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第124話 秘匿兵器「鳴鏑」誕生

 新戦略検討会の開始は良いとして、実際に蘭印独立派と共に戦うとなったらどうするかは考えておかなければならない。


「とりあえず武器が必要だよな……ボルネオだとジャングルの戦いが中心か。短機関銃を持たせた陸戦隊か山岳旅団が必要かな。それと山砲くらいは持たせたいな……ラプトルMarkⅡというか神威改の噴進穿甲榴弾砲ハイパーバズーカもどきをHEAT弾でなく普通の榴弾砲弾にすれば大丈夫か。ただジャングルだと神威のホバー移動は難しいだろうから別の方法を考えないと……」


 そういえばラプトルMarkⅡの開発の時、ここまで軽量化できたなら翼とエンジンを用意すれば飛べるのではないかという話になり検討したことを思い出し、相模原陸軍造兵廠の神威関係の技師に問い合わせに行くことにした。

「たしか、いろいろ問題があって結局お蔵入りになったはずですが……」

彼はそう答えながら資料を倉庫から出してきてくれた。


 神威にジェットエンジンと主翼を背負わせて作戦地点まで飛ばし、現地に着いたら飛行装置を投棄して身軽に動き回り戦闘を行うという構想だったが、着陸してそのまますぐに飛行装置を外し戦闘に入るには飛行速度がかなり低く出来なければならず、そんな低速で充分な揚力を持たせるにはグライダーのように翼長を長くする必要があった。


 オレは今回、これを落下傘(パラシュート)。もっといえば円形傘ではなくパラグライダーのように飛行制御が可能な翼型方形傘(ロガロ翼)に出来ないかと考えている。

「問題は軽量化したとはいえ本体重量が4トン、さらに飛行装置と燃料を合せると7トン近くのものを飛ばすパラグライダーの傘はどんな大きさになるのかだな」

空挺降下でも野砲とか落下傘で下ろすから出来ないことはないと思うけど……またパラグライダーは悪天候なら飛ばないという選択肢もありだが、兵器はできるだけ運用可能な条件は緩くしたい……例えば無風時などだ(パラグライダーは飛ぶのに適度な風が必要だ)


 オレは離陸時にエンジンからの排気をキャノピー(傘)に送り込むようにすれば、無風時でも翼の形成が出来るのではないかというアイデアを思いついた。ただそうするとキャノピーとペイロード(本体)を綱だけでなくダクトでつなぐことが必要になり空気抵抗の問題などを片付けないといけない……いっそのこと綱でつなぐパラシュートではなくハンググライダーのように骨付きの凧にするか? そんなことをいろいろ考えていた時、話を持ってきた当の本人であるテンちゃんが現れた。


「あのね、たーくん……今、大丈夫?」

今にして思えば、普段は傍若無人で相手の都合なんか気にしないテンちゃんにしては変だなと気付くべきだったかも知れなかった。しかしオレは新兵器のことで頭がいっぱいで、その時はそこまで気が回らなかった。

「今、蘭印の独立派支援で使う兵器のことで忙しいんだけど、何か用?」

オレがぶっきらぼうに答えると

「あー、その話なんだけどね……」

テンちゃんがとてもバツの悪そうに言う


一体、何なのかとオレが問い詰めると

「いやねぇ、詳しい話を後から向こうの人達から聞いたんだけど、ぜんぜん独立戦争なんて話じゃなくて、せいぜいゲリラで捕まった村人を助ける話だったの……だから今、日本から兵隊を送り込むとか言う話は当面ないかな、って」

それじゃあ話が根底から覆ってしまう……てか、統合参謀会議で大風呂敷を広げてしまったオレの立場は……(涙)


「まあ将来、本当に独立戦争になってバタヴィア(後のジャカルタ)にまで攻めていくようになったら、支援部隊とか送ることもあるだろうけど、それはまた後でね」

テンちゃんの言い訳というか慰めの言葉を聞きながら、オレは一体どうやって収拾を付ければいいのか頭を抱えていた……ひとまず神威用の飛行装置オプションは作らなくて済みそうなのはひと安心だが、せっかく新兵器開発に向けて込めた気合いのはけ口をどこに求めればいいのか、オレは鬱憤のはけ口を求めて叫んでいた。


「う゛ぉーー、せっかくいろいろ考えたのにぃー、このやる気をどこかに吐き出さないと爆発しそうだぁぁ!」

「あっ、えーと、あれ……そうだ。サティちゃん用に何か新しい武器を考えてあげてよ! 彼女最近、仲間と一緒に仕事に出るようになったから、たーくんからそういうものもらったら、きっと大喜びするよ。ね? そうしよっ!」

