがただの学園異世界異能物であればシュバルツは何とも努力をし、それでいて不思議でカッコいい先輩にあたるのだが、紳士に話している事でその本来作品世界の魅力とは別ベクトルの要素を付加している。アデルが主人公の英雄譚であればシュバルツが異能を開花させていなかったと知った時の衝撃は言葉にできないだろう。


 が、しかし紳士は軽く驚いたに過ぎない。大人であり元の世界で営業成績ナンバー1の男はあらゆる事態を想定している。限りなく低い可能性としてこの事も予見の一つだったのかもしれない。



「それだけ、紳士さんもといアデル君を買ってるという事ですよ。ここでは、ですけどね。 微笑ましいですね。そしてやっとクエストともいえる物語の本筋の一つが解放されました」

「五騎士になることかや?」

「オールライト!」



 人差し指を天井に向け、空になった汐緒のカップのクイーンズティーを入れ直してトトはウィンクをする。

 最高クラスの誰もが憧れる地位である五騎士でありながら、先輩連中の気さくさには非常に学生らしいと思わせるところも汐緒は楽しんでいた。そして、汐緒はこの学生故という事に関してその裏面も感じ取っていた。



「やはり、シュバルツというとのさん、べこのかぁでありんすな。怪我をする訓練おおいに結構、されどすぐに治る怪我なんぞよしゃれ」



 この場面は確かに矛盾している。痛みの伴わない訓練に意味はないのだが、それが簡単に完治してしまうというのは実に危険極まりない。それが学校組織という中であれば尚更なのだ。



「そうですね。この場合は、アデルさんの異能を発現させるという名目上かもしれません。所謂火事場の馬鹿力というやつでしょうか?」



 わからんすと舌を出す汐緒のあざとさにトトは苦笑しながら、リーゼロッテとリーラの戦いを興味深そうに汐緒は聞く。



「炎と氷であれば、炎の方が強くはないかや? それが氷でなくともあらゆる力に炎はかちなんし?」



 異能における最強能力。それは火。所謂熱である。雷だろうと水だろうと、光だろうと闇だろうと能力無効化ですらこの熱とは真っ向からやり合えない。リアルで考えればのお話である。唯一世界を滅ぼす事ができる現実世界最強の力も人類の火と呼ばれた水爆である。これが氷に負けるのはおかしくないか? これが汐緒の疑問。

 そしてここからは作者の意識外のトトの見解。



「氷というものですが、凍らせる為には1度に対して1カロリー奪います。ですので、氷を使う能力者という者ですが本来は熱を奪う能力者なんですよね。熱を奪った結果、霜が降りるので氷が現れるわけです。でなければ、汐緒さんがおっしゃるとおり、氷のみを使う能力者は絶対的に炎を使う方には勝てません。それは温度の上限です。異世界であれ、絶対零度は変わりません。逆に言えば熱は無限です。リーゼロッテさんの炎が摂氏600以上。そうですね。汐緒さんが吸っている煙管程の温度を持っていたらただの氷使いはその熱は防げません。結果どうでしょう? 熱量を奪う力であればリーゼロッテさんがいかに温度の高い炎を放ったとしてもそれはより0に帰ります……というと少し難しいでしょうか?」



 先ほど、分からないと答えたハズの汐緒だったが、トトになんとも言えない視線を送る。長いまつげが上下するのは先を読めという事かと今回の盛り上がり所、アデルがシュバルツと初めて手合わせをするシーン。

 ふと汐緒がこう呟く。



「ぬしさまが、もしシュヴァルツのとのさんと戦ったら勝てるかえ?」

「成程、面白い質問ですね。多分即死します。僕は見た目以上に弱いですよ!」



 汐緒は何を聞きたかったのか、紅茶を一口すすると大きく瞳を開いて言う。



「しんぞ?」

「えぇ、ジンベイザメの神に誓いましょう」



 幕間について汐緒に問われる前にトトは言う。



「この項目は、アデルさん視点じゃないんです。所謂プロローグ、ここまでの終章をかねた章ですね。今日はこのくらいにしておきましょうか? 何かご感想は?」

「ソフィアという姉さん、かみしゃんみたいかや」



 案外、異能力物で無視されがちだが、ある意味神の領域と言っても過言ではない治癒能力。欠損以外なら何でも癒せるらしいそれに汐緒は心底恐怖した顔を見せる。



「そうですね! 実はあらゆる異能よりある意味上位にある力ですからね」



 汐緒は自分の考えている事を読まれて袖で顔を隠す。癒せるという事はその逆もしかりなのである。炎を出せるという事は消せる。なら癒せるという事は?

 実に気まずそうに煙管の煙を吐く汐緒が落ち着くまで台所を借りて何か簡単な物でも作ろうかとトトは蜘蛛の間から離れた。

異能力者という中で、確かに治癒能力という物は他の異能力よりも異質ではありますよね^^

しかし、アデルさんの力、私達のWeb小説に干渉する力をもコピーできるのでしょうか?

気になります! 本作『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む・著 洸夜』ですがブックカフェ『ふしぎのくに』にて課題図書になっています^^ 是非是非、読まれていない方はこの機会に!愛読者さんは再度読み直してみてはいかがでしょうか!

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