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セシャトのWeb小説文庫2018  作者: セシャト
第八章 『誰が為の黄昏~魔法と死に損ない共の物語~』著・雨宮 葵
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黄昏の国のアリア

台風さんが、面白い動きをしていましたねぇ^^

面白いWeb小説の多い日本から離れたくなかったんでしょうか?

今度、是非一緒にWeb小説を読みましょうね!

「ここが、秋文君をたぶらかすセシャトさんとか言う人がいる古書店『ふしぎのくに』。小さくて狭くて、こんな所に秋文君を連れ込んでいやらしい」



 そう言って赤いランドセルを背負った少女は堂々と古書店『ふしぎのくに』の扉をバン! と開く。



「たのもー!」



 少女はそう言うと店内を見渡す。外から見ていたより広く感じる店内、清掃が行き届いておりカフェのようなお洒落なそこにこれまたキチンとした身なりの制服を着た外国の女性が彼女を出迎えた。



「いらっしゃいませ! あらあら、なんとも可愛らしいお客様ですねぇ!」



 少女は直感した。

 このあざとさの塊みたいな女こそがセシャトであろうと……確かに、頭の悪い男ならすぐにコロっといってしまいそうだ。


(秋文君は馬鹿じゃないですけど)


 この女は何処の国の人間だろうと少女は考える。そして、スカートの端を持って礼儀正しく自己紹介をした。



「私は棚田アリアと申します。倉田秋文君とは結婚を前提にお付き合いをしております!」



 結婚を前提というのはアリアの勝手な妄想であり、秋文はその事を知らない。勝ち誇ったような表情をしているアリアにセシャトは顔をにやけさせる。



「あらあら、秋文さんのお友達なんですねぇ! 私はセシャトです! この古書店『ふしぎのくに』の店主をさせて頂いております」



 知ってるというのがアリアの率直な感想ではあったが、それ以上に白黒つけておかなければならない事。



「貴女、何人なのですか? 見たところ南アフリカあたりのイギリス系のハーフでしょうか?」



 そう聞かれたセシャトは笑顔を崩さずにこう言った。



「暑かったでしょう! 丁度、オヤツを用意していますので食べませんか?」



 そう言ってセシャトは胸に手を当てるとアリアを奥の部屋へと招く。そしてアリアはそれに身の毛がよだつのを感じた。


(この奥で、秋文君が骨抜きにされたアダルトスポットですのね。いいでしょうセシャトさん、貴女のホームグラウンドで貴女を打ち負かせてみせます)


 心音が高鳴るのを抑えてアリアは恐々として母屋へと踏み込んだ。

 母屋というそこはお洒落なリビングと言えばいいだろうか? 珈琲豆と紅茶の茶葉が棚に飾られ、テーブルには各種洋菓子が置かれている。

 そして、口の周りをクリームで汚している同い年くらいの子供の姿があった。


(セシャトさんの妹か弟かしら?)


 そう思っていた子供はシュークリームにかぶりつき、そしてカップを宙に掲げるとこう綺麗な声で言う。



「おい、セシャト! 茶が切れたぞ」



 紅茶の事だろう。少し席を立ち紅茶が置いてあるところまでいけばいいものを、この子供はセシャトさんにわざわざ紅茶を注がそうとする。なんという我儘な子供なんだろうとアリアは思った。



「あなた、自分で紅茶を取ればいいじゃない? すぐ目の前にあるでしょう?」



 スライスされたフルーツにフォークを入れ金髪の子供はアリアを見つめる。

 そして再び口を開いた。



「セシャトー! 茶が切れておる! あと変な奴が不法侵入しておるぞぉ!」

「変な奴じゃないわ! あなたこそ変な子供じゃない!」

「変な子供と言うな。せめて変なジンベイザメと言え、この愚か者めが」



 ますます変な子供であるこの外国の美少年あるいは美少女。声の高さも忠誠的でなんとも判断がつかない。

 そのアリアの思考を遮断させるのは狭いキッチンから大きなショートケーキを持って戻ってきたセシャトの姿。



「はいはい、只今! 神様。またその方は私のお客様ですよぅ」



 ふむと言いながら紅茶を入れてもらい、ショートケーキに手を伸ばすが、セシャトはそれをひょいとかわす。



「神様、これはアリアさんのショートケーキです! 神様はテーブルのザッハトルテをお楽しみください。アリアさん、どうぞおかけください。私は少しお店に出てきますね!」



 そう言って椅子を引いてくれるので、アリアは頭を下げて座る。手触りもデザインもいいテーブルと椅子。このあざとい女のセンスなのか……アリアは出されたショートケーキを前にしてこう言った。



「いただきます」


(イタリア家具にイギリス風のティータイム……やっぱり、イギリス文化圏の方かしら? でもケーキはショートケーキなのね……)


「貴様、つまらん事を考えておらんか?」



 ケケケと笑いながら神様と呼ばれた子供がアリアに話しかける。なんとも不躾なもの言いだろうかとアリアは一口ショートケーキを食べると口を拭く。



「つまらない事、ですって?」

「そうだの。しきたりであるとか、マナーとかを貴様は叩きこまれた口であろう? この空間に意味などない。甘い菓子と美味い茶があればの。だから、貴様に出しているお菓子もショートケーキがなければ羊羹だったかもしれんし、桃だったかもしれんの!」



