良い人間とは
教頭のきつい一言がリュウの心に刺さります。イチイチ刺さります。
実際は教頭の予想通り、兄の入れ知恵でした。
学力がイマイチなのであれば面接がカギになると兄から話を聞いた為、必死で特訓したのです。自分が変わらないと・・・必死で良い人間になろうと努力して、良い人間を自分の中に作り上げてきたのです。
実家は居酒屋・・・サービス業を営む両親の言葉を真似して自分の物にして、当たり障りない言葉をお客さんに話す事が出来るように努力をしてきました。
でもそれだけではこの試練は乗り越える事は出来ない。
『この人間の将来を想像できる』、そして『この人間の目標を叶えさせてあげることが出来る』、そういう風に学校側に思わせる事が出来れば、学力は多少他の同級生より低くても入学はきっとできる筈だ。そう自分に言い聞かせて、ひた向きに兄と比べて劣勢である自分を鼓舞してきたのです。
目標が高い低いじゃない、人生は人一人に対して一回しかない。価値観で高いか低いかを決めるものではない。どんな目標であっても、それはその人間にとってどう考えても尊いものなのです。
リュウ「決して口だけではありません。今回、物凄く反省しているんです、僕自身。どうなるか、少し先の事を考えれば分かる事を俺は・・・・その場が楽しければいいという気持ちだけで行ってしまいました。これが自分の正直な気持ちです。」
教頭「将来の経営者の立場として考えた時、その考え方は非常に困りますね。・・・楽しければいいと言いましたか?あなたのご両親はその場の楽しみや快楽に流されることは決して無いと思いますよ。その辺りはどのように考えているのですか?一度嘘をついた人間がまた面接のようにその場凌ぎの言葉で逃げようとする、そういう人間の事を私は許しませんよ。お父さんお母さんに話す時間を作って貰って、先ずはしっかり謝りなさい。貴方がそのような考え方ではお店を守る事が出来ない。もう十八歳。甘い考えを捨てなさい。貴方の代で貴方も従業員も食いっぱぐれますよ。両親やお兄さんの影にいつまでも隠れていてはいけません。この学校の最新の教育を受けた、一番若い貴方が先頭に立たないといけなくなる時代が来るんですよ。・・・・という部分を重く捉えて、申し訳ないですが貴方には厳しく言います」
リュウの父親はまともに学校を行っていたわけではありませんでした。なので、自分の子ども二人にはしっかりとした教育を受けて欲しい。その思いが強く、有名進学校である龍ヶ丘高校を目指すように中学生の頃に薦められました。自分の店の跡を継いでほしいとかそのような事はこれまで一度も言われた事がありませんでした。
祖父から無理矢理跡を継がされた自分のような生き方は送って欲しくなかったのです。他にやりたい事がありましたが、親に反発できなかった自分のようになって欲しくないという思いが人一倍強かったです。
これは私が大学生になり、リュウのお店にご飯を食べに行った時、リュウの父親が言っていた話です。
これがリュウの龍ヶ丘高校の入学理由でした。
リュウ「・・・・・・・・」
やべぇ・・・・・教頭・・・・俺のことを相当調べて来てる・・・・入学試験の面接の話を持ってこられるとは思いもしなかった・・・・・・・・。
教頭「学業成績は、二年時の一学期の8組を最後に9組で固定。馬鹿なままで経営が出来ると思いますか?中学の時頑張った貯金だけでここまでやってきたという典型的なタイプですね。貴方の為を思って厳しい制裁を与える事にしますので、受け止める心構えだけお願いします」
見透かされた・・・・教頭に完全に見透かされた・・・・。
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