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地下室ダンジョン~貧乏兄妹は娯楽を求めて最強へ~  作者: 錆び匙
2章 貧乏兄妹は資金を求めて東京へ
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23.兄妹はダンジョン試験を受ける

「あ、おにい。当たったよ」


 パソコンを見ていたハルが唐突にその言葉を投げかけてくる。


「何がだ」


「ダンジョン探索免許の試験。これで受けられるよ」


「あぁ、やっとか」


 今現在4月5日。先日ついにダンジョンの一般公開がなされたところだ。ダンジョンの一般公開初日は特に事件もなく、重傷者も死者も出ることは無かったそうだ。数人が喧嘩をして警察に連れていかれたが武器を使ってはいけないということはしっかりモラルとして持っているようで、軽い素手での殴り合いだけだったらしい。

 そしてダンジョン探索免許の試験。人数が多いため会場の数と、ダンジョン探索をする人の数の調整から1日に試験を受けることができる人数は決まっているのだ。そして試験を受けられるかどうかはネットでの抽選で決まる。

 最初はかなりの倍率だったのだが、もう試験が始まって1週間が経つ。受験者数も減ってきて、抽選でも容易に当てることができるようだ。

 話によれば来週からは徐々にテストの頻度が減っていくらしい。週に1度にして月に1度にして。1年後には3ヶ月に1度まで減らすらしい。

 そして俺たちは今まで落ち続けていた抽選に見事に当たり、明日試験に行けるそうだ。毎度思うけどダンジョン関係の仕事が早い。抽選当たったら翌日って準備する時間もない。まあ勉強しておかなくても合格できる内容らしいから用意はいらないのだけれど。

 試験を受けると次の日には結果がネットで出されるのだ。そして専用の施設である各ダンジョンのダンジョンダムに隣接されたダンジョン探索者協会にて免許を発行してもらえるらしい。ちなみにダンジョン探索者協会は名前が長いためラノベ好きが言い出した結果か、巷ではギルドなんて呼ばれ方をしている。

 それはともかく試験だ。レベルアップでは現実の筋力にはそこまで差がないものの俺たちのように50レベル近くまで上げてしまえば別だ。

 明らかに身体機能に見合っていない力が出る。とはいえ手を抜いてしまったらその道のプロにはすぐにバレると思うので全力でやる。正直筆記の方の試験は心配していない。点数などは公開されないため、今まで筆記で落ちたであろう人がどれだけできなかったのかは分からない。

 だが。これでも年齢的には俺たちはまだ記憶力がしっかりとしている十代である。それに俺たち兄妹は授業を聞くだけで期末試験で平均を取れるぐらいには勉強ができていたので問題は無いだろうと考えているのだ。

 というわけで用意するものはない。しいて言えば筆記用具とお金と自分の証明になるものぐらいだろうか。ということで明日のために英気を養おうと今日のダンジョン探索は中止にしてゆっくりと家で休んだのだった。



「~であるからして、ここは~」


「なんか政府の考えがー、みたいな内容が多いね」


 俺たちは午前中の講義を聞きながら、小声で話している。最初に普通の声でハルが俺に話しかけ、周りの人たちに睨まれたのだから仕方がない。

 俺たちは結局前日には何もせずに当日に早起きし大して無い準備をしてから会場に来たのだ。自転車で。とはいっても会場はそこら中にあるので、最初に武器を買った時の買い物に比べたら片道は短かった。っとこのままだとハルを無視することになる。


「とは言ってもそんな内容が筆記試験に出るだろうからしっかり聞いておけよ」


「うーん。うん」


 ハルは気の抜けた返事をしながらもだらっとした体勢を直し再び前を向く。確かに政府の考えが多いし、俺たちがダンジョンで調べて知っていることも多いが知らないこともあり驚かされた。後から思い出してみれば確かにそんなこともあったかもしれないと思うようなことばっかりだ。並べてみたら。


