83.兄妹は進み続ける
「お、やっぱ変化はあるな」
「ほんとだー」
石碑の下まで来てみれば石碑の後ろの壁に穴が開いた。俺たちが石碑に近づくと、壁の一部が光り、消えていったのだ。
「だが、これは異変とは関係ないよな」
「そうだね。多分リムドブムルを倒して次の階層に行けるようになっただけじゃない?」
「だろうな。とりあえず行ってみるか。初めての階層だから注意しろよ」
「おっけ」
石碑の奥にできた洞窟に入ると、すぐに下へ向かう緩やかな階段となっていた。岩を適当に削っただけのような凸凹の階段だった。
ダンジョン本来の明るさも無く、光源は森林から入ってくる光だけになっている。
それでも階段を下っていけば段々と光源も薄くなり、真っ暗になった。自分の足元が見えないどころか前にかざした手さえも見ることができない。
幸い周囲にモンスターの気配はしないが、このようなところでモンスターが現れれば、逃げるしか無くなるだろう。『空間把握』が使える俺ならば戦えるかもしれないが、そんな状況で戦いたくはない。
「あ、そういえば【ボム】」
ハルの突然の声とともにハルの手に小さな光がともる。
「光源には物足りないけどマシかな?」
ハルの手にある光はその場に停滞させた【ボム】の魔法。確かに戦闘をするには物足りない光だが、自分の足元がしっかり見えるようにはなった。
「いや十分だ。魔力は平気か?」
「うーん。光を強くしたら消費も多いけどこれぐらいなら魔力の回復速度で間にあってる」
「ならそれで頼む」
周囲を警戒しながら歩いていくと地面の感触が変わる。
今までの道はひたすらに凸凹していたがそれがいきなり滑らかになったのだ。
「舗装されてるな」
「ちょっと光強めるね」
ハルの手から光の玉が少しだけ距離を取り、明るくなる。
「石畳だね。作るのに機械でも使ったみたいに綺麗にできてる。多分この石畳全部同じ大きさだよ。ミリ単位で」
ハルが石畳に触れ、確かめていく。
「時間が経ってボロボロになってるわけでもないし、作り立てみたいな感じ。にしては砂が落ちてる。砂の落ちてる場所はまばらで偏ってる。ダンジョンと一緒にできたとも思いにくい感じ? おにい。ここまで風が来ると思う?」
「この洞窟、道ができたのは俺たちが近寄ってからだろ。感じれるような風は吹いてない。気にしないと分からないほどの風で偏るような砂か?」
「いや、そこまで細かくはない。ってことは、ダンジョンができてからこの状態ってことかな」
「またはモンスターが来たかだな」
1歩後ろに下がり石畳になっていない岩肌部分の地面をなでる。
手は綺麗なままだった。地面の凹凸は感じるが砂はつかない。
「ハル、砂があるのは石畳のとこだけっぽいぞ。岩肌のところには無いと思う」
「そう? ちょっと確かめてみるね」
ハルは光を動かしながら岩肌部分の地面を確かめていく。1分ほど歩きまわり立ち上がるとこちらに戻ってくる。
「可能性は2つ。この岩肌の部分がモンスターの立ち入れないエリアな可能性。もう1つが」
「岩肌部分が後から作られた可能性。ってわけか」
「そうだね。でそうすると、今この場所はモンスターがいない。少なくとも歩き回ってないってことになるからそっちの方が信憑性は高いかな」
「今のところモンスターは見てないからな。で、岩肌部分ができる前は何者かの立ち入りがあったってことだよな」
「それがダンジョンの製作者かモンスターか異星人か異世界人かは分からないけどね」
今まで注意してこなかった部分だが周囲が暗いせいでより警戒してしまう。だからこそ、このような些細なことが気になるのだろう。
そういえばボス部屋の前のモンスターが入れないところには砂は落ちていただろうか。
今となってしまえば分からない。砂が落ちていてもそれが元々あったものなのか、俺たちの靴にくっついていたのか。または靴と擦れて削られた地面である可能性もある。
その場合はダンジョンに吸収されるのだろうか?
俺たちの靴にくっついて入ってきた砂ならば消えるだろう。だが地面を削られてできた砂はどうか。分からない。
疑問を解決しにダンジョンに入ったというのにまた疑問が増えてしまった。
「とりあえず行くか」
「うん。これ以上考えても分かんないし」
まずはここ、石畳のエリアにモンスターがいるのかどうかだ。
分からないことばかりだが、少しだけダンジョンの本質に近づいている気がする。だからこそ。
「これまで以上に慎重に行くぞ」
「おにいも、下手に歩いて証拠消さないようにね」
俺たちは歩みを止めない。




