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地下室ダンジョン~貧乏兄妹は娯楽を求めて最強へ~  作者: 錆び匙
3章 貧乏兄妹は強さを求め龍狩りへ
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47.兄妹は新宝具を試す

「ただいまー」


 ハルが俺の前を歩き、おんぼろな自宅の扉を開ける。

 このおんぼろな見た目をした扉もダンジョン産のアイテムを錬金してあるため、かなりの強度がある。ただ、しっかりと作りすぎてしまうとダンジョンの機能で吹き飛ばされてしまう恐れがあるので、丈夫にし過ぎてもいけない。

 あのダンジョンダムも一般公開をする前はとても丈夫な扉を作り、カギを掛けないことでダンジョンに吹き飛ばされないようにしていたらしい。だとすればこの家もそれの真似をすればいいということで、カギに対しては何の補強もしていないのだ。

 田舎の長年放置された家の鍵である。おそらくはステータスで底上げされてない筋力で蹴るだけで壊れてしまうだろう。

 今までダンジョンに吹き飛ばされたことは無いのだから問題ないことは証明済みだ。


 空は既に暗くなり始めており、これからもう1度ダンジョンに潜るのは夕食や疲労のことも考えるとやめておいた方が良いだろう。

 家に入ると見た目だけのカギを閉め、装備を脱いでいく。

 それにしても今回、刀とトンファーの宝具を作れなかったのは失態だった。これから別のダンジョンに行って人化牛を倒してもいいのだが、それには少しお金がかかりすぎる。ぱぱっと行ける距離ではないから。

 お金を稼いでも将来儲けが無くなる可能性を考えたらまだまだ足りないのだ。

 何処から俺たちの情報が洩れて、いつ自宅ダンジョンが使えなくなるか。そんなことは誰にも予想できないのだ。もし見つかってしまえば、なんだかんだ言われて犯罪歴が付いてしまうかもしれないし。

 俺たちの最終学歴は2人とも中卒だ。中卒で犯罪歴ありなんてなったら雇ってくれるところなんてどこにも無いだろう。

 ただでさえ中卒に就職は難しいこのご時世だ。そうなれば将来は何もせずに生きていくほどの金を子供のうちに稼いでしまうのが良いだろう。

 そういえば俺たちは子供だが、税金とかその他いろいろはどうなっているのだろうか。まあ払わなきゃいけないものがあって未払いになっていても親の責任だから問題ないか。屑おやじが勝手に家を出ていったとはいえ、書類上は俺たちの保護者なのだから。


 そんなことを考えながら装備の手入れを済ませて、金庫に入れて。いつも通り外を走ってご飯を食べて風呂に入って寝たのだった。

 ちなみに今日の夜ご飯は人化牛の肉を薄く切ったものを焼き肉のたれで炒めたものだ。いつも通りとてもおいしかった。



 そして。


「よし、おにい。探索行くよ‼」


 次の日起きてすぐこのようなことを言い出したハルをなだめつつ、一般に公表されたダンジョンのドロップの情報を集めることとなった午前中。やはり気になることが見つかった。

 東京やその他ダンジョンでのレアドロップなどの出現率は変わらないと思われるようなことが書いてあった。

 とはいえ、ドロップ率もゲームではなく現実なので正確には分からないし、探索者の間ではこっちのダンジョンの方がドロップが良いなどと言われることもある。

 まああれだ。パチンコ屋で今日はこの台が当たりやすいだとか、ゲームのガチャは連続で引かない方が良いだとか。そんな根拠もない願掛けのようなものの一部だろう。


 それはさておき、この家のダンジョンは他のダンジョンに比べるとドロップするものが一部欠けていたのだ。

 ドロップするものは一般で4種類ほどに分けられているらしい。国が定めたような正確なものではなくネット上で呼ばれるようになったものではあるが。

 ドロップ率が76パーセントを上回るようなものを通常ドロップ。

 ドロップ率が31パーセントから75パーセントまでの物を準通常ドロップ。

 6パーセントから30パーセントまでを準レアドロップ。

 そしてそれ未満をレアドロップ。

 一般に言われているのはここまで。だが、実はその下に超レアドロップというものがあると言い張る人もいるらしい。

 ただ、この超レアドロップはドロップするものが定まっていないうえにモンスターの強さが通常より強かったり若干見た目が違ったような気がするということから見た目そっくりのユニークモンスターのドロップだと大抵の人が言っている。

 未だに超レアドロップなどと言っていると夢見た厨二病扱いされるそうだ。


 そして超レアドロップはともかく、このレアドロップと言われている物。

 ネット上で明かされているレアドロップが俺たちの家のダンジョンでは出たことが無かったのだ。

 このレアドロップは全てのモンスターにあるわけではなくて一部のモンスターが持つという話なのだが。そのモンスターからも全く見たことが無い。

 例えばあのレアウサギ。たまにしか会えない経験値のものすごく高いやつだ。あれはそもそもレアドロップしか無くて、ドロップさえすれば必ず魔道具が出るらしい。まあ俺たちがレアウサギを見た回数はぎりぎり2桁程度なので検証するにもできないが。


