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第86話 対ソ戦、ウラジオストク太平洋艦隊戦

 舞鶴鎮守府に停泊中の第三艦隊司令官、南雲忠一中将は作戦開始命令を今か今かと待ちわびていた。

 満蒙では一足早く、陸軍が華々しい戦果を上げており、海軍としても遣欧艦隊以上の働きを見せて国内外にその存在を誇示したいところだ。


「南雲司令、軍令部より暗号電です」

「おう!」

何人もの幕僚が居並ぶ中、南雲は情報将校に渡された解読済み電文書を目で追い、隣で控えていた草鹿参謀長に渡す。草鹿参謀長も電文の内容を確認し、全艦隊に作戦開始が下令された。


 南雲中将の座上艦、伊勢を旗艦とする日本海軍第三艦隊は、戦艦4隻、重巡洋艦6隻を中心とする砲打撃部隊および空母赤城、加賀を中心とする航空戦部隊からなり一路、日本海対岸ウラジオストク沖に向けて出港した。海上からウラジオストク要塞および軍港、そして停泊中の艦船に砲撃を加え、ソビエト太平洋艦隊を殲滅させ陸上からの占領を容易にする作戦である。また、それを阻止しようと飛来するであろうソビエト軍航空機を、航空戦部隊で損滅させることも望まれている。


◇     ◇     ◇     ◇     ◇


 作戦に先立って、日本海軍はウラジオストク周辺のシコトヴォやナホトカなどの軍事都市や支援港を攻撃し、ウラジオストク攻撃の際に脇から反撃される憂いを取り除くことにした……もちろんソビエト海軍も黙って見ているはずもなく機雷を敷設し、港を砲撃できる位置まで接近できないようにしたり、さらには日本の掃海作業の妨害を画策してきた。


 しかし双方の海軍力を比べれば第三艦隊のほうが圧倒的に強力であり、作業は着実に進んでいった……それでも、ウラジオストク攻撃まではまだ、かなり期間を必要とすることになった。


 その間ソビエト海軍は潜水艦による機雷の追加敷設(ソビエトには敵制海権下で機雷敷設を行うためのL型という機雷敷設潜水艦があり、魚雷の他に外殻部に機雷20個を装備している)や日本の物資輸送船、あるいは第三艦隊艦船に直接、雷撃を仕掛けようとしてくることもあった。もちろん、日本海軍には天海や鶚といった優秀な対潜哨戒機、哨戒機母艦千歳、潜水母艦長鯨を中心とする対潜水艦部隊があるため、損害を与えることは難しく、徐々に潜水艦の数を減らす以外の効果はなかった。


「くそ、ヤポンスキーめ。ソビエト潜水艦隊の真の恐ろしさを見せてやるぞ!」

ウラジオストクのソビエト太平洋艦隊司令部は、このままでは対抗できる戦力を維持するのが難しくなり、やがて機雷網の撤去と共に、日本艦艇の砲撃により港内の全ての艦船が撃沈されてしまう可能性を憂慮し、洋上での戦闘を行うことにした。


◇     ◇     ◇     ◇     ◇


 とはいってもソビエト太平洋艦隊の水上戦力は巡洋艦2隻、駆逐艦11隻で、その内の軽巡洋艦ラーザリ・カガノーヴィチは主機関を他艦に提供してウラジオストクに曳航されて配備されたまま未完成の状態だった。ソ連海軍も、この状態で水上艦同士の戦闘決戦を企てるほど無謀ではなく、主に潜水艦による集団雷撃戦、いわゆる群狼作戦(ウルフパック)を行うことにした。本来のウルフパックは偵察機情報により敵船団の進行方向を予測し、複数の潜水艦による待ち伏せを行うものであり、包囲殲滅ではなく波状攻撃を主とするものであったが、現在、敵はウラジオストク沖合で遊弋している状態なので単純に残存潜水艦で取り囲み四方から魚雷を浴びせかけて、敵が反撃する前に離脱しようという作戦になった。


