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第25話 セラミックスとシンギュラリティ

「というわけで、セッちゃんをスイスのパンツァードラグーンの操縦士養成課程アドバイサーに派遣して、代わりにブラウン・ボベリー社から会社の運営が出来るような人を派遣してもらえることになったから」

テンちゃんに早速報告したら、すごいがっついて来た。


「たすかった! それで、いつから来てくれるの? 今日? 今日の夜? もう直接、私が迎えに行ってもいい?」

なにその切迫具合。ミハイルさんから本社に『すぐに人材派遣が可能か』聞いてもらうから、それまでガマンしてくれるように伝えた。


 一方、オレは九州の森村開作氏の所に再度向かう……例のファインセラミックスの事業計画の為だ。

 ファインセラミックスはドイツの会社が点火栓ガイシを多結晶高純度アルミナで高温焼結して作ったことから始まる。これは戦略物資金属を使う炭化物基超硬工具やエンジン用超合金部材の代替品を目指したものだったらしい。他にも珪素を材料にしたものもある。これらを作るには不純物を取り除いた微小粉末を焼結させる必要がある。今までの陶器の作り方とはかなり異なり、人手を介さない工業プラント的な設備が必要になるので開作氏を口説き落として新規工場を作らなければならない。


 オレは開作氏と江副氏を前に、持ってきた事業計画の説明を始める。

「我々が作ろうとする新しい陶器は『ファインセラミックス』と言うものです。これは陶器の利点である高温に耐えられ高い硬度を持つことと金属の利点である精密で機械の部品にも使えるという利点を併せ持つ夢の材料です……しかしその為には、天然由来の原料ではなく、化学的に精製した微小粉末。具体的には100μm以下の粒子を不純物の入らない装置内で、機械枠型に成形、圧縮して2000度前後の高温で焼結させる必要があります。このような工程は全体を手作業ではなく、機械で自動的に行なうようにする必要があります」


「……こいつぁ、なかなか大変な話だな」

オレの説明を聞いて江副氏はビックリしている。今までの江副氏のやってきた陶器を作るやり方とはまったく違うからだろう。一方で開作氏は、前回のように引いた目線ではなく、かなり興味を持っているようだ。

「なるほど……これは、私の目指したい陶器産業の近代化に一致するものです……我社の将来を賭けるべき内容なので、ぜひ協力させていただきたい」


 事業計画の説明の後、開作氏を中心に『森村ファインセラミックス工業』を立ち上げることが決まり、若い工学部出身の社員を集めて、各工程で必要な機材や当面求められるタービンブレードと装甲材料を作るための研究が始まることになった。


 しかし、オレもこればかりに掛かりきりになるわけにもいかない。帰る途中で大阪の八木博士を訊ねて、具体的なレーダーを作るための課題と目標を定め、軍で協力すべき内容を聞いて準備を始める。浜松では高柳先生と高周波回路技術を高めるための方向性や当面の目標を話し合い、東京に戻ってロケット弾の研究グループに具体的な開発マイルストーン(工程目標)を設定してもらう。

「こりゃ身体が幾つあっても足りないな……何とかしないと、オレは他人の尻を叩くことしかできなくなる。どうしたらいいだろう?」


 一計を案じた挙げ句、オレは各グループから、目指している内容、実際行っている作業、見つかった課題などを書いたレポートを出してもらい、それを全体に回覧できる情報共有ニュースのようなものを出すことにした……本当はインターネットでブログか何かのようなものをやりたかったんだけど、この時代では仕方ない。

 全体を把握するためだけならレポートをオレだけが見て、それに返信をしたり現地に出向くようにするだけでいいのだが、せっかく情報をもらったなら他のグループにも伝えたほうが仕事の張り合いにもなるし、何かの問題解決のきっかけになるかもしれないと思ったからだ。


 成果は思わぬところから出た。ファインセラミックスの開発グループの報告に、次世代増幅素子(というか論理素子)を研究している高橋氏から『磁気回路に使うフェライトコアもセラミックスのひとつですよね』という質問がされ、それに関連して真空管の代わりとなる磁気増幅器という物があることを教えられた。オレのいた時代では、もう特殊な用途にしか使われていない技術だったが、この時代では割とよく使われている技術らしい……これは盲点だった。これなら真空管でもトランジスタでもない増幅素子が作れそうだ。もちろん磁気論理演算素子(パラメトロン)も開発してもらうけれど。


◇          ◇          ◇


 フェライトコアは酸化鉄を主成分にするセラミックスで東京工業大学の加藤与五郎博士が武井武博士と共に発明したもので、すでに二年前に東京電気化学工業が設立され、これ専門で製造販売を始めていた。社長の齋藤憲三氏と話したところ非常に協力的で、製造工程のファインセラミクスへの応用についても協力してくれることになった。さらに磁気増幅器についても相談してみたが、こちらはトランスのような大きな形状でフェライトコアを用いたものはないと言われた。

 しかし、パラメトロンや磁気コアメモリの様に小型の集積デバイス化が進むはずだと、オレが強引に(未来知識で)将来の話をしたところ、かなり乗り気になってもらい我々の先端技術研究グループに参加してくれることになった。


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