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第27話 水晶の夜を阻止せよ、その1

 ロスチャイルド家のルーシーさんとの会談の結果をみんなに伝えて、今後の対策を考えるために話し合いを開いた。

「というわけで、『水晶の夜』事件を防げたらロスチャイルド家と取引ができそうなのだけど……」

テンちゃんの説明に対して、

「その『水晶の夜』って、どんな事件です?」

と華子さんが尋ねる。


それに対してオレが『水晶の夜』事件の概略を話す。

「『水晶の夜』というのは来年起こるはずのドイツ国内での大規模なユダヤ人に対する暴動で、もともとの原因はその10月にドイツで出されたポーランド国籍を持つユダヤ人の国外退去命令で、あまりに多くの人がポーランドを目指して移動したためポーランド政府が受け入れを拒否し、結果ドイツ・ポーランド国境で行き場をなくした難民が悲惨な状況に置かれてしまった。その状況を難民の家族のフランス留学中の青年が聞いて激怒し、在仏・ドイツ大使館の一等書記官を射殺したので、今度はそのニュースを聞いたドイツ市民が報復としてユダヤ人に対して暴動を起こしたと言われているけれど、実際は裏でゲッペルス、あるいはハイドリヒがナチス党突撃隊に指示して行わせた言われている。宵闇の中で砕けた窓ガラスが水晶のように飛び散っていたことから、こう名付けられたそうだ」


「……随分、詩的なセンスをお持ちの方なんですね。そう名付けた人は」

華子さんがそんな感想を言った。

「……ゲッべルスだそうです」

オレはコメントのしようがなく、名前だけを教えると

「……冷酷さ加減が、なるほどと思わせるところがありますね」

と言葉を追加した。


そんなやり取りをぶった切って、ハクちゃんが意見を述べる。

「フランスで銃撃事件を起こさないようにさせるのは、それほど大変じゃないと思うけど、出来たらポーランド国境の難民を何とかしたい……でも難民の数は1万7千人と言われている。我々の工場で雇えるのは幾ら多くても1000人くらいだ。家族として考えても4000人くらいで、大体1/4にしかならない」


「やっぱり、他国の問題をオレたちがどうにかするのは難しいんじゃないかな……」

オレの意見に対し、

「そうね。ロスチャイルド家くらいになれば出来るかもしれないけれど……なんでこんな難しい問題を私たちに振るのよアイツら。自分で何とかすればいいのに」

テンちゃんがそう反応する。オレたちよりはよっぽど何とかできそうなのは確かだけど、彼らにもなにか事情があるのかもしれない……動くに動けないとか。

そんなオレの考えを読み取ったのか、

「やっぱり、『ロンドンを火の海にするぞ』くらいの脅しをかけないと動きませんかねジョンブルは」

……華子さん、貴女が言うと本当にやりそうで怖い。

「まあ、我々がどこまで出来るか試しているんでしょう……組むに値する存在か」

オレは自分で口にしながら……これは失敗したら、話す価値もないってことかと意味を噛みしめた。何か日本自体が下に見られた気がして嫌な気がした。

「マジで舐められたもんね……やってやろうじゃないの!」

テンちゃんが本気だ……ひょっとして念話で話していると感情も伝搬するのか!?


 結局、ポーランド政府にうまく話ができる方法を探してみるのが次のステップだろうということで決着した。みんながロスチャイルドを見返してやろうと決意しているのを感じる。


「もうひとつあるんだけど……」

そう言って、テンちゃんが切り出した話は、アメリカのGMからのオファーの話だそうだ。

「一応、会う前にどんな話か聞いたら『ツァイトのすべての権利を買い取りたい』って言ってきたのよ」

「……すべての権利?」

そう声を上げたのはハクちゃんだった。最近、会社の運営的仕事をしているのでこういう言葉に敏感になったのかもしれない。

「そう、すべて……つまり、デザインも名前も、ドイツで生産・販売するのも、一切合切含めて売れっていうこと」

「それはまた……大きく出ましたね」

華子さんが呆れたような声を上げた。でもオレには聞き覚えがある……アメリカの会社が日本のゲームに目を付けた時に割とよくやるやり方だ。いわゆるハリウッド方式?

「オレは聞いたことがあるよ、そのやり方……目の前に有望そうな、独占できるものがある時にアメリカの会社がよくやる方法だ」

「それは、我々にとって意味のあることですか?」

華子さんが当然の疑問を口にする。

「いいや、そのビジネスをやめて他のことをしようと思っている人以外にはうれしくないね。むしろその他の人にとっては喧嘩をふっかけられているのと同じだろうし」

オレがそんなふうに言うと、テンちゃんが

「そうなのよ! 私が『それはちょっと出来ません』って言ったら、『じゃあ、あなた方の会社は我々の資本とやり合って勝てるとおっしゃのですか』って鼻で笑われて『後で吠え面をかいても知りませんよ』だって。失礼しちゃうわよね!」

テンちゃんが思い出し笑いならぬ、思い出し怒りを起こしていた。


「どいつもこいつも、まったく……」

オレが吐き捨てるように言うと、

「ドイツやコイツではなく、イギリスとアメリカですね(笑)……ニューヨークとワシントンDCも火の海にしましょう」

と華子さんが混ぜっ返してきた……ふっ、といい感じに気が抜けて今日のところはここまでと、お開きになった。



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