 ・5人以上で意図的に進むと経験値の分配に支障が出ること(4人までなら問題ない)。

 ・ボスはボスのいる階層のレベルの2倍が4人で戦うのに丁度良いこと。

 ・ダンジョン内で誰の目にも止まらないところに物を置いておくといつの間にか消えてしまうこと(ボス部屋では人が出て扉が閉まった時点ですべて部屋の中に置いたものはなくなるらしい)。

 ・5階層までは経験値効率が良いが何も成果が得られないこと。

 ・モンスターは基本的に知能が低くゲームのようにヘイト管理ができること。


 そして

 ・5階層のボスを倒すと自分のステータスが確認できるスキルである自己鑑定が手に入ること。


 これに関しては驚いたじゃすまされない。2人そろって声を上げてしまい、周りの人どころか教師にまで睨まれた。だって自分たちボス戦後の疲労でドロップなんて見ずに帰っちゃったし。だから俺たちは簡単には自分のステータスを見ることすらできないのだ。

 さらには


 ダンジョン内での火薬や電気の使用が不可能と言われていたが、正確には大量の魔力を奪われるだけらしい。厳密にいえばピストル1発で20ぐらい。技能が魔法系統の人がレベルを10上げてやっと一発撃てる程度ということだ。確かにそれは効率が悪すぎて使えない。ハルでさえ6発しか撃てないのだから。

 まぁ確かにそれならクロスボウの方が使えるから銃はお役御免だよな。リロードに時間がかかりすぎるが圧縮空気式の銃は平気なようだが、いらないだろうな。ロマン求めて死んでいたら元も子もないし。

 と、色々と話がされ、講義が終わる。1コマのみの100分授業。危うく意識が飛ぶところだった。頑張って最後まで聞いたがな。


 そしてとくにすることもなく勉強しながらだらっと過ごし、家から持ってきたお弁当を昼ご飯に食べ、とうとう午後の試験が始まった。

 始まったのだが驚くほどに何もなかった。筆記試験は簡単なうえに内容も薄いため制限時間60分の簡単なテスト。その後にあった実技テストのマラソンのようなものもいつものダンジョン探索でペース管理なんて慣れているため簡単だった。

 しかもダンジョンで育ったステータスのおかげで俺たちは群を抜いて速く走ることができたのだ。休憩の取り方はよく分からなかったが、いつの間にか俺たちを抜かしていた大学生4人組の休憩の仕方を真似してみるとすんなりと疲労が抜けていくような気がした。

 これで次も走れる。そんなことを考えている間に大学生集団は走っていってしまった。ちなみに走るペースが俺たちよりも速い人は1グループだけだった。噂によると大学生で大学でマラソンをしているらしい。ちなみに俺は意識的にパッシブの加速を使わないように頑張った。

 そして家に帰ったのだが。まあ、当然のごとく受かるわけで。明日はギルドに行こー、なんて話をしながら夕食を取ったのだった。


 そして待ちに待った免許の受け取り。思っていたよりも手続きが多くて大変だった。免許で得た権利で犯罪を起こしたときに、通常より重い判決を受けることになるだとか様々なことを念入りに言われた。中での事故には関与しないことなどもそこにはあった。

 ダンジョン内で事件があった場合には全力で調査するが、喧嘩1つ1つに関わり、モンスターによる被害にも手を出していたら限りが無いということだそうだ。

 そして免許を持つことにより正式な探索者として活動ができるようになること。この免許証を持っていることでダンジョン用に大量生産された武器が買えるようになるのだからその日はすぐに武器を買いに行こうという話をする。


「で、おにい。武器買いに行こ」


 ハルは面倒な手続きが終了し、さらには初めてまともな武器を持てるということでご機嫌そうだ。そして武器を選ぶならば行かなければいけないところがある。


「じゃあ、ギルドの武器体験場に行こう」


 俺たちは新たな希望と期待を胸に抱き、様々な武器が眠るその会場へと足を延ばすのだった。


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