 そう言って神様はスライスされた桃にフォークを打ち付ける。



「羊羹だったら食べてはいけなかったかしら?」

「ほう、その年でよう知っておるな! だが、出された菓子は食う。それが礼儀であろ? ちなみに貴様が今喰っておるショートケーキは銀座千疋屋の超高級ショートケーキ。私でも二回くらいしか食った事がない。フルーツパーラーが出すケーキというものは総じて果物だけが美味いパターンが多いが、そこはスポンジもたまらんな」



 とトリップしながら語る神様にアリアは段々面白くなってきた。同い年くらいの子供、少し話し方はおかしいが、アリアが気に入る程度には子供らしくない。今店内で接客をしているセシャトさんについて知るいい機会だった。



「ねぇ、あなたカミって言うの?」

「いいや、神様だ」

「カミサマさん?」

「むぅ、まぁそれでもよいわ」



 しっくりこない呼ばれ方に神様は唇を尖らせるが、お菓子を食べる手を止めない。そんな神様にアリアは聞いた。



「カミサマさん、セシャトさんの事を教えてくれないかしら? どんな方なの?」

「あ奴か? あやつはこの店の店主で狂ったみたいに菓子を喰らい。Web小説を読む事を趣味と生きがいにしておるな。ちなみに私は全書……」



 神様の自己紹介を流してアリアは踏み込む。



「それ! Web小説よ! ある時を境に秋文君がその言葉を言うようになったの! 『琥珀』も『三國の華』も、秋文君が言う本は何処にも見つからなかった!」



 必死にそう言うアリアにぽかーんとした表情を見せて神様はお菓子を食べる手が止まる。それは見た事もない生き物を見ているような目で……神様の自然界には存在しえないパープルアイに見つめられるアリアはなんだか恥ずかしくなる。



「いや、ネットで調べたら速攻出てくるぞ!」

「えっ?」



 アイパッドを神様は何処からともなく取り出すと『琥珀』『三國の華』と表示させて見せた。それを少し読んでアリアは唇の端を結ぶ。



「私の家はこういう物を使ってはいけませんから……」

「ほう! 前時代的だの!」



 神様の返しに少し悔しそうな顔をしながらも頷く。それに神様は優しく笑ってみせた。少しドキリとしたアリアは俯く。



「おい、セシャト! 貴様の客で間違いないようだな」



 一仕事終えて戻ってきたセシャトは「おまたせしましたぁ」とアリアの目線に膝を曲げてほほ笑む。



「お探しのWeb小説はどんな物でしょうか?」

「秋文君の知らない……じゃないわ! そうね。Web小説という物と私がこの夏に読む小説と比較したいわ!」



 そう言うので神様がアリアに問う。



「夏には何を読むんだ?」

「『旅のはじまり(黒ねこサンゴロウ) 著・竹下文子、鈴木まもる』よ」



 セシャトが神様を見るので神様は紅茶で喉を通して言う。



「有名な児童書だの、アリアに内容をばらしても悪いので、あれだが児童文学での異世界転生、逆転生ファンタジーと言ったところかの」

「むむっ! 児童文学にそんな作品があるんですね! でしたら心が温まるような児童書系Web小説を……」



 セシャトの提案にアリアは焦りながら拒絶する。



「ダメよ! もっと大人の人が読むようなのがいいわ! 秋文君になら何をオススメするのかしら?」



 ふむとセシャトは考える。そして神様がウィンクをするので、少し考える。



「ですが、あれは十五歳以下禁止の……」

「なろう運営が五月蠅いだけであろ? あの程度の表現、児童文学でも十分に使われている。よいではないか、夏にこそ相応しいし分量も一話一話が少ない。ただし章に入るまでの読み疲れがネックかもしれんがの」



 神様は冒頭がやや長めのその作品の欠点を先の述べる。Web小説において第一話の重要性は何度か語ってきたが、説明したい事が多く冒頭が長い物もやはり苦手な読者は多い。



「むむっ! 私はあの感じ嫌いじゃないんですけどねぇ」

「ちょっと! 二人で話を進めないでよ!」



 セシャトはノートパソコンを持って来ると画面を表示させ、アリアに見せる。そしてセシャトはこう言った。



「この物語は黄昏の物語です。それはここに迷い込んだアリアさんもまたそうなのかもしれませんね?」



 ふふふのふと笑うセシャト、そしてフンと鼻を鳴らす神様。微睡のような世界、それを演出した上でセシャトは首にかけてある金の鍵を取り出した。



「хуxотоxунихуxакутоxуноберу(Web小説物質化)」



 一冊の大きな本を取り出すとそれをアリアに手渡す。今起きた事にアリアは頭がパンクしそうになりながらそれを受け取った。

 タイトルを読むアリア。



「『誰が為の黄昏 ~蝶と死に損ない共の物語~ 著・雨宮葵』」



 それは彼女の不思議な夏休みの始まりを意味する事になる。

ふふふのふ^^ はじまりましたねぇ!! 現代ファンタジー紹介月の8月ですよう!

そうなんです! 8月とえば夏休みです^^ 夏休みと言えば読書感想文ですよねぇ!!

デジャヴしますか? はい! 今回の主役は棚田アリアさん。彼女は不思議な物語と不思議な夏休みを過ごしますよぅ^^

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