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第106話 機動打撃軍構想、その4

 それから、オレたちは中央工業という名の会社を尋ねた。この会社は数年前に昭和製作所と大成工業と合併したのだが、その前は南部銃製造所という名前だった……そう、南部式自動拳銃などで有名な南部麒次郎中将の会社だ。もっとも中将は既に軍を退役しているから南部博士(氏は工学博士でもある)と呼ぶ方がいいか……ガッチャマンみたいだけど。


 挨拶を済ませると、オレたちは話を切り出した。

「……こちらで開発した機関短銃を更に改良したものを作りたいと考えています」

「……100式機関短銃では不足かね?」

南部博士はいぶかしそうな目でこちらを見てそう言った。氏は、もう70を越える歳のはずだがいまだ活力にあふれているように見える。

「100式機関短銃も悪くないのですが、我々の欲しいものとは少し違うのです……失礼ですが、あれはMP18やトンプソンを参考にして作られているようですね」


 ……そう100式機関短銃は何度も試作を繰り返した結果、採用された時にはずいぶん古いものになっていた。それでも日本軍唯一の制式採用された短機関銃であるのだが。

「この20年の間に機関短銃の趨勢はかなり変わってしまいました。今後はMP40やステンガンのような総金属製のプレス加工で大量生産できるものが必要です」

「……ほう、君は外国の銃の動向に詳しいのか。こう言ってはなんだが機関短銃の優先度は日本陸軍では低いようだ。軍の方針も二転、三転してな……それでも頑張ってようやく準正式採用までこぎつけたんだ。しばらくは様子を見るべきだと思っとる」


 南部博士の言うのも、もっともだ。改良するにしても実際に使ってみないと良し悪しは見えてこない……普通はね。だが幸か不幸かオレは未来を知っている。これから世界各国はできるだけ簡易化した短機関銃を大量に兵士に持たせて戦うようになる。そして我々の機動打撃軍でもそういった短機関銃が必要だ。100式は終戦までに1万挺あまりが作られた(その殆どは輸送船が沈められて実際の戦場では使われていない)そうだが、その10倍以上は欲しい。ちなみにドイツ軍のMP40の生産数は100万挺、イギリスのステンガンは400万挺作られたらしい。


「我々はできるだけ多くの兵に機関短銃を持たせることを考えています。そのためにはもっと単純で生産性のいいものが必要です……幸いドイツもイギリスも友邦ですからMP40もステンガンも詳しい技術が入手できるはずです。どうか新しい機関短銃の開発に力を貸して頂けませんか?」

南部博士は、オレの言葉に気圧されたのか、しばらく黙って考えていたが、

「作るのは構わんがカネは大丈夫か? それに多くの兵に機関短銃を持たせるというが、皆が持ったら弾がもったいないぞ」

とぶっちゃけた。まあ実際、銃器より弾薬のほうが費用がかかるのは事実だ……それに日本軍は兵隊より機関銃の方が大事にされるくらい貧乏だしな。でも、そうも言ってられない。幸いなことにカネはシベリアでなんとかりそうだし、弾薬の生産も増やしていこう。

「資金は大丈夫です。弾も増産できるようにしましょう……それより大切なのは戦場でどれだけ扱いやすいか、役に立つか、壊れないかです」

オレは、そう言うとゲーリング元帥直伝(?)の『無理やり両手握手』に持ち込む。


「まあ、そう言うなら儂も頑張らせてもらおう」

こうして南部博士に協力の言質をとって、ひと安心していると


「ところで、君は第一造兵廠で面白い物を作らせたそうだな。オニに使わせる噴進穿甲榴砲とか言うやつだ」

と話をふってきた。

「……どうしてそれを?」

突然、そんなことを言われて答えに窮していると

「あそこは以前、儂も勤めていたからの。知り合いも多い……変なことをする奴のウワサは易く伝わる」

そういえば、一時期は頻繁に通っていたからなぁ……主に技術者の尻を叩くために。

「おかげさまで、あの兵器はシベリアで大活躍をしました。第一造兵廠の技師に礼を言いたいところです」

「もう表彰されて昇格したようだぞ……おかげで仕事がとんでもなく増えたと言っておったが」

「そ、そうですか……」

開発をしてくれた技師の顔が目に浮かぶ。まあ報われているなら一安心だ。


「何でもモンロー/ノイマン効果とかいう原理の……HEAT弾と言うそうだな」

南部博士は、随分興味を持っているのか話を止めてくれない

「く、詳しいですね」

「はっ、はっ、はっ、これでも東京砲兵工廠の提理だったんじゃぞ。銃砲関係はひと回り何でも知っている……他にも何か面白いことを知らんか? 儂も一口かませて欲しいもんじゃ」

そう言って笑っている南部博士は、まだまだ現役で仕事をしそうだ……そうか、この人なら顔が広いから色々な関連部門の人に話をつけられそうだ。これは凄く良い人材にめぐり逢ったのでは、と思い至った。


「実は他にも戦車の砲弾についても研究をしたいのですが……博士はご興味がおありですか? こちらは、まだ外国でも出来ていないものを目指すので随分、道は険しいですが」

オレはワザと挑発するような言葉を口にする……となりで柴少佐が不安そうなの顔をしているが無視だ。

「ほう、それは良いな。やるからには人真似ではなく『世界で最初』を作り上げたいものじゃからな」

氏はオレの煽りを気にもせず楽しそうに答えてきた。

よし、決まりだ。この件は南部博士と柴少佐でやってもらおう。オレが柴少佐に未来情報とか伝えて、どう実現するかを南部博士と相談しながら進めてもらう。オレは大きく頷きながら柴少佐の腕を引っ掴むと一緒に南雲博士に近づいて

「では詳しい話を。我々で世界をびっくりさせるものを作りましょう!」

と南部博士に答えた。


◇     ◇     ◇     ◇     ◇


 陸軍関係は柴少佐と南部博士でやってもらうことに決めたが、オレには他にもやらなければいけない開発があった……航空戦艦や航空巡洋艦、あるいは輸送艦隊の直掩用に、鶚の強化バージョンのジェットエンジン鶚が重要になってきた……何なら研究中のVTOLは諦めてカタパルト発進/着水着艦で運用すること(鶚は胴体下部が舟形の飛行艇仕様なので、これを受け継げば可能な運用方法だ)も考えた方が良いかもしれない。そして大型爆撃機についても研究をスタートさせる必要を感じている……前は大型の戦略爆撃機は日本の国力では無理だと思っていたが、ここに来て随分状況が変わってきた。大型噴進弾(要は大陸間弾道ミサイル。V2ロケットの拡大版を考えている)は核爆弾が無いとそこまで効果的ではないし、ここに来て資金面で余裕が出てきたため(占領したシベリアの天然資源から得られるものだが)大型爆撃機の開発・運用も不可能ではないかと考えるようになってきた……誰か、この辺りの開発を任せられる人材がいないかなぁ。



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