 しかし、この当時のソビエト軍の魚雷は、日本海軍の九三式酸素魚雷のように数十キロを長駆疾走するものではなく、せいぜい1000m程度の射程のため日本艦隊を取り囲んで雷撃を加えるにしても、かなり近づなければならないという問題があった。そしてそれは当然のごとく第三艦隊の対潜警戒網に引っかかることになった。


「水中戦指揮所より『複数の敵潜水艦の接近を探知、対潜水艦戦闘の開始』が具申されています」

「よし、向こうからお出でなすったか。対潜水艦戦闘部隊に指令『これより対潜水艦戦闘を開始す。水雷戦隊は対潜防衛戦、潜水艦隊は対潜戦闘戦を開始せよ』」

 駆逐艦睦月、神風等を中心にした対潜防衛戦部隊は爆雷により敵潜水艦の行動を牽制する動きに入り、他の水雷戦隊は伊勢の水中戦指揮所からの発令に合わせて対潜誘導魚雷を発射する。各艦から放たれた魚雷は数発づつだが、合計で40発以上にも及ぶ魚雷が水中戦指揮所からの司令に合わせて、発見された敵潜水艦に向かって水中を疾駆していく。


◇     ◇     ◇     ◇     ◇


「何だ?! 敵艦からの魚雷がこっちに向かってくるぞ」

「バカらしい! 適当にぶっ放した魚雷が潜水艦に当たるはずがない。急速潜航でやり過ごせ」

ソビエト潜水艦は急速潜航により深い位置まで逃げるが日本の音響誘導魚雷は、そのスクリュー音を追尾し、潜水艦の艦尾に何度も襲いかかる……さすがにピンポイントで一撃必中を狙えるほどの能力は有していなかったが一度外れても、また軌道修正され追尾攻撃が繰り返された結果、ついに命中弾を得る。そして一発の命中はそれ以上の回避行動を不能にし、水中戦指揮所からのコマンド投入により指定座標めがけて呼び寄せられた残存魚雷が集中攻撃となってとどめを刺していく。

ドウンッ! ドガン! ドドンッ!!

腹に響くような爆発音が重なって起こり、多くの破断片と油が海中に広がっていく……やがて、別の箇所でも同様なことが繰り返され、艦隊近傍では敵潜水艦の影は無くなっていった。


 もはやソビエト潜水艦群は第三艦隊水上艦の攻撃どころではなく、水中を逃げ惑いながら食らいつく対潜誘導魚雷との追跡劇を強いられていた……そこへ本隊から遠く離れて展開していた日本海軍潜水艦群が、離脱しようと敵潜が急ぐ戦場へ舞い戻ってきた。

 水上艦内の水中戦闘指揮所からでは、遠い位置にいる敵潜水艦を詰将棋のように先を予想しながら追い込んでいくようなものだが、潜水艦からは、まさに目の前の獲物への攻撃となる。これは弓矢での狙い撃ちか長槍での突きのような直接的なものだ。しかも日本海軍の潜水艦は遠くから戦場を囲い込むように到着したため敵潜水艦が逃げようとする前方を押さえて攻撃することができた。いかに複雑な三次元機動を行おうとも、魚雷の速度は余裕で潜水艦を捉えることができる。目の前の目標に合わせて修正コマンドを逐次受けながら操作された魚雷は苦もなく敵潜水艦を屠っていった。


「水中戦闘指揮所より艦隊司令部へ、感知した敵潜水艦はすべて撃沈した模様。現在、当海域に敵潜水艦の感ナシ」


◇     ◇     ◇     ◇     ◇


 ウラジオストクのソビエト太平洋艦隊の主力であった潜水艦部隊が一掃された後の戦いは単なる作業のようなものだった。港外の機雷を撤去し、たまに現れるソ連空軍機を追い散らし制空権を確保すると、戦艦や重巡洋艦の主砲による釣瓶撃ちにより残存ソ連水上艦艇を港内の鉄屑とした。さらにウラジオストク要塞の地上構築物を片端から潰していくとたまらずウラジオストク、ソビエト軍司令部は降伏を申し入れ、ほぼ1ヶ月余りで第二軍の外満州(沿海州)および東シベリアの三つの攻撃目標の一つは、味方の損害がぼほ無しの状態で陥落させることができた。




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