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第28話 水晶の夜を阻止せよ、その2

 というわけで、ポーランド政府の関係者と連絡を取りたいのだが、これが困ったことにまったく見つからない。いや、日本政府を通すならあるけれど、それをやったらドイツのユダヤ人問題にちょっかいを出そうとしているのがバレてしまう……いろいろ知らべていたら意外な人たちが出てきた。


「ポーランド・シベリア孤児救済?」

「そう。今から15年ほど前、ポーランド独立戦争の時、シベリアにいた多くのポーランド孤児が危機に瀕した際、日本が救いの手を差し伸べて800名以上のポーランド人が日本経由で帰国することが出来た人たちがいるの」

へぇ、そんな事があったのか。さっそくオレたちは、そのポーランドシベリア孤児の人に会ってみようとポーランドに行くことにした。前にロスチャイルドの人と会った時のように、テンちゃんが霧島さんになってオレはハクちゃんに憑依する。自分の身体でないところがちょっと変な感じだけど、一瞬でヨーロッパに来ることができるのは、とっても便利だ。


「せっかくはるばる日本からいらして頂いて残念ですが、いまのポーランドは国による企業経営への直接介入が行われていて、気安く外国の人が工場を作れる状況ではないのです……」

話を聞いてみると、ポーランドはなかなか難しい状況になってしまっているようだ。


 うーん、国家統制経済か。

「でも、外国人はダメでも、ポーランド人が工場を作ろうとするのは大丈夫ですよね?」

霧島さんがそう聞いてみると

「いえ……そもそも景気が悪くて、政府以外でそんなことを考える人がいませんし、資金を調達しようにも銀行は政府系しかない状態ですので」

と言われてしまった。


これって経済が詰んでいる状態じゃあ……予想以上に厳しいな

「そうですか……だれか、他に話を聞いてもらえそうな人は知りませんか? 例えば日本人に好意的な人とか」

結局、日本に行ったことのある神父様がいるという事で、その人から別の人を紹介してもらおうということになった。


「こんにちは、私はマキシミリアノ・コルベと言います。しばらく日本の長崎にいたので日本の方はとても懐かしい気がします。それで、日本の方が私にどのような御用でしょうか?」

「はい、神父様。実は私たち、ポーランドでたくさんの人が働ける場所を作りたいのです。どなたか協力してくれる方を紹介して頂ければと思ってこちらに参りました」

オレたちは、ちょっとぼかした感じでやりたいことを伝えた。


「働ける場所? 作業所とかですか? もう少し詳しく教えていただけますか?」

コルベ神父は、若干困惑しながらも話を聞こうとしてくれる。でも、ちょっと話の方向が変わってしまった? まあ、工場でなくても人が働けるなら、っていうか難民の人を保護できるならそれでいいのか……いっそのこと難民の話をしてみようか? その方が神父様には実感が湧きそうだ。そう霧島さんと念話を交わしながら話をすすめる。


「実は……信じてもらえないかもしれないのですが、一年ほど後に、ポーランド国境で多くの難民が行き場所もなく苦しむことになるのです。その人々を救うために会社という形で雇い入れ、生活させることが出来ないかと考えているのですが……」

他の人に話しても信じてもらえそうもないけど、神父様ならこちらのほうが分かりやすいだろう。いきなり難民の話をされても困るかもしれないけれど……


「難民? それは、あなた方が啓示を受けられたのですか……分かりました、どうぞ御心がこの地でも正しく行われますように……協力させていただきます」

えっ、こんなにあっさり受け入れてくれるとは思っていなかった。

「よろしいのですか?」

思わずそんな言葉が口から出ていた。


「ええ。それより、よろしければ話をもっと詳しく教えていただけますか? その方が協力しやすくなりますし、よいやり方を見つけられるかもしれません」

……なんというか、本当に疑うという事をしないのだろうか? 他人のことながら心配になる……神父様、そんなことでは悪い男に騙されちゃったりしますよ?


「ドイツに住んでいたポーランド国籍のユダヤ人の方が追い立てられる……そうですか。神様の啓示ではなかったのですね。でも沢山の方が困っているのを助けるのは御心にかなったことです」

神父様は本当のことを聞いても、否とは言わず協力してくれるそうだ。ありがたい。後は、どうやって国境を越えさせるかだな。難民の人たちは、もともとポーランド国籍を持っているから国に入れさえすれば特に問題はないはずだけど……オレたちは話し合った結果、やはり工場を作って荷物の運送トラックに便乗して入国してもらうのがよさそうだという結論に達した。


「工場を作るためには、政府の許可が必要です。知り合いに首相の部下だった軍人の方がいるのでその人に聞いてみましょう……いえ軍人といっても、とても慈善心に溢れた方ですので」

そう言って神父様はジェイコブ氏を紹介してきた。


「こんにちは、ジェイコブ・ウォズニアックです。あなたですか、コルベさんの言っていた外国の事業家とは。ええ、ポーランドでは現在海外資本の工場は、ほぼありませんね。何年か前にはものすごく多かったのですが、世界恐慌で潮が引くようにいなくなって、生産設備も引き上げられてしまったおかげでポーランド経済は立ち直る力が残されませんでした。その結果、今は国が主導して経済再建の真っ最中でして……計画以外の投資はされていません」

ジェイコブ氏は今のポーランドの至った状況を詳しく教えてくれた。それにしてもこの人は軍人といっていたが、かなり経済関係に明るいようだ。

「ご説明ありがとうございます。失礼ですが随分お詳しいようですね……軍の方のようですが」

「ああ、ポーランドではずっと軍が政府を運営していましたからね『大佐政府』などと揶揄されていましたが……私も前ピウスツキ元帥の時代には経済を担当していました。今では軍の地域守備隊の指揮官ですが……でも、幸いなことに軍の指揮下なら設備投資が出来ます。ぜひ私の管理下の地域に工場を作って下さい。そうすれば仕事のない人を少しでも減らすことが出来ます。国境の通行許可証も発行できますから」


守備隊の指揮官と言うより、地方行政の担当者のような考え方の人だ……ありがたい。これでとりあえず、工場を作ることはできそうだ。



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