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地下室ダンジョン~貧乏兄妹は娯楽を求めて最強へ~  作者: 錆び匙
3章 貧乏兄妹は強さを求め龍狩りへ
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51.兄妹、北海道に出現

 

「おー、涼しいね」


「そうだな。思ったより涼しいな」


 俺たちは今北海道にいる。北海道の県庁所在地、札幌。北海道のダンジョンは札幌の端っこにあるのだった。

 ダンジョンは適当な場所にあるように見えて、人が多い場所にできていることが多い。

 それは海の中や砂漠の真ん中にはないことや、人口密集地に多いことから分かる。

 と、実際にそれだけならば東京にいくつものダンジョンができてしまうのではないかと思うだろう。ダンジョンはランダムで大まかな位置が決められそこから人が多そうな場所に作られる確率が高いというのが政府の見解だ。

 つまりはだからと言って人が多い場所にしかできないわけじゃないよ、ということ。


 それはさておき、この北海道ダンジョン。呼ばれ方は札幌ダンジョンか。札幌ダンジョンには現在日本最強と呼ばれる勇者御一行が探索していたはずだ。どうせなら、どれほど強くなったのかを見ておきたいのだが、この前見たばっかりだしそこまで変わってはいないだろう。

 とは言っても最後に見たのは3ヶ月前か。

 3ヶ月もあれば十分に変われるような気もする。第一勇者御一行には俺たちが苦肉の策としてプレゼントすることになってしまった聖母の守護杖と聖騎士の霊剣があるのだ。

 今頃森林で大量虐殺を行っていても不思議じゃない。おびき寄せたモンスターを聖域で防いで霊剣のスキルである信仰の剣で斬り飛ばすとか。信仰の剣の強さが分からないから何とも言えないけど。


 そして俺たちは現在。ダンジョンの前にいる。正確にはダンジョンダムの入り口の前にある広場。

 気づいたことと言えば東京に加えて圧倒的に広場が広い。イベントが開けそうだ。と思ったら舞台があった。実際ここでイベントが開かれたのだろう。少しインターネットで調べて見るか。


「おにい、何日か前にここで勇者御一行の他探索者の模擬戦イベントがあったらしいよ」


「へぇー、俺が今調べてたんだけど」


「いや、そこに書いてあるし」


 ハルが指さした方を見てみるとイベント予定やその他ダンジョンに携わる情報が書いてある看板があった。そしてダンジョン市場はダンジョンダムの右奥と。

 最初は東京にしかなかったダンジョン市場も各ダンジョンに対応して作られ、企業はそこで販売を行っている。


「さあ、ダンジョン市場を見に行きますか」


「そうだね。ダンジョンはいるのも手続き面倒だし。どうせ攻略なんてほとんどできないし」


 俺たちはとぼとぼとダンジョン市場へと向かう。

 何故とぼとぼなのか。まあ、お察しの通り、親はいなかった。今日いないだけという可能性も考えて写真を持って聞き込みとかやったんだけど。ハルも俺の服を掴みながら後ろをついてきて。まあ、つまりハルは何もしていないのだが。

 結果、誰も知らないと。まあ、そうだよね。全部で8つのダンジョンを回るのだから最初から当たるとは思っていなかった。ついでに言えば俺たちの親って寒がりの暑がりという不便な体だった気がする。そりゃあ、寒さの極みの北海道なんて行かないよな。

 しかしそうならば鹿児島という選択肢も消えるだろう。暑そうだし。


 そして、そうなれば当然暇になるわけで、と思っていたのだが。思っていたのだが現在時刻20時。

 いやー、北海道って遠い。銀行寄ってから来たから昼も駅弁だったし。もう夜ご飯の時間。後1時間でダンジョン市場も閉まります。

 俺たちが北海道に来てしたことは聞き込みだけ。さすがにそれは無いと思う。予定では明日の朝から次のダンジョンがある岩手に向かうことになっている。


 まあ、少ない時間を楽しもう。

 ダンジョン市場の中の作りは大きな倉庫のような見た目だった東京とは違った。そこはまるで氷と岩に包まれたかのような見た目をしていて、どことなく幻想的。氷河にいるような感覚で灯りは氷のようなものに包まれている。その氷はガラスでもプラスチックでもなさそうな、何か分からない素材でできている。

 いや、実際はただのガラスやプラスチックなのかもしれないが何故だか俺にはそう見えた。

 市場の中も露店のような感じではなくしっかりと店舗が建っていて、何か月か前に見た東京のダンジョン市場とは違い、隙間なく店が並んでいる。以前見た、だだっ広いだけの何もない空間は無くなっていた。

 そして市場の中を回っていた時俺たちは面白いものを見つけた。

 それは1枚の張り紙。


『ダンジョン市場をダンジョン素材で飾りましょう‼』


 といった感じのやつ。札幌ダンジョンは皆の持っている売っても金にならないような素材を寄付という名目で集め、なんらかのスキルを使い、ダンジョン市場を豪華にしているそうだ。聞いた話だと天井にある氷柱のようなものや、壁に光る氷のようなものはそのスキルによって作られているらしい。

 それならば確かに氷でもプラスチックでもない物質だ。

 俺がそれに気づいたのはダンジョン産のアイテムが発する気配のようなものなのだろうか。よく分からない。

 そんな時だった。いつぞやのように入り口が騒がしくなったのは。


「お帰りー」

「お疲れ」

「今日のドロップはどうでしたか」


 それは日本最強、勇者御一行。4人全員がアイテムポーチを持ち、歩いている。さすが、月収が億を超える奴らは違うな。と思う。まあ、俺たち2人もアイテムポーチは持っているわけだが。おそらくあのアイテムポーチは自分たちで入手したのもあれば購入したのもあるのだろう。

 そんな勇者の腰には立派な剣の鞘が輝いている。そこは俺たちのプレゼントした剣が、と言いたいのだが。プレゼントしたのは抜身の剣だから、そりゃあ鞘に入って柄しか見えない。

 そしてそんな勇者の姿は。


「強くなったな」


「そうだねー。オーラが違う?」


「いや、それは分からんけど」


 なんとなく勇者御一行が立派なように思えるのだった。

 どことなく成長した感じ。

 そんな勇者は市場全体を見渡すように立つと鞘ごと剣を持ち上げる。

 そして大きく口を開いた。


「今日はみんなに報告がある‼そして、みんなの協力を仰ぎたい」


 勇者たちが突然言い出したのはそんな内容だった。


ただ1つ言わせてほしい。

人1人の少し大きく出した程度の声は大きなダンジョン市場の中では。


殆どの人には聞こえないんだよな。 遠くて。


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