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自責の念



 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 私と和歌は、旧トンネル内の瓦礫と天井の僅かな隙間に隠れていました。かび臭いような妙な匂いは仕方ないです。この旧トンネル内にどんな生き物や微生物が潜んでいるかは分かりません。生きる為に旧トンネルに登り、隠れる事を決意しました。


太った青年「どこ行きやがったー!!あいつらはー!!!出て来いよ!!!俺と勝負だー!!女連れやがって!!偉そうに!!絶対に俺はお前を許さない!!心から許さないからな!!!」


 背中を突き刺されて死んだ青年を蹴り飛ばし、広場で大声で叫ぶ太った青年。

 私達をそこら中で探しています。

 トンネル内から広場の様子を見る事が出来ました。相手の仲間割れも確認できました。


柴田「あいつさっき、フェンス側に居た味方を殺した・・・・とんでもないことしやがった。・・・狂ってるよ。・・・暫くここに居よう、その方が安全かもしれない。」

 和歌はトンネルの中で目を塞いでいました。とてつもない恐怖だったに違いありません。


柴田「自殺志願者を殺すという事を、常日頃からやっているような事をさっき言ってたよな。それがまかり通るなんて・・・なんて世の中なんだ・・・・・・信じられらないよ俺は・・・・。」


 愕然としました。そのような職業を勝手に作って、それを自分達で選んで商売をして、飯を食っているなんて。彼らは死神にでもなったつもりでしょうか。世も末・・・・もう、そのものでした。


柴田「・・・なぁ和歌・・・・ごめんな・・・・」

和歌「・・・・・・・・・・・・・・」

柴田「実は俺が和歌を誘ったんだ、修治伝いで・・・・断れないよな、修治の誘いには。本当にこんな目に遭わせてしまって申し訳ない思いでいっぱいだ・・・。ごめんよ和歌・・・・本当に・・・・・」

 息が詰まってしまいました。


 私が和歌の名前を出して呼ばなければ良かったんです。彼女を酷い目に遭わせてしまったのは私、柴田英一郎です。呼ばなければ今頃フカフカのベッドで和歌は抱き枕か何かを抱いて寝ていて、もしかしたら飼っている猫と一緒に誰にも邪魔されず、スヤスヤ寝ている頃かもしれない。何事も無い一日を送ってゆっくり過ごしていた筈なんです。私は和歌の安息を・・・平和な日々を乱した悪い人間なんです。私は和歌が好きです。愛しています。顧問と和歌の秘め事を聞いた後もその思いは変わらないです。これはきっと真実の愛なんです。彼女は何かの恐怖に怯えながら、自分が変な人間だと思われないかと、汚い女性だと思われるのではないかと、必死に真っすぐな勇気を持って、私のような人間に話してくれた人なんです。嫌いになんかなるもんですか。絶対に誰にも言いたくない秘め事を彼女は言ってくれた。顧問と性行為をしている所までは私に見せる気は無かったと言っていましたが、墓まで持って行くような超極秘な秘密を私に惜しげもなく語ってくれたとてつもなく勇気がある女性なんです。私には和歌の真似は到底出来ません。そんな勇ましい女性、他に居ますか?絶対に居ないでしょう。高校時代のひと夏の思い出で、どうせ大人になればいつか別れるのに、所謂恋人がいるという自分のステータス作りや遊びのような恋愛、たった一年だけ付き合い、その後案の定別れてしまった自分の人生にとってどうでもいい男、そんなクソの極みのような人間に対してそんな秘密を言うわけがないでしょう?罪深い人間だ。自分はここで死んだとしても、絶対に和歌だけは必ず守りたいんです。こんな話をしてくれた大きな価値がある人間をこんな所で死なせるわけにはいかないんです。こんな小汚い、誰も手入れや保守にも入っていないような心霊スポットか自殺スポットとか周りから囃し立てられていて、そんなことは私は詳しく知りませんが、こんな汚らわしい場所で死んで頂いては困るんです。そんな立派な和歌と少なくとも一年でも恋人らしい生活を送れたことは誇りです。ただ今守れる保障も無く、こんな場所に一緒に居る事が罪なんだ。

 私は尊敬する彼女に対してとてつもない罪を犯してしまいました。

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