第12話 神?に導かれたフランス人修道女
前回が重かったので、今回は軽く(なってるか?)
いよいよ凸凹珍道中……
最近ご無沙汰だったテンちゃんが夢の中に現れ、『サンジェルマン通りの角のカフェで午後、優雅なひと時を過ごしてね』と伝言していった。
『優雅なひと時を過ごせ』ってどういう意味だ? 理解できぬまま、仕方ないので次の日からカフェ通いを始めた。
そして何日目か後、店の隅で店員と客が何か揉めているのが目に入った(まあ、そんな些細な事にも目が停まってしまうほど退屈していたってことだ)
「お願いです。私、この店である人と会わなければならないのです」
「だから、その人の名前とか姿とか特定できるものはないのかい? ただ漠然と、ここに来る客に会いたいって言われたって、困るんだよ」
「お願いです、顔さえ見れば分かるのです。夢の中で何度も見ていますから」
「また、そんなことを……だいたいあんたこの前もそんな事を言ってずっと店にいただろう? 注文もしないで。商売の邪魔だから、とっとと帰りな!」
黒の修道服の姿で懸命にお願いしている女性を邪険に扱う店員を見ていられなくなって、ついついよけいなお世話で声をかけてしまった。
「まあまあ、注文が必要ならオレが奢ってあげることにするよ。えーと、シスター?」
酔狂なやつだなという表情でオーダーをとる店員と、ぱぁっと花が咲いたような笑顔を向けてくる修道女さん。
「ありがとうございます。私、ジャンヌ・フォンティーニュ……」と言いかけて、急に声が止まった。
「ん? シスター・フォンティーニュ、どうしました? とにかくお好みのティーを注文してあげてくれ。そうしないと店員さんも困ってるから」
そんなオレのフォローなんて無視して彼女は、感極まったような声を絞り出した。
「本当にいた……本当にいたんだ。思い違いじゃなかった。わたし……」
うわ言のように彼女は、そればかり繰り返しているのでオレは諦めて自分と同じものを注文して店員を下がらせると、さっきまでひとりで座っていたテラス席に彼女を連れて来た。
「オレの名前はトキヤス、種子島 時休。はじめまして、ですよね?」
念の為、『確認するけど』というニュアンスを含んで聞いてみたら
「いいえ、はじめてではありません。毎日、お会いしていたではありませんか……夢の中で。お名前は初めて伺いましたけど、神様のために働いていることはよく知っています」
と満面の笑みで答えてきた。
まあ、トンデモな発言だけど『夢の中で』というのは、オレにとって疑いもない事実を示している言葉なので、そのまま話を続ける。
「……そうですか。では貴女がテンちゃん……お告げにあった人ですね。どうぞよろしくおねがいします」
普通に挨拶してみたが、彼女の方はテンション上がりっぱなしで話を続ける。
「はい、よろしくおねがいします! 貴男と私は同じ使命を与えられて、神様にお導きを受けたふたりなのですから。一蓮托生、ふたりはひとつ、運命共同体……」
『いや、プリ○ュアじゃないし!』って突っ込むのもアホらしくて、目を逸らそうとしたところで彼女のお腹が『クゥ、』と鳴った。恥ずかしそうに手をお腹に当てる彼女を見て、少し好意的な気持ちが持てたオレは
「まず、なにか食べましょう。よろしければ、少し遅いですがランチなどいかがですか。ジャンヌさん?」
と、ほほ笑みかけて食事を勧めた。
「……ホントはパリじゃなくてもっと田舎に住んでいたんです、ワタシ。でもこのまま安穏な一生を送ってはいけないと一念発起して将来のために、いろいろ勉強をしました……ドイツ語、英語、イタリア語。それからいろいろな人と会って、お話しをして、お仕事もいろいろやったんですよ。でもちょっとおっちょこちょいていうか、いえっ、大したことはやってないんですけど、小さな失敗をちょこちょこと。で、気がついたら何処も働き口がなくなっちゃって……そんな時、教会のルネ神父様が、親切にしてくれて、『フランスの北から迫る黒い闇を払いわなければならない』と教えられて……
パンを口に頬張りながら、すごい勢いで今までの経緯を語ってくれるジャンヌ・フォンティーニュ嬢の話を聞きながら、『電波ちゃん』ってこんな時代でもいたんだって思い知った。
「で、少し前から私の夢の中にとても優しそうな女性が現れて『この店で、ある男性と会ってドイツに向かいなさい。そこには大きな仕事が待っています……詳細はまた後日』とおっしゃったのです。彼女はとても神々しいので、私はきっと『女神マリアンヌ』であると思っています」
マリアンヌって、誰? という向きには、よく見かける『民衆を導く自由の女神』っていう絵を思う出して欲しい……オレも知らなかったけど。いわゆるフランス革命を導いた女神のことだ……確かに強調された胸と自信に満ちた態度がテンちゃんらしくもある……ちなみにウルトラセブンの『アンヌ隊員』はユリアンヌだ。マリアンヌぢゃない。




