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和歌


 修治は俺達にそう話した後、奥の方へ歩いていきました。

 修治の後を、早川がゆっくりと追いかけました。


 残された私達はここで暫く休憩する事にしました。

 リュウと乃蒼、私と和歌。 それぞれ離れて休憩する事にしました。

 ここに来てようやく落ち着くことが出来ました。


 持ってきていたペットボトルの水を飲み、話し始める私と和歌。


和歌「・・・修治って弟居たんだね」

柴田「いやほんとに俺も知らなかったよ、兄弟が居たなんて初めて聞いた」

 和歌も弟については初耳だった様子でした。


和歌「そうか。ここで弟君死んじゃったんだね・・・・そっか・・・・そういうことだったのか・・・」

柴田「その話を聞いて俺も残念だった。俺もさっき初めて聞いたんだけどさ。もしかしたら蛇頭ヶ丘に俺らを誘ったのって・・・・弟が亡くなった場所を確認する為だったのかな?・・・」


 和歌も私も悲しい気持ちで一杯でした。修治はいい奴なんです。確かに悪い事はしますが、実は誰よりも年下の俺達思いなんです。頭も良いんです。それはわかっています。弟が亡くなった時に彼をフォローする人間は居なかったのでしょうか。高校生は一般的に大人に見られる事が多いですが、誰も彼の心を支えてやれなかったんだと思うと、本当にやりきれない思いになります。その時私が近くに居れば修治をそんな気持ちには絶対にさせなかったのに・・・・・。修治を登校拒否に追い込むような精神状態には絶対にさせませんでした。


和歌「・・・・話を変えようか。話を変えても、結局暗い話になっちゃうのがとても残念なんだけど・・・・・えいちゃん・・・さっきは大丈夫だった?・・・・あの霧の中でさ・・・」

柴田「霧の中・・・・・ああ・・・・・」

 一瞬忘れかけていた声を再び思い出しました。

柴田「耳から声が聞こえて来て・・・・・いやわからない・・・・俺の心の中なのかもしれないけど・・・・・・・。   

 何故ここに来たとか、死にに来たのかとか、ここで死んだ人間達が俺に声をかけてきたような状態になったんだよ。・・・・・和歌は大丈夫だった?」

和歌「私が聞こえたのは最初だけで、その後は大丈夫だった。霧で前が見えなくなったのは少し怖かったけどさ。・・・そうだったんだ、それは怖いね。」

 今の和歌の話だと、どうやらこの私達のグループでは私と乃蒼にしかその霧の中の声は聞こえてなかった様子でした。

 和歌はただただ恐怖を感じていた私の事がとても心配だったそうです。


柴田「あの・・・隣に・・・・和歌が居てくれて本当に助かったよ・・・抜け出せなくなっていたかもしれない・・・・・。本当にありがとう・・・・・。」

 和歌はそっと私の腕に抱きつきました。

和歌「私も・・・・凄い心配だったけど、えいちゃんがあんな事になっちゃったからどうにかしてあげないとって・・・・その気持ちで一杯だったんだよ」

 私と和歌は目を合わせました。


 そのまま私達は何年かぶりにキスをしました。


 和歌は私が知っているあの時と変わらない和歌のままで居てくれたようでした。

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