84.兄妹は初心に帰りゴブリンと戦う
書籍化が近づいてきました。楽しみだなー。
この話が面白いと思ったら、拡散してくれると幸いです。
ツイッターの拡散能力を実感する今日この頃。
ツイッターをやっていればとひそかに公開しております。
「んー、おにい。扉だね」
「扉だな。ボス部屋の扉よりでかいんじゃないか」
真っ暗な石畳の道を進んでいく俺たちの前に現れたのは大きな扉だった。金属でできていると思われるその扉は今までのボス部屋の扉よりも大きく、暗闇ではぼんやりとしか、全体像をとらえることができない。
「モンスターはいなかったな」
「うん。多分元々ここにはモンスターがいなかったのかな」
「モンスターが勝手にこの扉を開けてうろつくとは思えないもんな」
ハルはゆっくりと警戒しながら扉に近づき触れる。
扉はゆっくりと開いていき、その奥からは徐々に弱い光が漏れ出てくる。
「おにい、下がって」
ハルがバックステップで扉から距離を取りながらトンファーを構える。
それと同時に俺にも扉の奥から漏れ出てきたのであろう得体のしれない何かを感じる。
「これってリムドブムルの卵と同じだよね」
「それよりはるかに濃いけどな」
その得体のしれない何かは、リムドブムル戦の時の呪いのようなものや、リムドブムルの卵と同種のもの。それの濃度を上げ、空間へと充満させたかのようだった。
「たぶんここが、スタンピードの原因?」
「その可能性はあるだろうな。実際俺たちがリムドブムルを倒したことが関係したのかも分からないからなんとも言えないが。無関係はないだろ。ん?」
「あー、モンスターが来るね。モンスターがいないのは扉のこっち側だけだったかぁ」
開ききった扉の奥へと足を踏み入れ、『把握』で、モンスターを確かめる。
「人型、サイズは1メートルと少し。武器を持ってるな。ゴブリンか?」
『把握』で理解した敵影は、1階層で見たゴブリンとほとんど同じだった。違う点と言えば走る速度が速いことと武器を持っていることだろうか。あと。気配から強いことが分かる。
「来るぞ‼」
醜い叫び声とともに曲がり角から現れたそいつ、ゴブリンは右手に持った剣を光らせながら俺たちに向けて跳びかかる。
「一旦様子見ね。【ボム】」
ハルの手から飛び出した魔法はまっすぐと空中にいるゴブリンの下へ飛んでいき。
「はぁ⁉」
次の瞬間、剣によって切り裂かれていた。
おそらくこのゴブリンには今までのモンスターになかっただろう知恵がある。
【ボム】を切り裂いたゴブリンはそのまま着地すると、綺麗な受け身を取り、そのまま剣を横に薙ぐ。
「あっぶね。下手したら此奴、俺より剣が上手いかも。俺が攻めるから援護頼む」
ゴブリンが突き出した剣に刀を合わせ、勢いを逃がし、そのままゴブリンの剣に向けて刀を振り上げる。
剣に刀が当たる瞬間に腕に力を入れ、押し込むようにして、ゴブリンの剣を腕ごと上に上げさせる。
そのまま自分は追撃を加えるのではなく1歩横にずれ刀を振り上げる。
「ナイスおにい‼ 【亀裂】」
「ギャアー‼」
空間に罅が入り、ゴブリンを貫く。だが、体を捻ることによって急所を外されたその攻撃は、殺すまでには至らない。
「まあ、急所を外しても動きを止めたら駄目だよな。『強斬』」
刀に込められたスキルにより刀身が光り、ゴブリンの首を切り裂いた。
「勝ったよね?」
斬り飛ばされ、床を転がるゴブリンの頭部をハルが蹴飛ばすと、すぐに頭は身体もろとも黒い霧へと変わり消える。ドロップアイテムは無い。
『把握』を使い周囲にモンスターがいないことを入念に確認して初めて武器を下す。
「とうとうスキルだけじゃなく剣術や体術も当たり前になってきたな」
「うん。動きの速さは森林の強いモンスターと変わらないけど避けられたり斬られたりするなら速度の遅い魔法は効かないかも」
「『把握』の範囲の外から真っ直ぐ走ってきたから索敵能力も俺以上なんだよな」
「私が気付いたときには、走ってきてたから私の『察知』よりも広い範囲で索敵されてるね」
「これがあのゴブリンだけだったらいいんだが……ハル、こっちへ来い」
「ん? どうしたの」
『把握』の範囲にモンスターが入ったのに気づきハルを呼ぶ。
今の返事の様子だと『察知』では反応していないらしい。
「モンスターが来てる。1層の時と同じサイズのスライムだ。動きは鈍い」
「え、私の『察知』には反応してないよ。ってことは『隠密』とかかな」
先ほどゴブリンが現れた曲がり角の奥からズルズルと引き摺るような音が聞こえてくる。
「とりあえず避けること最優先で。もし安全に攻撃できそうだったらするってことで行くぞ」
「わかった」
その返答と共に、黒い半透明のドロドロが曲がり角から顔を覗かせたのであった。