大慌てで、何とかオレの気持ちの向ける先をひねり出したテンちゃんに説得されて、オレは結局、サティ用の新しい装備を考えることになった……てか、サティだけなら神威の飛行装置みたいな大掛かりのものじゃなくて、そのままモーターパラグライダーでいいんじゃね? まあ敵からの銃撃くらいは防ぎたいから防護服っていうかセラミックプレートのついた軽装甲服(サブアーマー)を着ることにして……どうせなら、昔オリンピックのデモで飛んでたジェットスーツみたいな方がいいかな? でもアレって数分しか飛べなかった気が……翼があった方が燃料を節約できるよな。そうだ! ジェットエンジンを付けた翼にぶら下がるようにすれば……オレの頭の中には某アニメの小型メーヴェみたいのにぶら下がって飛んでいる少女の姿がありありと浮かんで、すっかり御機嫌になっていた。


◇     ◇     ◇     ◇     ◇


 やる気とぜひ実現して見てみたい思いをたたき込んだ結果、試作の軽飛行装甲服と奮進式飛行翼装置は超短期間で出来上がってしまった。一応、装甲服には頭部や首の保護のため潜水服というか宇宙服みたいに胸から頭にかけて補強が入ったものになっている。首はある程度、自由度があるし戦闘時には固定を解くことも出来る。また空中で飛行翼が動作不能になった場合のために緊急落下傘もつけた。


 試作品の評価と懸念事項をあげてもらうために内々に見せて意見を求めたところ、華子さんから『他国にこの装備を見られた際に日本の関与を探られないように秘匿兵器として製造するべき』と言われた。そんな大層なものかぁと思ったが具体的にどうするべきか意見を聞いたら『スイスのご友人に相談して、彼方の会社で作ってもらうのが良いのでは』という話になった……何か困った時のミハイルさん頼みみたいで気が引けるが、話をしてみたら『さすが時休サンは我々の発想の遙か上をいっています。ぜひウチにも手伝わせて下さい』と言われてしまった。


 数ヶ月後、ブラウン・ボベリ社謹製、コードネーム「ヴェスペ」が完成した。名前がドイツのⅡ号戦車を利用した自走車砲と被ってしまったが、まあドイツ軍がこれを使うことはないだろうから気にしないと言うことで。

一応、日本語の名称として「鳴鏑(めいてき)」という名前を付けた。色も白いし(セラミックの元の色が白っぽいのと地上から見上げられた時、発見しにくい色ということだ。第二次世界大戦初期の日本海軍艦上機の飴色と同じだ)形もメーヴェを小型化したようなものに軽装甲服をきてぶら下がった姿は、まさにアニメみたいだ。

ちなみにメーヴェはドイツ語でカモメのことだ。ヴェスペはドイツ語で小型スズメバチで、スクーターのヴェスパ(こちらはイタリア語)と同じ意味だ。


 ヴェスパといえば、我々の作る映画「ローマの休日」のシナリオのプロットを見た、我らが主演女優(エマ・グレース)(!)がいたく気に入り、自らシナリオライターに立候補してきた……そういえば彼女は女優の前は作家としてヒット作を書いていたんだっけ。

「このアイデアは面白いわね。ちょっと今のライター連中にはない発想だわ。でも、どうせこういう話なら、もっと風刺を込めた方がいいわ。私に書かせてくれたら飛びっ切りのものにする自信があるんだけど」

その話を聞いたオレ達(監督のキューカーも含めて)はびっくりしたが、すぐに『そいつぁいいや』と全員賛成し彼女にシナリオを書かせてみることになった。


◇     ◇     ◇     ◇     ◇


 出来あがったヴェスペをスイスからシンガポールを経由してサティ達の根城のあるマラヤに送ってもらいオレは5年ぶりにサティに会った。成長した彼女は褐色の肌とショートカットの髪、そして元気で細っこい肢体が○○の海の少女(○ディア)みたいになっていた。

最初は物々しい雰囲気に気圧されて仲間の男達の後ろに隠れていた彼女だったが、空を飛べる機械であることが分かると騒音をものともせず積極的に操縦法を習い始めた。

いつも船のマストを駆け上ったり舷側から飛び降りたりしている彼女は空中バランス感覚が鍛えられているのか、ものの数日で平地から飛べるようになり一週間もすることには一通りの飛行は問題なくこなせるようになっていた。さすが子供の適応力はすごい。

「たーくんサン、トリの機械アリガトウ。ワタシこれで仲間のためにガンバる。そしてたーくんサンにもオンガエシできるようになる」

オレの名前が「たーくん」なのはテンちゃんの影響だ(笑)……そして飛行兵器の名は、彼らの神様?の名前でグルルと名付けられた。


 南の海を行き交う人々の間で、『翼を持った人型の恐ろしく強い鬼神(グルル)がいる』と噂されるようになったのは、しばらく後のことだった。



「鳴鏑」の名前は「猫之助」様のアイデアを使わさせて頂きました。

ありがとうございました。


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[一言] 使用していただき、有り難う御座います。
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