108.兄妹は嘘としか思えない情報を手に入れる
新作、『“ぼっち”な迷宮製作論』(仮題)を投稿しています。
地下室ダンジョンとも絡めていますので、興味が湧いた方は是非そちらも
見に来ていただけると幸いです。
「さてと、手が治ったのは良かったんだが。ハル、俺に『看破』を使ってみてくれ」
ハルが機嫌を直した後、俺は口を開いた。
「ん? 分かった。『看破』」
首を傾げながら俺に看破を使ったハルは目を丸くし、やはり首を傾ける。
「解放1って何? 開示情報は?」
俺のステータスは進化の水を使う前と比べ大きく変化していた
名前 :トウカ
技能 :付与・錬金
魔属性 :無・呪
レベル:90(解放1)
強度 :144
魔量 :203
スキル:隠密・座標・物質認知・支配・ショートカット・
魔法 :スピード・パワー・ガード・バインド・チェイン・スロー・ロス・アンプロテクト・カース・封魔・セーフゾーン
パッシブ:把握・加速・錬金
開示情報:1番 神の祝福
「開示情報。ん? なんだこれ」
ハルの言った開示情報の言葉になぜか既視感を覚え、繰り返すと目の前に見覚えのない文字列が浮かびあがる。
手を伸ばし、浮かぶ文字に触れようとするが、その文字には触れることができず、手はそのまま文字を貫通した。
「ハル、この文字見えるか?」
「ん-? 私にはおにいが虚空を見つめてるように見える」
「まじかよ」
空中に書かれた文字は『1番 逃走』とある。これだけかと思っているとその文字の下に、小さな文字が次々と現れ、並び、文を作り出す。
「なんて書いてあるの?」
ハルは俺の周りをぐるぐると歩き回りながらなんとか文字を見ようとしている。が、見えないようだ。
「じゃあ、読むな。一応メモを取ってくれると助かる。
「りょーかい」
1番 神の祝福
この世界にはいくつもの迷宮が蔓延っていた。悪しきものたちは迷宮を作り、いつの日か地上に侵略し、手に入れようと画策している。
私は地上の皆を守らなければいけない。手遅れになる前に、なんとしてでも。それでも、信仰を失った私のできることは限られている。
力を取り戻す方法が必要だ。私も迷宮を作ろう。いつの日か、地上を守る勇者を育てるために、そのためならば私は、悪しきもののもとまで身を落とそう。
以前いた、30人の仲間たちは悪しきものに捕らわれ、記憶を奪われた。地上を守る使命を忘れ、迷宮を作る悪しきものの駒にされている。
まずは仲間を助けよう。30の仲間たちを。
もし、これを読んだ人がいるならば。もし、これを読んだ人が勇者となってくれるなら。力を蓄えてほしい。
私の仲間を直接救うことは難しい。まずは悪しきものの迷宮を削らなければいけない。
勇気あるものたちよ、どうか忘れないでほしい。
私たちが望む限り、神は祝福を与え続ける、と。
「……ハル、今ダンジョンって何個ある?」
「何個だっけ。3桁は軽くあったよ」
「どう思う」
「嘘だと思う」
「だよなぁ」
俺が読んだ文章が本当にその通りなら、この文章の筆者の仲間が残り30人。残りのダンジョンはみんな敵対するものたちだということ。
「ダンジョンの形が違うとはいえ、出てくるモンスターもドロップするものも同じなのに、敵対? 作ってる人が違う? そんなわけないだろ」
「だよねー。地上を守るとかあったけど、この前のスタンピードのとき普通にこのダンジョンもモンスター登ってきてたよ」
「地上守る気ないよな。それどころか攻撃してるよな」
俺はパソコンを開き、念のため以前世界中で起きたスタンピードでモンスターが出てこようとしなかったダンジョンがあるかを調べる。
「無いよな。どこもかしこも守りきれたかどうかだけだ。情報を出してないところがたくさんあるとはいえ、少なくともモンスターが出てこようとしなかったと発信しているダンジョンはない」
「ということは、嘘情報?」
「だと思うんだが、そんな変な嘘をこうわざわざやるか?」
もし、これが本当に嘘だというのならば、このダンジョンを作ったものはよほど人を困らせるのが好きなのだろう。
「というか、スタンピードが起きたダンジョンからこのメッセージ? を見つけてる時点でおかしいよね。それか、これを作った人はここではないどこかを地上って言ってるってこととか?」
「だとしたら、迷宮を作って地上に侵略ってのもおかしいよな。ここが地上じゃないなら、ここにダンジョンの入り口を作る意味がない」
「だよねー」
ハルもあり得ないと思いながら言った案だったらしく、そのまま床にぐでっと倒れこむ。
「毎回のことだけど、考えても分からないね」
「今回は格別に分からないな。仮説すらも立てられてないし。あー分からん」
俺も倒れたハルのお腹を枕にするようにして寝転がる。
「あとで、調べとく。解放1ってのも誰かが情報を出してるかもしれないからな」
「もしかしたら。私達がまだ届いてないレベルで制限があるのかもね」
「かもな。俺、少し寝る。頭が疲れた」
「私もー、っておにいどいて。寝ないで」
ハルはお腹に乗せられた俺の頭をバシバシと叩く。
「おやすみー」
ハルの声と、頭に受ける軽い衝撃を感じながら、俺はゆっくりと瞼を閉じるのだった。
勿論そのまま寝られるはずも無く、しばらくハルとじゃれた後は完全に目が覚めてしまい、普通に家事に取り掛かるのであった。それとハルは寝た。
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次作『“ぼっち”な迷宮製作論』連載中です。
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