 そんなことを調べているうちに午前が終了し、耳元ではやくーはやくー、とハルにせかされながら昼食を作る。

 作った昼食をすごい勢いで完食して装備を着たら、とうとうダンジョンに潜るというわけだ。


「よし、おにい。行くよ。せい‼」


 朝と同じことを言いながら目の前に現れたゴブリンを蹴りの一撃で討伐するハルに手を引かれながら転移の間へと向かう。


「とりあえず行く場所は森林だな。もしもリムドブムルの気を引いても平気なように洞窟から出てすぐの場所でやるぞ」


「りょーかいっ‼」


 転移をしながら確認を取ると転移先に現れたハルは敬礼のポーズをとっていた。

 すみません。転移の瞬間だったんでほとんど見てませんでした。と冗談はともかく。


「まずは私から行くね」


 洞窟から出てすぐにハルは指輪へと魔力を流す。指輪には前のモーニングスターと一緒に新しい宝具が収納されているらしく、何を出すか考えてから魔力を流さなければいけないと893さんは書いていた。

 ちなみに新しい宝具が追加された後の指輪の名前は、『宝具トウカ2』『宝具ハルカ2』と変化していた。どうやら最後の数字は中に宝具が何個入っているかを表す数字のようだ。


 ハルの目の前に丸い透明の何かが浮かんだのが見えた。それが宝具なのだとは分かるがそれは明らかに道具ではない別種の物。しいて言うなら。


「液体、魔力?」


 ハルが疑問をこぼす。宙に浮かんだ丸いものはまさに無重力空間に浮かぶ水で、それは普段使う魔力とは質の違う魔力のようなものに見えた。大きさは直径30センチほど。決して大きいとは言えない。


「ハル、それが何か分かるか?」


 とりあえず使っている本人の方が分かるだろうと質問する。


「うん。この液体?は多分普通じゃないけど魔力だと思う。でも触れるし魔力関係なしに肉眼で見れる」


 ハルがその液体に触れるとそれはその分だけへこみ、弾むようにしてゆっくりとハルから離れ、またゆっくりとハルの方に帰ってくる。


「あと、私の出す普通の魔力とは混ざらないけど、魔力操作で細かく動かすことはできる」


 液体が人型をとって、俺に手を振る。思わず手を振り返しかけてやめた。


「ふふっ。とりあえず魔法を使ってみるね。『崩壊』」


 ハルが操作したのだろう。液体は勢いよく飛んでいくと最寄りの木にくっつき、黒く染まった。


「あれは。崩壊でいいのか」


 崩壊は放置すればすぐに終わるのに対し、今使っている崩壊は終わることが無い。ハルが魔力を流し続けて操作しているようにも見えなかった。そして。


「はぁ⁉」


 思わず声を上げてしまうほどのことが起きた。

 崩壊の魔法を使った状態の液体がくっついていた木が、崩れ始めたのだ。本来の崩壊は木を削る威力はあっても崩し、飲み込むような威力は無い。


「おぉ」


 ハルが感嘆の声を上げながら魔力操作で液体を動かしていく。広がるように。

 黒く染まった液体に吸い込まれていく木は、どこからも出てくることが無く、それに応じて大きくなる液体に吸い込まれていく。

 あっという間にその木は頂上まで何も無くなり。


 パンッ


 ハルが手を叩く音と共にその液体は無色へと戻ったのだった。

 先程まで黒い魔力に覆われていた場所は。


「ちょっとやばすぎると思うんだが」


「まあ、こんなもんでしょ」


 木は跡形もなく地面は抉れ、そこには何一つ残っていなかったのだ。


「うん、大丈夫。次はおにいどうぞ」


 ハルはさっさとその魔力の液体を消すと場所を俺に譲る。


「ハルのを見た後だと俺のがしょぼく見える気がするんだが」


 そんなことをぼやきながら先程までハルが立っていたところへと向かう。


「宝具トウカの2番だったな」


 間違えても仕方がないのでしっかりとつぶやきながら指輪に魔力を通す。


「おー、おにいかっこいい」


 俺の体には魔力がまとわりついていた。ハルの魔力の液体とは違い、肉眼ではほとんど見えない。ぼんやり光っているかな? と、そんな程度だ。ただ覆われている本人にはしっかりと分かるようで。


「まるで鎧だな」


 俺にまとわりついた魔力は完全に硬質化しており、叩くとコンコンと音がする。それに。


「持っている武器も適応範囲か」


 刀を抜くとその刀もしっかりと硬質化した魔力を纏っているように見える。


「おにいー、切れ味は?」


「あー、試してみる」


 近くの木へと近づき全力で振るう。たったそれだけでその木は半分ほどまで断ち切られる。刀が触れていないところまで。

 下手に木を刀で斬ろうとすれば刀を曲げてしまう原因になりかねないので、刀は木を撫でる程度の距離で振った。それなのに刀は木の半分ほどまで木を断ち切っている。


「リーチが伸びたみたいだね。魔力の刃かな?」


 そのまま振った刀を見てみると刃こぼれは全くない。それどころか、刀に何かが触れた痕跡すら残っていなかった。いや、文字通り刀には何も触れていないのだろう。それだけこの魔力の硬質化は強いと。ただしかし。


「それだけだな」


 それだけ。それでも十分に良いものなのだがハルの液体魔力に比べるとどうしてもそれだけ。といった感じだ。まあ、これも運なのだから仕方がない。


「よーし、ハル。今日も森林で狩りするぞ」


「おー」


 それだけなのだったら諦めよう。俺たちは今日も狩りをする。


 さて、狙ったものではないが宝具を得た。となれば次は何をしようか。

 そんなことを頭の片隅にとどめながら、俺は刀を振るうのであった。


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