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藤吉郎になりて候う 〜異説太閤紀~  作者: 巻神様の下僕
第四章 群雄蠢き候う

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第七十七話 動き出す群雄

会話中心回です。

 今川館の一室に三人の人物がいた。


「嫌じゃ、嫌じゃ、嫌じゃー。何ゆえ私が継がねばならぬのです。長が継いだではありませぬか?」


「その長が死んだゆえ、その方が継がねばならぬのです!」


「私は嫌です。絶対無理に決まっています」


「氏真殿。我が支えもうす。ご安心あれ」


「そなたがいて何ゆえ長は死んだのだ。私も死ぬのであろう?」


「氏真! 覚悟決めなされ! これも武家に生まれた定めにて」


「お婆様。私には無理です! 無理ですからね!」


「待たれよ。氏真殿!」


 氏真は振り返る事なく部屋を出て行った。

 残された二人は。


「情けない。やはりあれには無理じゃ」


「しかし、他に居りますまい。我らで支えねば」


「支えたとて我らが居なくなれば如何する?」


「朝比奈、三浦、岡部が居りもうす」


「やれ頼りなし。そやつらでは足りん。現にお長を守れなんだ」


「それは致し方なし。裏切り者が居ては」


「何故に気づかなんだ! あの小僧っ子の裏切りを?」


「気づいてはいましたが、動かぬと思うておりました。存外織田の抵抗があれを動かしましたな」


「他人事のように。で、三河は如何する?」


「朝比奈と岡部、井伊に鵜殿が当たりまする」


「勝てような?」 「問題ないかと」


「ご注進。ご注進申し上げまする!」


「何事ぞ!寿桂尼様の前ぞ!」


「し、失礼致しまする。されど火急の事にて」


「よい。申せ」


「は、先だって甲斐武田が兵を出したよしにて」


「それが如何いたした。まさか?」


「こちらに向かっておるもようにて」


「ふ、ふふ。そうか、そうであったか」


「寿桂尼様?」


「甲斐の小僧がようもやってくれたわ」


「なるほど。では私が参りましょう」


「いらぬ。わらわが出よう」


「しかし?」


「そなたはまだ万全ではあるまい。心配いらぬ。わらわを侮ったあの小僧を踏み潰すまでよ」


「ふぅ、これは止められませぬな」


「誰ぞある。具足を持てい!」


 今川の前女大名『寿桂尼』の出陣であった。


「久しぶりに小僧の相手をしようぞ。わらわの相手が出来るほどに育ったかねえ」


 出陣する寿桂尼の顔に微笑が見えた。



 ※※※※※※


 三河岡崎では小僧と呼ばれた男が頭を悩ませていた。


「どういう事だよ。これは?」


「先手を打たれましたな」


「先手をって。長ちゃん死んでなかったの?」


「確認はしておりませんでした。何せあの騒ぎです。それに岡部が首を持ち帰ったと報告されましたので、てっきり」


「てっきり、じゃないよ! 首じゃなくて兜じゃん!」


「惜しい同盟者を亡くしましたな」


「全然惜しんで無いじゃんよ!」


「そうですか。 それは殿も同じでは?」


「ふぅ、証拠は?」


「服部が首尾よく」


「水野の叔父上には悪い事をしたよ」


「全然思っても無いことを」「何だって?」


「何でもござりませぬ。ですがこれで前のみを相手に出来ますな?」


「まぁ、朝比奈辺りなんて敵じゃないよね。楽勝じゃん」


「甘く見てますと足元を掬われますぞ」


「大丈夫、大丈夫。武田も動いたんでしょ?」


「そのように聞いております」


「なら大丈夫じゃん!このまま三河を俺のもんにするぜ!」


「ようやく我らの悲願が」


「何小さい事言ってんの。三河だけじゃないよ。遠江に駿河と今川を食べて、俺が海道一の弓取りになってやるぜ! そして、お市ちゃんを」


「でしたら殿。まずは三河を」


「分かってるよ。忠次はうるさいよね」


「それが私の務めです」


「はぁ、よし。 兵を出す。 三河を手に入れる!」


「御意」


 三河の小僧の雄飛が始まる。



 ※※※※※※


 雪国のある国で女大名が荒ぶっていた。


「ちょっと兄上聞いてくれる!」


「なんだ、龍?」


「藤吉のやつ。全然返事を書かないのよ!」


「忙しいのではないか。あちらは大戦があったと聞く」


「それよ! 何で私を頼らなかったのかしら?」


「無茶を言う。ここと尾張。どれ程離れておると思う?」


「私が一人でも勝てるわよ!」


「はぁ、そなたはもう少し自覚を持て。越後の当主としてな?」


「そんなの卯松が継げばいいじゃない」


「また無茶を言うて。卯松はまだ三つぞ! せめて後十年はそなたが当主ぞ!」


「はぁ、十年したら私……… 兄上が代わってくれない?」


「無理だ。そうなれば長尾家が無くなりかねん」


「兄上信用されてないもんね」


「ぐ、私とて謀叛したくてした訳では」


「はいはい、分かってますよ。姉上が他に嫁ぐのが嫌で殺っちゃったんだもんね」


「あ、あの時は。それしかないと…… 」


「姉上もねえ~。ちゃんと私に話してくれれば良かったのに」


「がー。その話はもういい。それよりもだ。そなた藤吉をどうしたいのだ?」


「もちろん欲しいわよ! 津島商人の話だと藤吉のやつ凄い働きをしたらしいわよ。それなのに市ったら藤吉を上げてないのよね。可哀想じゃない」


「向こうには向こうの事情が有るのだろう?」


「それでもよ。兄上はどう思う?」


「ふむ。そなたの慧眼は確かであったな。だが、それほど拘る必要はなかろう?」


「姉上は私の味方よ」


「お、お前は!」


「失礼致します!」


「なにかー!」


「ひ。も、申し訳ありません」


「兄上」 「すまん。申せ」


「は、上野より援軍要請が」


「またか。少しはこちらの都合も」


「出るわよ兄上。直ぐに支度を」「龍!」


「は、直ぐに報せます!」


「ふふ、久しぶりの戦ね。燃えてくるわ」


「はぁ、婿取りはまだまだ先だな」


「兄上! 行くわよ!」


 越後の龍は今日も荒ぶっていた。



龍は外と中では口調が違います。元康はこんな感じです。家康ファンの方許してください。


誤字、脱字、感想等有りましたらよろしくお願いいたします。


応援よろしくお願いします。






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